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本能寺の変1852 その一因 一、武田効果 第114話 天正十年六月二日、明智光秀が織田信長を討った。その時、秀吉は備中高松で毛利と対峙、徳川家康は堺から京都へ向かっていた。甲斐の武田は消滅した。日本は戦国時代、世界は大航海時代。時は今。歴史の謎。その原因・動機を究明する。『光秀記』

その一因 一、武田効果 第114話 

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【シリーズ】信長の甲斐侵攻

その一因 一、武田効果 第114話

【参照】その一因 一、武田効果
【参照】信長の甲斐侵攻 4勝頼の首
    ◎第114話 ◎小114   ◎P114  通し  第114話

同、三月十四日。
信長は、浪合に着いた。
 
禰羽根から、凡そ五里20km。
 山中の静かな小集落である(長野県下伊那郡阿智村浪合)。 
 今で言えば、四月頃。
 新緑の谷あい。
 桜の咲き始める季節。

信長は、ここで、「勝頼の首」と対面した。

  十四日、平谷(同平谷村)を打ち越え、なみあひに御陣取り。
  爰にて、武田四郎父子の頸、関与兵衛・桑原介六、もたせ参り、
  御目に懸けら侯。 (『信長公記』)

光秀も、「勝頼の首」を見た。
 
光秀は、信長に同行している。
 おそらく、そうだったのではないか。 

 これが、武田の最期。
 信長に逆らった者の末路。
 「哀れなものよ」
 時は、滔々と流れていく。

信長は、戦後の処理について考えた。
 思った以上に、早い決着。
 大戦果。
 信長は、機嫌がいい。
 満足していた。

 先ずは、恩賞。
 四ヶ国の国割。
 甲斐、信濃、上野、駿河。
 諸将の配置。
 そして、家康。
 関東・奥羽の仕置き。
 北条のこと。
 ・・・・・等々。

信長は、「勝頼の首」を、飯田で晒した。
 同三月十五日。
 浪合を出発。
 行軍、凡そ六里半26km。
 飯田、着。
 ここで、勝頼の首を晒す。

信長は、武田の滅亡を近隣諸国に知らしめた。
 
敗れた者、斯くの如し。
 「無念」
 その形相(ぎょうそう)。
 光秀の、脳裏にこびり付いた。

武田信豊の最期。
 同じ頃。
 武田信豊が家臣下曽根浄喜によって殺害された。
 「裏切り」 
 信豊は、信玄の弟典厩信繁の忘れ形見。
 勝頼の従弟である。

信豊の首。
 
信長、これを検分。

信長は、勝頼の乗馬大鹿毛を信忠に与えた。
 申し分ない戦ぶり。
 「見事」
 そう、思っていただろう。

信忠は、自慢の後継者だった。
 信長は、目を細めた。
 大満足である。
 織田家の将来は、明るい。

信長は、武田の消滅を実感した。
 
滝川一益から信長へ。
 「武田四郎勝頼、最後にさゝれたる刀」、進上 (『信長公記』) 。

信長は、執念深い。
 思えば、十年前。
 元亀三年1572、十二月。
 信長が窮地に陥っていた時。
 武田信玄が裏切った。
 「三方ヶ原の合戦」
 信長は、煮え湯を飲まされた。
 大敗を喫す。 

 積年の怨み。
 今、ここに晴らす。

信長は、勝頼の首を京へ送った。
 「獄門に懸けよ」
 使者は、長谷川宗仁。

長谷川宗仁は、首の配達人。
 
天正元年1573、八月。
 信長に命じられ、朝倉義景の首を京へ送り届け、獄門に懸けている。

「噂」が、諸国を駆け巡った。
「あの武田が」、・・・・・。
滅ぼしたのは、織田信長。
朝倉、浅井、公方義昭、本願寺。
のみならず、今また、武田。
となれば、次は、毛利。
刃向かう者は、殺される。
「恐ろしき男」、・・・・・。
最早、この国に、信長に逆らう者などいない。

これすなわち、戦争抑止力。
「戦わずして勝つ」
信長は、最大の武器を手に入れた。
「百万の味方を得たに同じ」
正に、独擅場。
信長に、並び立つ者、これなし。

これが、「武田効果」。

信長は、この年、四十九歳。
来たる年、ちょうど、五十歳。
「人間五十年」
信長は、これを、人生の一区切り、と考えた。

武田は、瞬く間に、滅び去った。
信長は、己の勢威を再認識した。
それが、強い自信となった。
それまでに、「天下統一は、成る」。

そして、「さらなる夢」へ。
これが、信長の志向である。
光秀のそれとは、相容れぬものだった。

その矢先に、事件が起きた。

六月二日未明、「本能寺の変」。



 ⇒ 次へつづく


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