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レゴ®︎シリアスプレイ®︎についてあれこれ

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レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドに関して「理解する」「応用する」以外で考えたことあれこれ詰め合わせ的に。
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越境経験の記録を見て考えさせられたこと。

越境経験の記録を見て考えさせられたこと。

 上記の本で越境学習のケースを見ていると越境経験の整理を「事前ー事後」ではなく「越境前ー越境中ー越境後」の3つに区分して行っている。

 この3分法により、越境によって得た経験とそれがもたらすインパクトを上手く整理できている。これが二分法であったら、2つの間の差分から変化は分かるものの、特に重要な出来事として何があったか、何を得られたかの表現にフォーカスが当たりにくくなる。

 私は定点観測を定期

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越境学習をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで促進させる

越境学習をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで促進させる

 様々な学習の在り方の中で、「越境学習」という領域がある。
 様々な学問領域の中でも、多くの人の注目を集める比較的新しい領域である。

 その理由の一つとしては、グローバル化の進展で、人々の移動が活発になり、それによって社会がより多様性を持ち始めていく中で、移動する側も迎え入れる側も、これまでとは異なるバックグラウンドを持った集団に入っていったり、異なる感覚の個人とやりとりする機会が増えてきている

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レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドにおけるモデルとキーワードについて

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドにおけるモデルとキーワードについて

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでは作ったモデルからふせんなどにキーワードを記録することがある。こうしたキーワードは、他の人にキーワードのみを伝えても、そのモデルが持っている内容は十分に伝わらない。したがって、キーワードではなく、残すのであればモデルを通じて語られるストーリー全体である。

 ストーリーを残すと言っても注意する必要はある。モデル表現のうち、ストーリーで語られない部分があればそこ

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大学でのレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用したワークショップ(2024年4月初旬実施)の振り返り

大学でのレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用したワークショップ(2024年4月初旬実施)の振り返り

 勤務先の大学で、新入生の学修サポート業務を担う上級生向けの研修を行った。レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使って、新入生が直面しそうな悩みと、新入生にとってどのような上級生であることが彼らのためになるかを考えてもらうという内容でワークショップを行った。

 本学は毎年、2000名を超える新入生を迎え入れるため、そのサポートを担う上級生の数も多い。全学で、おおよそ120名ぐらいの上級生を割り当て

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アートとレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドージョン・デューイ『経験としての芸術』をもとに考える

アートとレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドージョン・デューイ『経験としての芸術』をもとに考える

ジョン・デューイという20世紀前半に活躍したアメリカの哲学者の著作『経験としての芸術』を読んでいる。

ジョン・デューイと言えば、教育哲学にも大きな影響を与えており、問題解決型の学習(PBL)という考え方の源流と位置付けられることが多い。私もその文脈で彼の著作に接してきた。

その後、問題解決の第一歩として、自分自身の思考を一歩離れて理解するというメタ的な思考の重要性を感じ始め、それを促進する一つ

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話し合いのズレの体験を巡って~レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用してそれをどのように避けるか

話し合いのズレの体験を巡って~レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用してそれをどのように避けるか

先日、ある研修会に参加して、いろいろなワークを体験した。

非常に多くの学びがあったのだが、最も印象に残ったのは、ある問題について全員で話し合い、全員一致で解決策を定めるワークでの体験であった。

ワークへの参加者は19名で、5つのグループに分かれて同じ問題について考えた。まず、それぞれのグループで話し合い、全体でその回答を共有するというものである。

グループ内でも、グループ間でも話し合いの中で

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取り組むべき課題について考えることとレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッド

取り組むべき課題について考えることとレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッド

 全員で何らかの課題を解決しようとすることは大事であるが、「何が取り組むべき課題か」を考えず、なんとなく課題として設定しているのであれば、それを考えてみる価値がある。

 なぜなら、実際に、課題といっても、人によって理解やとらえ方が異なるからである。例えば、「離職問題」は、ぱっと文字を見ただけだとかなり明確な問題のように感じられるが、人によって問題である離職とそうでない離職が人によっては区別されて

