その一因　一、武田効果　第65話　

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その一因　一、武田効果　第65話

【参照】その一因　一、武田効果
【参照】信長の甲斐侵攻　３信長、出陣　
　　　　◎第65話　　◎小65　　 ◎P65　　通し　　第65話

天正十年１５８２、三月五日。
信長は、安土を発った。

近衛前久も、京から、出陣した。
吉田兼見が、粟田口で、これを見送っている。

光秀は、大勢の兵を率いて参陣した。
　その時の様子が、「兼見卿記」に記録されている。
　かなりの数である。　

　　今朝、御出馬、治定なり、
　　路地中、数千騎、
　　惟任向州、多人数の由、申しおわんぬ、
　　武具を対(帯)す、

　来たる中国大遠征への、予行演習を兼ねたものなのだろう。
　長期間になることが予定されていた。

信長は、仁科信盛の首を検分した。
　三月六日。
　岐阜へ向かう途中。
　呂久の渡しにて。
　「首実検」
　高遠城が落ちたのは、三日前のこと。

　同日、岐阜城着。
　信盛の首は、長良川の河原に晒された。

　同七日。
　岐阜に逗留。
　無情の雨が降る。

光秀の心の内は、鬱々としていた。
　何を考えていたのだろうか。
　光秀にとって、美濃は故郷。
　久方振りの帰郷であった。
　昔日のことを思い起こしていたのかもしれない。

　なれど、・・・・・。
　光秀の心は、重く沈んでいた。
　鬱々とした日々がつづく。

となれば、
これが、「嵐の前の静けさ」・・・・・、か。

この、わずか、四日後である。
「勝頼、死す」
「武田、滅亡」
時代が、激動していた。

そして、手にした「武田効果」。

信長は、大きな自信を得た。
「次は、毛利」

信長は、確信した。
「天下統一は、成る」

ならば、その次。
「さらなる夢」へ。

そこに、油断が生まれた。

石谷頼辰、未だ、帰らず。
「万事休す」

光秀は、四囲を見渡した。
勝家は、秀吉は、一益は、・・・・・。
「来ぬ」

光秀は、決断した。

六月二日未明、「本能寺の変」。

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