キム・ヒョン

シカゴ・ホワイトソックスのマイナーリーグでアスレチックトレーナーをしてます。2004年…

キム・ヒョン

シカゴ・ホワイトソックスのマイナーリーグでアスレチックトレーナーをしてます。2004年に渡米して大学&大学院を卒業。大学、高校、病院、リハビリクリニック勤務を経て今に至ります。スポーツ医療&科学に興味があり、自分の勉強のために論文の解釈などをメインに書いてます。

記事一覧

「メジャーリーグおよびマイナーリーグの野球選手における有鈎骨鉤骨折」

今回要約する論文は米国のMLB/MiLB(マイナーリーグ)の選手における有鈎骨鉤骨折の外科的処置と管理について調査したものです。主な項目として患者の人口統計、傷害のメカ…

『加圧トレーニング』がよる筋力UPと筋肉の断面積の変化について

日本で1960年代に発案され、その後アメリカでも流行っている『加圧トレーニング』という単語を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。現在アメリカの理学療法界で…

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小中学生野球選手における投球動作が及ぼす内側肘関節の間隙拡大の影響について

今回はMatsuo氏らによって書かれた論文を要約してみました。 一般的に野球の投球動作は肘の外反ストレスを生じさせ、肘関節の内側の隙間が拡大する要因となります。小中学…

キム・ヒョン
3週間前
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運動負荷のデータに基づく野球投手のためのインターバル投球プログラム

今回は元ボストン・レッドソックスのヘッドトレーナーであり、現シカゴ・ホワイトソックスのシニアメディカルアドバイザーであるMike Reinold氏らによる野球投手のリハビリ…

キム・ヒョン
1か月前

スポーツメディスンチームの構成

先週MLBに続きついにトリプルAのシーズンも開幕しました。 僕の所属するシャーロット・ナイツはセントルイス・カージナルス傘下のメンフィス・レッドバーズとアウェーでシ…

キム・ヒョン
1か月前
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2024年スプリングトレーニング

今年のMLBスプリングトレーニング(プロ野球でいう春季キャンプ)も残すところあと1週間を切りました。あまり話題にはなりませんが、メジャーのキャンプと2週間ほど間隔…

キム・ヒョン
2か月前
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筋骨格障害のマネージメントにおける多血小板血漿投与に関するアップデート

近年MLBでも筋骨格障害の治療オプションとして定着してきたPRP(多血小板血漿)注射ですが、今回はO'Dowd氏によるPRP注射に関したシステマティックレビューを簡単にまとめ…

キム・ヒョン
9か月前
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MRIで見るエクセサイズ後に起きるハムストリングの変化

ハムストリングの肉離れが厄介な理由サッカー選手にとって一番多い怪我の一つはハムストリングの肉離れです。再発率も高いこともあって、選手だけでなくチームにも経済的打…

キム・ヒョン
10か月前
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メジャーリーグにおける肘の内側側副靱帯損傷の過去と現在

今回はホワイトソックスのヘッドチームドクターでもあるDr. Verma氏らによるMLBにおける肘の内側側副靱帯損傷に関する統計をまとめた論文を紹介しようと思います。 野球と…

キム・ヒョン
10か月前
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MLB/MiLBで2011年~2016年に起きた怪我の頻度トップ50

HITSデータを使った最新の統計本来MLBで使われていた怪我の記録システムは、怪我を詳細をトラッキングするものではなく、ロースターを管理するものとして作られたものでし…

キム・ヒョン
10か月前
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Weighted Baseballを使う際の注意点(前回の続き)

前回の記事でWeighted Baseballを使ったトレーニングに関するクリニカルビューについて自分なりの要約文を書きましたが、今回は筆者であるMike Reinold氏が述べる同トレー…

キム・ヒョン
10か月前
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Weighted Baseballに関するクリニカルビュー

アメリカの野球界で手軽に球速を上げられると話題を集めている”Weighted Baseball”ですが、あまりに早く普及されたこともあってその使い方も人それぞれになっている恐れ…

キム・ヒョン
11か月前
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メジャー&マイナーリーグにおける腹斜筋の怪我について

コアマッスルと野球の関係 トレーニング界隈に”コアマッスル”という単語が出てくるようになってから、もうすでに15年くらいが経ったでしょうか。野球界のコンディショニ…

キム・ヒョン
11か月前
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Velocity Based Training (VBT)がパフォーマンスに及ぼす影響について

以前使っていたブログからの移転もそろそろ終わりそうです。 今回は近年注目を集めているVelocity Based Trainingに関する論文の要約文の紹介です。 VBTとは?Velocity Ba…

キム・ヒョン
11か月前
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MLB投手における広背筋と大円筋損傷のシステマティックレビュー