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現実を見るということをめぐって

現実を見るということをめぐって

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークショップを繰り返し行っていると、現実というものは、その人の人生観や職業観、信念に沿って切り取られ、意味づけられた説明であるということがよくわかる。

 この考え方自体は、エトムント・フッサールの現象学から存在しているものであり、中国の老荘思想の根底にも存在しているという説明も可能かもしれない。

 つまり、人間は経験や主観に縛られながら世界を見てい

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『実践アクションリサーチ』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの文脈で読む(4)第3章 アクション・リサーチを理解する p.64~

『実践アクションリサーチ』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの文脈で読む(4)第3章 アクション・リサーチを理解する p.64~

 上記の『実践アクションリサーチ』の第3章では、前章までに扱われてきたアクション・リサーチの持つ特徴の他に、知の特徴、哲学、実際に行われる際のモードの多様性についても触れられている。
 アクション・リサーチに関する特徴については過去のNoteで扱っているので今回はその他のものを主に扱いたい。

アクション・リサーチから生まれる知

 アクション・リサーチは、新たなる知を生み出すものであるが、それは

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『SHIFT:イノベーションの作法』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬の文脈で読む(1)イノベーションのためのコラボレーション論

『SHIFT:イノベーションの作法』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬の文脈で読む(1)イノベーションのためのコラボレーション論

 『SHIFT:イノベーションの作法』は、ビジネスデザインのコンサルタントである濱口秀司氏による著作である。研究論文ではないものの、ビジネスでイノベーションを起こすための考え方が論理的かつ明快に体系化されている。

 その内容を紹介するよりも、「もう実際に読んでみてください」としたほうが良いぐらい文章もわかりやすいので、内容をまとめつつ進めるというよりは、この本から、いくつかレゴ🄬シリアスプレイ

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AIの発展による社会変化とレゴ🄬シリアスプレイ🄬のこれからについて考える

AIの発展による社会変化とレゴ🄬シリアスプレイ🄬のこれからについて考える

 先日、組織開発の実践・研究を推進するODNJの研究会にオンラインで参加した。テーマは生成AIの発展が組織や人事の在り方にどのようなインパクトをもたらしていくのか、という内容である。

 清宮普美代氏による2024年の組織開発のグローバルトレンドの話につづき、AIのトレンドに詳しい湯川鶴章氏と、自らAIビジネスと組織開発のフロンティアで活躍されてきた遠藤太一郎氏と刺激的な話が続いた。

 完全な耳

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アナロジーの力とレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッド

アナロジーの力とレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッド

 新しい発想や問題解決策を生み出すときに、「アナロジー」が重要な役割を果たすと指摘する本は多い。

 その代表的な本の一つといえる細谷功氏の『アナロジー思考』では、「アナロジー」とは、日本語で「類推」とされることが多く、その意味は「類似のものから推し量る」ということである、と説明がなされている。

 この「アナロジー」は誰もが普段から使っている思考の一つである。私たちは過去の状況において得られた経

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レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで「ハイ・コンセプト」な人材を創る

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで「ハイ・コンセプト」な人材を創る

 ダニエル・ピンクは、ビジネスに関する書籍のベストセラーを連発させているアメリカの作家である。
 TED Talkにも登壇しており、そちらで名前を知った方も少なくないだろう。

 彼の著作の中のベストセラーのひとつが以下の『ハイ コンセプト』である。

 本書の発売は、2005年(日本語版2006年)であるのでもう20年近く前の本である。今、読み直しても内容は全く色あせておらず、発売当時には「本当

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レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークショップの記録について

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークショップの記録について

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークショップでは、参加者によって実に多くの情報が生み出される。

目的によって、どの記録を重視するのかは変わってくるため、そのことも考慮に入れて記録の対象について整理してみたい。

(1)モデル
 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークショップにおいて、参加者は問いに合わせてモデルを作る。
 モデルの全体と部分の表現の形状や色には、参加者によって意味

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