やっぱり自分の音楽が最高かもって話と、メンタルタイムトラベルとの関係性
好きなアーティストは誰ですか? とか
どういったジャンルが好きですか? とか
相変わらずパッと出てこないのは、未だに自分の楽曲が最高だと思ってるか、もしくは基準になっているか、だと思うことがある。
(曲単位では何曲もあるし尊敬している人はいる)
「好きなアーティストは俺です」
「好きなジャンルも俺です」
さすがにこんな答え方はできない。
大丈夫か?
少しヤバいやつだと、自分なら思うだろう。
※strongという曲はメジャーデビュー盤で最初に完成させた作品だ。しかし色々な事情があってお蔵入りになってしまった。
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五感からの刺激をきっかけに、過去の記憶が鮮明によみがえる現象のことをメンタルタイムトラベル(心的時間旅行)と言うそうだ。
名古屋大学の川口潤教授によると、そもそも「懐かしさ」を感じる記憶は特殊なものだそうだ。普通は最近の記憶が鮮明で、過去になればなるだけぼんやりとしていくもの。しかし、懐かしさを感じる場合はただ思い出すというより、何かしらの刺激で過去を再体験する意識状態メンタルタイムトラベルになるため、鮮明になるという。
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そして、音楽は懐かしさを容易に喚起させる刺激になるそうだ。また、2011年に行われた研究では、音楽を聴いて感動し、ゾクッとする感覚が生じた時の脳活動とドーパミン量を測定。その結果、ゾクッとする感覚を期待してドーパミンが分泌され、実際に感覚が生じた時にもドーパミン量が増加した。そして、この脳活動が、懐かしさを強く感じた時と近いとも考えられている。
つまり、音楽を刺激にしてメンタルタイムトラベルの状態になるため、懐かしい思い出が甦りやすくなるのだ。また、この効果は人間にとって何らかの報酬の働きをしているのではないかと考えられるそうだ。心理学の実証研究はまだ少ないため、記憶と音楽の関係性は、今後さらに解明されていく分野と言われている。
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ちなみに、昔の記憶を思い出す脳の働きは、心の健康に関係しているそうだ。認知症や強いうつ状態の場合は、過去のことを思い出せたとしても、鮮明さに欠けることが知られている(ココが課題)
前出の川口教授いわく「記憶を思い出す能力は、過去の経験を生かして未来をプランニングする能力と相関があります。懐かしさを感じることは、将来の人生設計に役立つと思いますよ」とのこと。たまには、昔の音楽を聴いて、記憶を振り返ってみるのもいいかもしれない…
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今やただのクダを巻いているおっさんになったが、10年前までDJやらアーティストやら、プロデューサー活動やらを活発にしていた。オリジナル、ユニット名義、企画物含めると、アルバムは20タイトル、リミックスやプロデュースなどの外仕事もざっくり50-60曲は制作したと思う(うろ覚え)。
なので、計300曲くらい世に出てるわけだ。
では、メンタルタイムトラベル状態と、自分の音楽について考えてみる。
そこで、音楽制作について少し触れたいと思う。
何万の人がクラブに会いに来てくれて、何十万の人が音源を聴いてくれた背景には、何百人というスタッフやミュージャン、エンジニア、そしてゲストアーティストの協力があって、はじめてリスナーと繋がることが出来る。
メンタルタイムトラベル状態が起こる場合、リスナーとクリエイターの大きな違いは、作品を聴いた後のメンタルタイムトラベルか、制作過程のメンタルタイムトラベルか、という点だ。
自分の制作は、作曲、作詞、編曲の順で進める。作曲はソフトで型を作って、それを元にボーカリストに作詞をお願いする。上がったらアレンジャーへ投げて仮アレンジ、最後にキーを合わせて仮歌を録音し、後日に正式な録音をして調整。場合によっては追加でコーラスなども入れる。
・仮歌を録るときはこの状態(全てソフトシンセ)
歌のレコーディングは、ルームに入れてもらえないこともあったし(パケたテイクを渡され終わり)、12時間以上かかったり、2時間で終わったり、ボーカリストによってマチマチだった覚えがある(早い子は耳がいい)
・歌入れ後(ギターは生)
編曲をする際にオファーしたスタジオミュージシャンに関しては、持ち替え(弦ならバイオリン・ビオラ・チェロまで弾ける)や編成(管楽器ならすぐトリオ作れる)できる人にはお世話になったなぁ、とか同じ大学のギタリストには安心感を覚えたり、ベースならこの人!なんて思い返す。同じスタジオに居合わせた著名なミュージャンに「1万でいいよ」とまるまる1曲弾いてもらったりすることもあった。か、感動。
仕上げにミックス(トラック)ダウンという音の調整を行う作業があって、自分はこの作業がとても好きだった。
曲が研磨され一番美しくなる状態で、ファイルのサイズもこの時が一番大きい。クラブで使用する音源はこの状態のものだ。
最後にマスタリングというCDサイズの容量に落とす作業があるのだが、音の劣化は否めない。作品によってはバチバチに入れ、敢えて歪みを作る場合もあったが、やっぱり自分好みじゃなかった。
こういった過程があると、思い入れが強くなるのは当然だろうと思っているし、思い入れが強い分「最高」なんて思うのもまた当然かも知れない気がする。
制作について簡単に説明するとこんな感じだ。
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では、メンタルタイムトラベルに話を戻そう。
川口教授によると、
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これらを総合的に考えると、なつかしい記憶へのメンタルタイムトラベルは、気分を少しポジティブに向かわせるような気分調整効果があるのではないだろうか。
ただ、日常的に感じるなつかしさはネガティブな気分との相関が強いことも見出されているといった指摘もあるという。
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若者には「なつい」と略されることもある「なつかしい」という感情。「なつかしさ」を持つことは人間らしさの一つの証でもあるようだ。「エモい」にも少し共通するのではないかという気もする。
近年、AI技術の進化により性能が向上する一方のロボットには、作業の効率性の観点からか、「なつかしさ」を感じるような設計はされていないようである。心の中でさまざまな出来事を再体験する自由や楽しみが人間だけの特性なのだとしたら、感覚や感情を大切にしていきたいものだ。
また、なつかしい記憶を呼び起こすことは、幸福感が向上する効果も期待されている。スマホにSNSなど、私たちは大量の情報に目まぐるしく接し、常に取捨選択を迫られている。たまにはスマホを置いて「あの頃」の音楽を聴いたり、思い出の地に出かけたりして、メンタルタイムトラベルで心に栄養を与えてみてはどうだろうか。
という自分は、当時の自作曲を聴きながらメンタルタイムトラベルで心に栄養を与え、この記事を書いている次第である。
結局、最高だと思ってる時は、メンタルタイムトラベルの状態にあるかどうかと、いうことが重要なのかもしれない。
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