アマチュア&プロ野球界隈で一番頻繁に見かける上肢の怪我と言えば肩の関節唇損傷やローテーターカフの肉離れかと思われますが、近年特に投手たちの中で広背筋や大円筋の肉…

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日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違い

今回は2019年に発表された日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違いについての研究論文を紹介します。最近肘のに関する論文ばかり漁っているせいかDr. Glenn Flei…

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「メジャーリーグおよびマイナーリーグの野球選手における有鈎骨鉤骨折」

「メジャーリーグおよびマイナーリーグの野球選手における有鈎骨鉤骨折」

今回要約する論文は米国のMLB/MiLB(マイナーリーグ)の選手における有鈎骨鉤骨折の外科的処置と管理について調査したものです。主な項目として患者の人口統計、傷害のメカニズム、診断方法、手術手順、術後の合併症、および競技復帰までのタイムラインを分析しています。結果から言うと、折れた有鈎骨鉤の外科的切除は、合併症が少なく選手が比較的早く野球活動に復帰できる効果的な方法であることが判明しました。この論

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『加圧トレーニング』がよる筋力UPと筋肉の断面積の変化について

『加圧トレーニング』がよる筋力UPと筋肉の断面積の変化について

日本で1960年代に発案され、その後アメリカでも流行っている『加圧トレーニング』という単語を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。現在アメリカの理学療法界でもよく使われており、それは野球界でも同じです。

アメリカで加圧トレーニングはBFRと呼ばれ、これはBlood Flow Restriction Trainingの略称です。そもそも加圧トレーニングとは、腕と脚の付け根に専用のベルトで圧

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小中学生野球選手における投球動作が及ぼす内側肘関節の間隙拡大の影響について

小中学生野球選手における投球動作が及ぼす内側肘関節の間隙拡大の影響について

今回はMatsuo氏らによって書かれた論文を要約してみました。

一般的に野球の投球動作は肘の外反ストレスを生じさせ、肘関節の内側の隙間が拡大する要因となります。小中学生の野球選手の身体は成人に比べ未熟ではありますが、野球のピッチングが成人の選手達と比べてどのような影響が出るか調べた研究は今までありませんでした。この研究では成人の選手と比較して小中学生の野球選手の”投球数”に基づく内側肘関節の間隙

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運動負荷のデータに基づく野球投手のためのインターバル投球プログラム

運動負荷のデータに基づく野球投手のためのインターバル投球プログラム

今回は元ボストン・レッドソックスのヘッドトレーナーであり、現シカゴ・ホワイトソックスのシニアメディカルアドバイザーであるMike Reinold氏らによる野球投手のリハビリテーションと運動負荷の管理に基づいたインターバルスローイングプログラムについての研究論文「An Interval Throwing Program for Baseball Pitchers Based upon Workloa

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スポーツメディスンチームの構成

スポーツメディスンチームの構成

先週MLBに続きついにトリプルAのシーズンも開幕しました。
僕の所属するシャーロット・ナイツはセントルイス・カージナルス傘下のメンフィス・レッドバーズとアウェーでシーズン開幕を迎えました。米国でメンフィスといえばエルヴィス・プレスリーの聖地として観光都市としても有名ですが、球場近辺は夜になると治安面で結構ヤバい雰囲気が漂います。そのようなこともあって去年までは球場の真横のホテルに泊まっていましたが

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2024年スプリングトレーニング

2024年スプリングトレーニング

今年のMLBスプリングトレーニング(プロ野球でいう春季キャンプ)も残すところあと1週間を切りました。あまり話題にはなりませんが、メジャーのキャンプと2週間ほど間隔を開けて、マイナーリーグのキャンプも同じ場所で行われています。メジャーのキャンプは大谷選手や山本選手のおかげで日本でも少しずつ知名度があがってきているのではないでしょうか。

今回はMLBのスプリングトレーニングについて少し書いてみようと

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筋骨格障害のマネージメントにおける多血小板血漿投与に関するアップデート

筋骨格障害のマネージメントにおける多血小板血漿投与に関するアップデート

近年MLBでも筋骨格障害の治療オプションとして定着してきたPRP(多血小板血漿)注射ですが、今回はO'Dowd氏によるPRP注射に関したシステマティックレビューを簡単にまとめてみました。

近年、筋骨格系軟組織損傷のマネージメントにおける多血小板血漿(PRP)の使用が一般的になってきました。PRPは損傷した組織に高濃度の自己血小板を注射することによって、身体の組織の治癒を促進するために使用されます

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MRIで見るエクセサイズ後に起きるハムストリングの変化

MRIで見るエクセサイズ後に起きるハムストリングの変化

ハムストリングの肉離れが厄介な理由サッカー選手にとって一番多い怪我の一つはハムストリングの肉離れです。再発率も高いこともあって、選手だけでなくチームにも経済的打撃が大きいのがこの怪我の特徴です。なのでチーム組織としてはいかにこの怪我の予防、または再発防止のためのリハビリプロトコルを開発するかがチーム運営にとって重要な要素となります。

