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#299「ビジネス頭の体操」 今週前半のケーススタディ(5月10日〜12日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


5月10日(月) ARで見えない地質が一目瞭然!?

地質関係の組織・学会が2007年に制定した「地質の日」です。
1876年のこの日、アメリカの地質学者ライマンらが日本初の広域的な地質図「日本蝦夷地質要略之図」を作成し、また、1878年のこの日、地質の調査を扱う内務省地理局地質課が設置されたことに因みます。

地質。
ブラタモリよく見るのですが、必ず地質ネタが絡みます。
やはり、その地域の成り立ちを紐解いていくとその土地、つまり、地質や地形の影響は避けられないのでしょうね(タモリさんが好きだ、というのは間違いなくあると思いますが)。

地震国、火山国である日本では、古くから国が地質について情報を集め分析し活用してきました。

今回はその一部をご紹介します。

おそらく最も広く使われているのが、地質調査総合センターだと思います。

同センターは国として行なうべき「地質の調査」を実施するための組織で、明治15(1882)年 に前身の地質調査所が創立されて以来、地質にかかわる研究を行なっています。

ちなみに、5月10日地質の日についても専用サイトを開設しています(下)。

公開されている情報は地質に限らず、衛星データや海洋地質構造データ、重力データベースなど実に多種多様です。

地質という意味では、「地質図Navi」があります。
日本全国の地質を色分けした地図データです。下は淡路島になります。同じ島ですが、様々な地質があることが分かります(すいません、解説はできません…)。

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もちろん縮尺は変えられるし、同時に様々な地図データ(Googleの航空写真も選択可能)と重ねて表示することも可能です。

お住まいの地域なんか見てみると面白いかもしれません。リンクは以下になります。


次に表面だけでなく、地中深くまで地質を知りたい、という場合(あんまりないでしょうけど…)に利用できる、その名も、国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」です。

国土交通省、国立研究開発法人土木研究所および国立研究開発法人港湾空港技術研究所が共同で運営し、土木研究所が管理しているものなのですが、全国各地で実施したボーリング(地中の地質を調べるために、地上から筒状のものを打ち込んで引き上げることで、その直下の地質がどうなっているかを調べるもの)結果を公開しているのです。その地点の数はなんと約14万強!(下表)

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サイトを開くと、以下のような地図が表示され、ボーリングした箇所が分かるようになっています。

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見たいところを選択すると、その地点のボーリング結果(ボーリング柱状図)が表示されます。以下は例として渋谷駅直下のボーリング柱状図の一部です。

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地表から1.5mまでは埋土で、その下は砂と礫が交互に登場し、岩は17m以上掘らないと出てこない、などということが分かります(すいません、本当はもっといろいろ情報が読み取れるかと思います)。


最後に、先程の地質データをAR技術によって「新たな地質体験」ができるアプリ「ジオ・ビュー」が開発中でその社会実装トライアルの模様が以下に公開されています。

概要としては目の前の風景をスマホで写すと、そこに該当部分の地質データが重ねて表示される、というものです。
なかなか興味深かったのでご興味があれば(3分弱の動画です)。

→ソロキャンプという言葉が流行るように、観光においても密を避けるような需要が出てくることが考えられる。その時、こうした地質データや技術で新たな需要を喚起することは可能だろうか?その場合、どのようなビジネスモデルが考えられるだろうか?


5月11日(火) くまモンの経済効果は2年で○○○○億円!?

滋賀県彦根市に本部を置く一般社団法人・日本ご当地キャラクター協会が2014年(平成26年)に制定した「ご当地キャラの日」です。
日付は「ご(5)とう(10)ち(1)」(ご当地)と読む語呂合わせからです。

ご当地キャラ。
いわゆるゆるキャラとして大ブームになりました。

様々なキャラクターが登場し、一時は全国に3千体とも言われました。

私、勝手に「くまモン」が最初なのかと思っていましたが、「くまモン」の登場は2010年2月で、2007年には「ひこにゃん」が登場して2008年には彦根市で「ゆるキャラまつり」が開催されていたんですね。チーバくんも2007年(千葉県公式になったのは2011年1月)とは…。全く認識不足でした。

さて、なぜ自治体がゆるキャラを、ということですが、初期は「ひこにゃん」は「国宝・彦根城築城400年祭」のキャラクターとして、「チーバくん」も「ゆめ半島千葉国体・ゆめ半島千葉県大会」のマスコットキャラクターとして誕生しています。

ところが、「くまモン」あたりからゆるキャラがブームになると、いわゆる横並び、という意識もあったのでしょう、とにかく作って知名度をあげよう!という自治体も見られるようになり、結果的には埋没してしまうものもあったようです。

「くまモン」が一気にメジャーになった理由は複合的なものがあろうかと思いますが、元来お堅い自治体が予算を割くきっかけになったであろう報告書が、2013年12月に日本銀行熊本支店が公表した「くまモンの経済効果」でしょう。

同報告書の概要は以下です。

☑️ 「くまモン」登場から2年間に熊本県にもたらした経済波及効果は、 1,244億円
☑️ 同期間に「くまモン」がテレビや新聞に取り上げられたことによる広告効果は90億円以上

