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語学のもろもろ

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語学に関する雑談やつぶやきを集めています。
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#考察コラム

二種類の「孤独」──『孤独の発明』を読んで

孤独。だが一人という意味ではなく。たとえば自分がどこにいるかを知るために自らを追放の身に追いつめたソローの孤独ではなく。鯨の腹のなかで解放を祈るヨナの孤独ではなく。退却という意味の孤独。自分自身を見なくともよいという意味の孤独、自分が他人に見られているのを見なくともよいという意味の孤独。

ポール・オースター『孤独の発明』柴田元幸訳、新潮文庫、新潮社、平成27年、p.29

孤独にも種類があって、

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学校で教えてほしかったこと

「『親切』ってどうして『親を切る』って書くんですか」
と訊いたことがある。相手は中学校の国語の先生だったが
「わかんねえなあ……。おもしろいこと言うな、お前」
と返事が来て、それっきりだった。その疑問をどう処理すればよいのか、どこや何を調べれば答えに辿り着けるのか、そういうことは何も教えられなかった。

それで今度は、使っていた通信教育(Z会)に電話をして同じことを訊いた。すると、担当してくださっ

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翻訳の格闘Ⅱ

ὁ βίος βραχὺς, ἡ δὲ τέχνη μακρὴ
(ホ・ビオス・ブラキュス、ヘー・デ・テクネー・マクラー)
人生は短く、芸術は長い
──ヒポクラテス

有名な一節なので、知っている人も多いだろう。「人生は短く、芸術は長い」。簡潔にまとめられたゴロのいい訳で人口に膾炙しているが、この和訳が正しいかというと、これはそうでもない。分解して見てみよう。

まず、最初のὁ βίος(ホ・ビオス

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生と死の連続的な関係

少し前のニュートン (科学系雑誌) の「死とは何か」を読んで、実際は生と死の境目って案外、曖昧なんだよなあと考えている。ある人が本当に死んだかどうかは、本人になって体験してみないとわからない話で、どれだけ外から数値や外観で判断したところで、それは死んでいるという決定的な証拠にはならない。だから「死」はいつも、生きている側の人々が判断して決めるものだと言っていい。

いま『聊斎志異 (りょうさいしい

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