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独書思想史

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僕の読んだ本のメモと一部にイシューを見つけ出し答えを求めようとすることを試みるマガジンです.
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『ポピュリズムとは何か』から見える日本の危機感

『ポピュリズムとは何か』から見える日本の危機感

水島治郎著『ポピュリズとは何か』から見える現代のポピュリズム的動向について少し考えてみたい.近年、ポピュリズムの概念が普遍的な理解として広まっている.しかしポピュリズムの認識はいずれも「悪」や「扇動」「独裁」といったデメリットの部分の認識が強いと感じる.

最近急激に支持層を増やしていった「れいわ新選組」や「NHK党」は正にポピュリズム政党に当てはまる.さらに遡っていくと元大阪市長の橋下徹氏が創設

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『自在化身体論』は「自動化」と「自在化」 

『自在化身体論』は「自動化」と「自在化」 

稲見昌彦教授らによる『自在化身体論』.稲見教授と言えば透明なマテリアル「光学迷彩」の研究で有名だが、この本の中では人間の拡張可能性について興味深い話をしている.

この本の中で取り上げられている「自動化」と「自在化」と言う考え方.最近注目を集めている完全自動運転やルンバといった掃除機は「自動化」に当てはまる.そして自在化と言うのは人間の身体性の限界を超越したアプローチを取ることだと思う.

例えば

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『芸術的創造は脳のどこから生まれるのか?』は知性があって生まれるセレンディピティ

『芸術的創造は脳のどこから生まれるのか?』は知性があって生まれるセレンディピティ

大黒達也氏による著書『芸術的創造は脳のどこから生まれるのか』は人間の脳メカニズムに基づいた創造性プロセスを分かりやすく紹介している.この芸術的創造は芸術のみならず仕事におけるアイデアや新しい発見を助長する際にも有効な手立てである.

そして創造性において最重要なのが「知性」である.この知性を基に創造的とは何かを考えてみたい.

記憶は2種類の大きな枠組みで捉えることができる.「潜在記憶」と「健在記

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『トヨタの社員は机で仕事をしない』が全ての活動の基盤的考え方になること

『トヨタの社員は机で仕事をしない』が全ての活動の基盤的考え方になること

最近では中小企業になるほど社員同士の役職格差はなくなりチームプレーの意識が尊重されている.社長は肩書だけで実際には社長も社員も同じように意見を出し合っていたりする.大切なのはチームプレーではなく、どれほど大きな結果を残すことができるか.だと思う.

この本では上司の部下に対する教育の考え方やプロジェクト以前の普遍的な意識の養い方などを提示している.

ここでは上司と部下として名前が存在しているが上

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『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は若者の努力不足なのか

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は若者の努力不足なのか

コンサルティング会社代表の城繁幸氏による著書の中で企業の人事課との対話がある.
その時の対話相手は「彼らはわがままで、我々の世代よりも忍耐力が劣っている」と述べられている文がある.私はこの文章に納得ができる反面、些か疑問に思えた.

この本が書かれたのは2006年でこの時代の若者は現在では40歳、50歳くらいになっている.

この2006年当時の若者から今の若者を俯瞰して見てみると精神疾患(ADH

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丸山眞男の日本思想『思想のあり方について』は現代の今と変わったのか

丸山眞男の日本思想『思想のあり方について』は現代の今と変わったのか

1961年に岩波文庫から刊行された丸山眞男氏の『日本思想』は日本政治思想史の中でも特に注目される考え方で『思想のあり方について』はⅢ項より述べられている.

ここで注目なのが日本の学問を「タコ壺」と呼びヨーロッパの学問を「ささら」と評している点である.一見なんら関係のなさそうな名詞だが構造に着目してみると日本の学問の問題点が明るみになってくる.

まずタコ壺というのはタコが敵から身を隠すために狭い

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