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みっことさかみち団地

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創作児童文学。 みっこはさかみち団地に住んでいる。 さかみち団地にくらす、ふうがわりなひとたちとの出会いと別れの物語。
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記事一覧

みっことさかみち団地⑤

「みっことヒカルくん」

みっこの家のちかくで、赤ちゃんがうまれた。
団地にはたくさんのちいちゃいこどもがいるから、みっこはおねえさんになったきぶんだ。

「ヒカルって名前なの。仲良くしてね。」
道ばたで出会ったヒカルくんのお母さんは、そう言ってにっこり笑った。

ヒカルくん、ヒカルくん…
からだがピカピカひかっているのかもしれない。

みっこはまだ顔を見たことのないヒカルくんのことをたくさん

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みっことさかみち団地④

「みっことフクロウ」

みっこのクラスメイトに、ヤタ という苗字の男の子がいる。

ガイコツみたいにガリガリで、目が大きくてとつぜんおどりだしたり、人を追いかけたりおどかしたりする。

みっこはヤタが苦手だった。
よくわからずにわるいことをして、先生におこられてはんせいする子とちがい、ヤタはニヤリとわらってまた同じことをやるからだ。

わかってて、いやなことをしてる。
みっこはなんとなく気づいてし

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みっことさかみち団地②

「みっことゴーヤおじさん」

みっこの住む団地には、みんながつかえるお庭がある。

お庭はひろくて、たくさん走れて、さくらの木もある。

春は、さくらの花でお庭がピンク色になる。
みっこは家のベランダから、ふわふわピンク色のさくらをみるとワクワクした。

ある日、みっこがお庭のよこを通るとおじさんのあたまが地面からはえているのをみつけた。

くびからしたは、土にうまっていてみえない。
遠くからだと

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みっことさかみち団地③

「みっことユッキー」

みっこの住む団地には、いくつか公園があった。
ななめ公園、したの公園、よこの公園。

どうしてそんな名前がついているのかはわからないけれど、おとなも子どもも、みんなその名前で3つの公園を呼んでいた。

したの公園では、みっこよりすこし年上のユッキーと呼ばれるお兄さんがよく男の子たちとあそんでいた。

ユッキーは、ほかの上級生みたいにいばったりしない。
やせっぽっちで、せ

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みっことさかみち団地

団地に住んでいた子ども時代を物語に。

「みっことかさおばさん」

みっこはさかみち団地に住んでいる。
うまれた時からさかみち団地にいるのよ とお母さんが言っていた。

うまれた時のわたしをわたしは知らないけれど、きっとちいちゃかったのだろうなぁ って思う。

だって10さいの今も背のじゅんはいつもいちばん前だ。

せいれつをする時に、こしに手をあてるのはなんだかかっこ悪い。
ちいちゃいのに、いば

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