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lirukの超短編小説群

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2-EX-4シェルイェビナー、改めミクレビナーに関する雑談

2-EX-4シェルイェビナー、改めミクレビナーに関する雑談

 ミトラ=ゲ=テーア首都、プロティ・リーザ。とある日の昼下がり。
 やや暖かい気温の中、雨がしとしとと降り注ぐ。
 新キュプレサス通りの外れ。とあるブックカフェに、一人の機械種族ディータ。

 ご存知、ルノフェンだ。

 「ふんふんふーん」
 元の世界の彼は、書籍にあまり馴染みがない。
 だが、この世界で暮らすうちに、何かが変わったのだろう。
 たまに書店にふらっと訪れては、白紙の日記とペンを買っ

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[AI試運転]スパーリング・ウィズ・ツクモドウ

[AI試運転]スパーリング・ウィズ・ツクモドウ

「ルールは三つ。まず、これはスパーリング。サイバネがオーバーヒートしたらその場で負け」
「うす」
 目の前の男は、サイバネ化した右手の指を三本立てる。
 そいつの名前は九十九堂。色々あって、オレに稽古をつけてくれている。

「二つ目。制限時間は五分。その間に、俺に有効打を一発でも入れられれば、ヒカルくんの勝ちでいい」
「うす」
 難題だ。九十九堂は、はっきり言ってかなりの手練れ。上には上がいるとは

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【ワット・ザ・カラー・オブ・クィリンズ・ブラッド?】

【ワット・ザ・カラー・オブ・クィリンズ・ブラッド?】

 「五万円ー。五万円ー」「アカチャン、オッキクネ」「安い、安い。実際安い」広告用マグロ・ツェッペリンから、市民に過剰消費を促す音声が降り注ぐ。

 街路に目を向ければ、そこにもネオン広告の群れが待ち構えている。ネオサイタマ市民の多くはこの光景に慣れきっており、これらの広告がほとんど目に入らぬかのように往来を行き交う。

 ここは、ノビドメ・シェード・ディストリクト。ネオサイタマ有数の歓楽街だ。

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メーカネースの余興

メーカネースの余興

 赤錆びた廃ダンジョンの浅層、T字路。

 俺の後をつける即席の相棒に向け、声には出さず静止のシグナルを送る。
 相棒の名は、カルシラ。
 ブロンドの長髪に、カジュアル寄りのウェア。そして赤いピンヒール。顔もいい。

 「ミハルちゃん、なにか見つけたの?」
 通信からでも分かるほどの、余裕を持った態度。
 油断ならない女だ。
 こういうヤツこそ、腹の内ではしたたかに互いを出し抜くための方策を練って

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ポテサラエルフとのあまあまな日々

ポテサラエルフとのあまあまな日々

登場人物主人公 街に買い出しに来た「ベニ」に一目惚れ。何度か会話するうちに親しくなり、「一生ポテサラエルフの里から出られない」ことと引き換えに、ベニの伴侶となる。
 魔法技師。魔法を使った装置の設計、作成を企業としている。王都ではなんとか食っていける程度の腕前だが、魔法技師の少ないエルフ集落であれば他の追随を許さないだろう。

ベニ 年齢五十ほどの若いポテサラエルフ。精神年齢は、ヒューマンで言えば

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【うちのこPSO2-20】カレー屋のとてつもなく長い一日

◆序章◆ 「……よし」
 朝の仕込みを終え、キッチンを見渡す。
 鍋には、多種多様なカレー。釜には米。石窯も暖気は済んでいる。

 カラコロ、と正面ドアのベルが歌う。
 「ダストの旦那、張り切ってんねえ」
 入ってきた男はフロアに漏れる香りを嗅ぎ、そう漏らす。
 「当たり前よ、ゲイリーちゃん。だって今日は――」

