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双極性障害のはじまりは、異様な眠気から


授業中の寝落ち

るりの体調の変化に最初に気づいたのは、高校2年生の1学期。本格的な抑うつ症状が現れる8ヶ月ぐらい前のことでした。

るり曰く、「授業中に強烈な眠気に襲われ、どうしても寝落ちしてしまう。」るりは元々、真面目な優等生タイプで、授業はよく聞くほうでした。「眠気になんとか抗おうと思って、無理やり目を見開いたり、ノートにひたすら何かを書いたりするんだけど…気づいたら寝ていてチャイムが鳴って目が覚める。ノートにはミミズの這ったような字が残っている。」とのことでした。高校生が授業中に寝落ちするなんてよくあることですし、最初は「先生の授業がつまらないからかな。あと、夜更かししすぎ。睡眠をちゃんと取るようにしよう」とか親子で笑って会話が終わりました。

自転車運転中の睡魔と引っ越し

ところがるりの眠気は治らず、ついには通学途中、自転車に乗っている時に寝落ちしそうになったというのです。これはいくらなんでも異常ですし、危なすぎる。通学時間が長かったので、それを少しでも睡眠に充てられるよう、私は引っ越しを決意し、高校のすぐそばに引っ越しました。引っ越し後、2週間は「睡眠時間が増えてスッキリしたよ!」とるりは元気な様子でしたが、また頻繁に睡魔に襲われるようになってしまいました。

てんかんの薬のせい?

この異様な眠気は、持病の薬のせいではないかと私は考えました。るりは11歳の時に初めてけいれん発作を起こし、てんかんの診断を受けて、発作を抑える薬を常用していました。その薬がちょうどその頃、増えていたのです。

一人でてんかん医のところに通院したある日、るりは「今日から、てんかんにも気持ちの落ち込みにも効くという薬が加わった」と言いました。「気持ちの落ち込み?」と少し気になったのですが、ちょうどその時期、長年連れ添った猫が虹の橋を渡ったので、ペットロスのことかなと思いました。実はその頃、るりはすでに抑うつ症状や希死念慮を少しずつ持つようになっていたのですが、私はまだそのことに気づいていませんでした。

抗てんかん薬は抗うつ薬でもあった

るりは、自身のブログでこう書いています。
「うつ病を疑ったと書きましたが、私の場合は直接精神科に行ったわけではありませんでした。というのも、母は精神病になっている可能性を思い付かなかったからです。まだ高校生の私にとって、母に「精神科に行かせてほしい」と言うことはかなりハードルの高いことでした。」

るりのブログ↓

私に相談できない中、るりは自分の抑うつ症状に気づいて、てんかんの主治医にそのことを訴え、私には「抗てんかん薬」だとごまかしつつ、その抗うつ作用に期待して、ラミクタールという薬を処方してもらったのでした。

私は当時は理解していなかったのですが、てんかんの薬の多くは、同時に精神疾患の薬でもあるのですね。てんかんは、脳内のコンピューターが暴走した状態に例えられますが、てんかん発作と精神疾患による症状は類似のメカニズムだということなのでしょうか。

病気に気づけなかった

てんかんの主治医は娘のプライバシーを尊重したのか、親である私に、るりが抑うつ症状を訴えたことは言いませんでした。ただ、当時、るりはまだ16歳。私に「娘さん、うつ症状が出ていますよ」と教えてくれたら良かったのにと思ってしまいます。他方で、親に秘密にしてくれなければ子どもとしては辛い症状を医師に話せないこともあるでしょうし、難しいところです。

そして今、強烈に悔やんでいるのは、隣にいたのに、るりの抑うつ症状に気づかなかった私の鈍感さです。るりは何の問題もないように元気を装っていて、気づくことができませんでした。多少の浮き沈みはありましたが、「思春期だからこんなもんだろう」とスルーしてしまっていました。

また、るりが自分の抑うつ症状に気づいていたのに、私に話せなかったということに対しても、親としてとても申し訳なく思っています。もっと話せるような雰囲気を私が作れていたら…。

私はるりのことをとても大切に思っていました。だから、お金も労力もかかったけれど、るりの健康のためにと思って、即座に高校のそばに引っ越ししました。でも、その努力の方向性は間違っていました。無闇に動くより、もっとじっと、るりの様子を観察すべきだったのです。

そして、授業中の寝落ちが激しくなってきたため、私は「てんかんの薬を増やしたから眠気が増したのかな?発作はもう何年もないから減らしてもいいんじゃない?」と言い、るりに、減薬してもらうよう伝えたのでした。

この時期に抑うつ症状に気づき、治療を始めていたら、るりは今も生きていたのでしょうか。わからないです。ただ、振り返ってみると、るりの病気に気づけたタイミングは何度かあって、愚かな私はそのサインを全て見逃してしまったのでした。


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