通常ハムストリングの怪我が起きやすいメカニズムは高速スプリント

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メジャーリーグにおける肘の内側側副靱帯損傷の過去と現在

メジャーリーグにおける肘の内側側副靱帯損傷の過去と現在

今回はホワイトソックスのヘッドチームドクターでもあるDr. Verma氏らによるMLBにおける肘の内側側副靱帯損傷に関する統計をまとめた論文を紹介しようと思います。

野球と内側側副靱帯損傷の関係肘の内側側副靱帯(以後UCL)はオーバーヘッドスローを行うスポーツをする際に最も重要な役目を果たす組織です。なので普段生活する上でこの靭帯に過度な負荷はかかりませんが、野球の投球動作の際、肘の屈曲が高まる

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MLB/MiLBで2011年~2016年に起きた怪我の頻度トップ50

MLB/MiLBで2011年~2016年に起きた怪我の頻度トップ50

HITSデータを使った最新の統計本来MLBで使われていた怪我の記録システムは、怪我を詳細をトラッキングするものではなく、ロースターを管理するものとして作られたものでした。なので怪我の箇所やメカニズムなどは記録されても、正確な診断結果が記録されることはあまりありませんでした。さらにマイナーリーグでは選手の多さとチームあたりに所属するメディカルスタッフの少なさもあって更に雑になることも珍しくありません

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Weighted Baseballを使う際の注意点(前回の続き)

Weighted Baseballを使う際の注意点(前回の続き)

前回の記事でWeighted Baseballを使ったトレーニングに関するクリニカルビューについて自分なりの要約文を書きましたが、今回は筆者であるMike Reinold氏が述べる同トレーニングのする際の注意点について簡単にまとめました。

Weighted Baseball=重いボールを使ったトレーニングはまだそのメカニズムが完全に解明されたわけではないので、トレーニングをする時は細心の注意を払

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Weighted Baseballに関するクリニカルビュー

Weighted Baseballに関するクリニカルビュー

アメリカの野球界で手軽に球速を上げられると話題を集めている”Weighted Baseball”ですが、あまりに早く普及されたこともあってその使い方も人それぞれになっている恐れがあります。時が経つにつれて科学的に基づいたその効力と正しい使用法も少しずつ解明されてきました。

本日はホワイトソックスのメディカルコーディネーターでもあるMike Reinold氏のWeight Baseball=重い野

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メジャー&マイナーリーグにおける腹斜筋の怪我について

メジャー&マイナーリーグにおける腹斜筋の怪我について

コアマッスルと野球の関係

トレーニング界隈に”コアマッスル”という単語が出てくるようになってから、もうすでに15年くらいが経ったでしょうか。野球界のコンディショニングでもコアトレーニングは欠かせない存在となしました。実際に野球に関わるほぼ全ての動作において、コアマッスルはかなり密接に関わっています。姿勢の維持、投球、スウィング、体の捻転、走る、ジャンプなど例を上げればキリがないです。

一般的に

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Velocity Based Training (VBT)がパフォーマンスに及ぼす影響について

Velocity Based Training (VBT)がパフォーマンスに及ぼす影響について

以前使っていたブログからの移転もそろそろ終わりそうです。
今回は近年注目を集めているVelocity Based Trainingに関する論文の要約文の紹介です。

VBTとは?Velocity Based Trainingとはその名のとおり”リフト中の速度にフォーカスして行われるトレーニング法”です。基本的な動作などは普通のトレーニングと同じですが、一般的なトレーニングではリフトの際に持ち上げる

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MLB投手における広背筋と大円筋損傷のシステマティックレビュー

MLB投手における広背筋と大円筋損傷のシステマティックレビュー

アマチュア&プロ野球界隈で一番頻繁に見かける上肢の怪我と言えば肩の関節唇損傷やローテーターカフの肉離れかと思われますが、近年特に投手たちの中で広背筋や大円筋の肉離れの件数が右肩上がりで伸びてきています。

Jobe氏が称えた『投球メカニズム』の中で、広背筋は加速フェーズ中に最も筋活動が高くなり、その後の減速フェーズ→フォロースルーまでその活動を維持しています。解剖学的には大円筋は滑液嚢を挟んで広背

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日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違い

日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違い

今回は2019年に発表された日米のプロ野球投手におけるバイオメカニクスの違いについての研究論文を紹介します。最近肘のに関する論文ばかり漁っているせいかDr. Glenn Fleisigの名前をよく目にします。彼の勤務しているアラバマ州バーミンガムにあるピッチングラボは僕も何度か行ったことがありますが、Dr. Fleisigの知識の深さにいつも度肝を抜かれます。

結論から言うと簡単に想像できると思

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