 「らん先輩が来る。でしょ?」
 うさみみメイドコス姿のアルバイトが机を拭き終わり、

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ぽてとぴあ

ぽてとぴあ

 「ようこそ、極地からの旅人さん。歓迎するぜ」
 閑散とした《塩の地亭》の亭主は、私がカウンターに座ったのを見計らい、こう言った。
 「なぜあそこから来たと分かったかって? 単純だ。奴らの版図は塩の地と極地以外全てを網羅しているし、お前は奴らではないよそ者だ。それだけの理由だよ」
 聞き流し、ブルービートのリキュールを水割りで頼む。
 「ああ、そいつはおすすめだ。今やビートの酒はここでしか飲めんか

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うちのこ洗脳SS-18「紅恭也、童心に還る」-本編

うちのこ洗脳SS-18「紅恭也、童心に還る」-本編

【承前】

あらすじとまえがき
・ダブルクロスの悪落ち済みキャラクターである紅恭也は、本編後のオラクルに転移する。
・これから彼は胡乱エルフどもにひどいことをされる。
・本編はシリアスが一切ない。

 俺の名は紅恭也。明らかに元いた世界ではない宇宙船の一室で、今、天井から伸びる蔓によって後ろ手に縛られ、膝をつかされている。
 目の前には、二人の敵がいる。
 片方は金髪で隻眼、マッチョで酒臭い女。竹

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うちのこ洗脳SS-18「紅恭也、童心に還る」-序章

まえがき。本作は
・『有限会社F.E.A.R.』『株式会社KADOKAWA』が権利を有する『ダブルクロス The 3rd Edition 著:矢野俊策』
・『株式会社セガ』が権利を有する『ファンタシースターオンライン2』
・与太屋の皆様が権利を有するはずの『バンブーエルフ』『ポテサラエルフ』
の二次創作物です。
 低レベルの引退済みダブルクロスPCが本編後のオラクルに飛ばされ、現地に居たエルフども

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うちのこサイバーパンクSS17-「マヤーレ・インフリアのぼうけん」

うちのこサイバーパンクSS17-「マヤーレ・インフリアのぼうけん」

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 閉所の闇に、ラップトップ端末が二つ。それぞれの光が、男と少女の顔を照らしている。
 男の名は九十九堂冷泉分胤。一般に九十九堂と呼ばれているその男は、後頭部から伸びたケーブルを端末に繋ぎ、腕組みしながら少女を見守っている。
 少女はマヤーレ・インフリアという。彼女は凄まじいスピードで端末のキーボードを打ち、九十九堂の用意したセキュリティ防壁を破ろうとしている。薄群青の繊細な髪は彼女の

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エスケープ・フロム・リリィ・クイーンダム

エスケープ・フロム・リリィ・クイーンダム

この小説はファンタシースターオンライン2 ニュージェネシスの二次創作です。(C)SEGA『PHANTASY STAR ONLINE 2』公式サイトhttps://pso2.jp/
ちょい役でバンブーエルフも出てきます。

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 あるいはケーキを口に運んだフォークが、銀のディスクに置かれる音。

 柔らかい光を放つフォトン蛍光電球が、茶会に参加

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うちのこ面接SS-15「1,428,571メセタのツケ」

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 (あらすじ:日々をどうにか生きてきた赤貧キャスト「桜之宮なこ」は、熱中症で倒れてしまう。そこに通りがかった男の娘と少女のペアに介抱され……。)

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うちのこ熱中症SS-14「青々とした桜の下、路頭に迷う」

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『PHANTASY STAR ONLINE 2』公式サイト
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 マグナス山、谷間。見えるは陽炎、聞こえるは蝉の声。

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うちのこ酒乱SS-12「廃区画のリノベーション」

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このSSはファンタシースターオンライン2©SEGAの世界観および、バンブーエルフ概念をもとにした、うちのこ二次創作です。

 頭が、痛い。
 数少ない生身の部分である脳が、水を要求している。
 目を覚ます。

 ……朝日とともに視界を埋め尽くしたものは、筋骨隆々な女性の肢体。
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 「……!?」
 ――バンブーエルフのツーズーである。見知らぬ部屋、同じベッドでツーズーが寝

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