経済波及効果の分析は以下の通り。

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☑️ 直接効果(くまモン利用商品による県内生産の増加)761億円
☑️ 一次波及効果(直接効果によって県内産業にもたらされる生産誘発額)277億円
☑️ 二次波及効果(一次波及効果によって増加した雇用者所得が消費に向けられることによって県内産業にもたらされる生産誘発額)193億円

観光への波及効果については以下の通り。

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☑️ 観光客増加効果(県内観光でくまモンの3次元画像を取り込んだ写真撮影ができるアプリのダウンロード数と2013年のくまモン誕生祭の来場者数)18.8万人
☑️ 観光客増加による経済効果(上記をもとに推計)12億円

しかも、この報告書は、この「くまモン」による経済波及効果(2012年単年度分508億円)を他府県におけるNHK大河ドラマ等の経済波及効果と並べる、という「評価」もしているのです(下表)。

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大河等の経済波及効果平均は205億円で、「くまモン」の508億円を上まったのは2010年の「龍馬伝」だけ、という、衝撃の結果でした。

この結果は、まさにゆるキャラブームの真っ只中にあって様々なメディアで取り上げられました。

各地方自治体が慌てて「やらなきゃ」となったことが容易に想像できます。

改めてなぜあそこまでゆるキャラが増えたのか、原因の一端が理解できた気がします。

→参入障壁自体は低い(ぬいぐるみデザインして着ぐるみ作る)市場で一気にレッドオーシャン化して埋没するという1つのケーススタディだと思うが、では後発で成功するためにはどのような差別化、マーケティングが考えられただろうか?


5月12日(水) 2040年には医療福祉従事者は全ての働く人の○○%必要!?

厚生省(現在の厚生労働省)・日本看護協会等が1991年に制定した「看護の日」です。
1990年8月、文化人・学識者による「看護の日制定を願う会」が厚生大臣に要望書を提出したことが直接のきっかけですが、この日は赤十字社が、1820年のナイチンゲールの誕生日に因んで制定した「ナイチンゲールデー」、国際看護師協会(ICN)が1965年に制定した「国際看護師の日」でもあります。

看護
携わる看護師の方々は現在本当に大変なご苦労をされていると思います。

日本看護協会「平成29年看護関係統計資料集」によれば、2016(平成28)年の看護職員の総数は約166万人となっています。
昭和35年から平成24年までの推移を厚生労働省「看護職員の現状と推移」でみると毎年増加していることが分かります(下図)。

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最新の状況ですが、日本看護協会が公表した「2020年病院看護実態調査」によると、離職率が高いことが伺えます。

特に顕著だったのが、2019年度は離職率が20%以上の病院が倍増(10.4%から21.2%に)していることです(下図)。

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時系列でみると、正規雇用看護職員の1割は離職しており、新卒に限っても8%前後が毎年離職していることが分かります。

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なお、この調査の対象期間は2019年度(2019年4月から2020年3月まで)ですので、資料としては最新ですが直近の状況を示すものではない点は留意が必要です。

このように必要とされているものの、厳しい職場環境であることが伺える看護の現場ですが、これから少子高齢化が進むとその必要性、重要性はますます増えることが予想されます。

厚生労働省の「令和2年度版構成労働白書」では、平成の30年間と2040年にかけての社会の変容、というページがあるのですが、そこには衝撃の将来像の記載があります(下表)。

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どこが衝撃的か?
いろいろあると思いますが、本日のテーマ、看護という観点では、2040年には医療福祉従事者は1,070万人必要とされていることです。これは、2040年に予想される就業者数の実に5人に1人にもなります。

さすがに現実的でないということで、同白書でも「需給両面の改革が必要」と述べ、以下のようなシミュレーションがされています。

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もちろんこうした観点も必要かもしれませんが、そもそもの離職率の高さなどの原因をきちんと把握、解決しないことには典型的な机上の空論、になりそうです。

今の厳しい状況は医療従事者の使命感だけで乗り越えるには無理がありますし、これをみたことにより、将来、医療従事者を目指す人たちが減少することにもつながるかもしれません。

→看護師の離職率は高いように思われる。改善する方法はあるだろうか?またその背景として、常に人手が不足していることがあるようだが、これを解消するにはどのような方法が考えられるだろうか?



最後までお読みいただきありがとうございました。

「地質」
普段意識しないことだが、その土地の歴史を知る手がかりになり得る情報である。思いのほか様々な情報が公開されているので気軽に覗いてみるのも良いかもしれない、と感じました。

「ご当地キャラ」
ブームに至るまでの経緯が理解できました。それにしても、熊本市もそうですが、彦根市、なかなか企画力ありそうですね。

「看護」
現在は医療従事者の皆様の使命感に頼っているところが大きいと感じます。国、自治体、省庁、医師会、の権限や許認可が強い分野ですが、民間企業と同じく、この機会をチャンスにできるといいと強く感じました。


皆様にとっても頭の体操のネタが1つでもあれば嬉しいです。

昨年7月から投稿し続けており、だいぶ溜まってきました。
以下のマガジンにまとめていますので、よろしければぜひみてみてください。


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