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マンガノート

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マンガノート⑦ 『浦沢直樹の漫勉neo』 坂本眞一『イノサン
            』

マンガノート⑦ 『浦沢直樹の漫勉neo』 坂本眞一『イノサン 』

『浦沢直樹の漫勉neo』第8回。
坂本眞一を取り上げるとは、NHK、なかなか攻めてますなあ。

坂本眞一 の代表作は、何と言っても『イノサン』ですね。        画力は非常に高くて耽美的かつ細密な画を得意としており、画の美しさという点では、多分日本でもトップクラスの一人でしょう。         

猟奇的なシーンやスプラッター・シーンがやたらに多い画の感じは、何となく丸尾末広に一脈通じるもの

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マンガノート⑥ 「浦沢直樹の漫勉neo」 惣領冬実『チェーザレ 破壊の創造者』

マンガノート⑥ 「浦沢直樹の漫勉neo」 惣領冬実『チェーザレ 破壊の創造者』

NHKEテレで毎週放映中の「浦沢直樹の漫勉neo」。         2014年の開始以来、これまでに                    〈第1シーズン〉かわぐちかいじ(『ジパング』)、山下和美(『ランド』)他。                              〈第2シーズン〉萩尾望都(『ポーの一族』)、花沢健吾(『アイ・アム・ア・ヒーロー』)、古屋兎丸(『帝一の國』)他。     

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マンガノート⑤  SFディストピア・マンガ  新田たつお「隊務スリップ」

マンガノート⑤ SFディストピア・マンガ 新田たつお「隊務スリップ」

東京がテロリストの核攻撃を受けて壊滅した後、念願だった再軍備を達成し、世界第三位の核兵器を持つに至った近未来の日本を描いたポリティカル・フィクション系SFディストピア・マンガです。

初めの内は一見ギャグマンガ風で、題名よろしく「滑った」ギャグが満載。しかし、饅頭屋の職人だった主人公たちが3か月間の促成軍事訓練の後、アフリカの紛争地帯へ強制的に海外派兵される2巻、3巻と進むにつれて物語は深刻度を増

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マンガノート④ 読み始めると涙が止まらない 戸部けいこ「光とともに… ~自閉症児を抱えて~」

マンガノート④ 読み始めると涙が止まらない 戸部けいこ「光とともに… ~自閉症児を抱えて~」

自閉症は、1000人に1人か2人生まれるとされていますが、この作品は自閉症児をもった親の子育て体験をもとにしたマンガです。

自閉症は先天性の発達障がいの一種で、一昔前まではアスペルガー症候群と呼ばれ治療不能とされていましたが、現在では研究が進み、治ることはなくても周囲の理解と適切な指導によって成長していくことが可能になっています。

第1巻は、誕生・幼児編と保育園編。
我が子が自閉症と診断されて

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マンガノート③ 林静一の前衛マンガ 『赤色エレジー』

マンガノート③ 林静一の前衛マンガ 『赤色エレジー』

『赤色エレジー』は1970年から1971年にかけてマンガ雑誌「ガロ」に連載された劇画で、あがた森魚の同名ヒット曲のモチーフになった作品として一躍有名になりました。レコードのジャケットも林静一が描いています。

あがた森魚『赤色エレジー』1972

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マンガノート② 実験マンガ 萩尾望都『柳の木』

マンガノート② 実験マンガ 萩尾望都『柳の木』

ラスト近くまで、ほぼ同じ場面、同じ構図がずっと続く一種の実験マンガ。
しかも、全20ページ中、吹き出しがあるのはラストの3ページのみ。   

萩尾望都の短編マンガでは、『半神』に次ぐ傑作だと思います。

川のほとりの柳の木の下に一人たたずむ白い傘をさし、夏服を着た女性。

彼女は、土手の上の道を行き交う人々を見上げています。
そして、その視線は、道を通る一人の子どもの姿にいつも注がれているのです

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マンガノート① 萩尾望都の最高傑作『半神』

マンガノート① 萩尾望都の最高傑作『半神』

1970年代に『ポーの一族』や『トーマの心臓』で少女マンガの新たな地平を切り開いた作者が、1980年代にマンガ表現を一気に芸術の域にまで高めた記念碑的作品。

腰のあたりでつながった結合双生児姉妹ユージーとユーシー。      知的障害があり、立って歩くことも出来ないが、美しく天真爛漫で誰からも愛されるユーシー。                         一方、知的能力は高いが栄養をユーシー

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