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ふありの散文その他

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ふありが、その時々に思った事、感じた事を書き留めた散文…
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白詰草と蒼白鳥

白詰草と蒼白鳥

 毎年、春になると一斉に白詰草が咲きだす池がある。緑の森奥深くにその池はあった。これは、その白詰草の池と、俺の妹の身に起きた逸話。

「袴なんて珍しいわね」
「そう、かな…」
 わたしは、不思議そうに首を傾げ、両手でポンポンと袴を叩く少年をじっと見ていた。
 わたし達の足元には一面の白詰草が咲いていて、都会暮らしのわたしには、とても身体が澄み渡るような、浄化されるような新鮮な気持ちだった。祖母の家

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〜不思議の招待状《簡単な自己紹介》〜

〜不思議の招待状《簡単な自己紹介》〜

 改めましての方、初めましての方、こんにちは、ふありの書斎です。

 友人の影響でnoteに、簡単なご挨拶と、処女作『鳥籠姫』を上げて始まったnoteライフですが、ここで一旦許容範囲内での、簡単な自己紹介をさせて頂くことにしました。
お時間がある方、興味を抱かれた方、などふありの書斎に少しでもリンクしてくださった方に、サクッと読んで頂ければ幸いです。

物語とわたし

病とわたし

空想癖

紅茶

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不思議な紅茶時間~#外伝ver1~ 

不思議な紅茶時間~#外伝ver1~ 

はじめて空を美しいと思えたのは中学校の卒業日。
それまでは、ただ普通にあるもの当然のごとくあるもの、だからあの日は人生で特別な日になりました…良い意味で。
今でも付き合いのある友人が、下校時にいつも空を見上げ空について延々と語っていました。
「あのあたりの淡いピンクの雲がグラデーションしていて、夕焼け空もキレイだよね」
とか。当時のわたしには彼女の言葉が…正直理解できませんでした。
それどころか、

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自然をまとう

自然をまとう

あなたは、昔から感性がずば抜けて豊かでしたよね。いや…豊かすぎて怖いくらいでした。

結婚して、子供ができて、仕事もして、日々多忙な生活を強いられていたけど、あなたの感性は削られるどころかますます豊かになりましたよね。

わたしはそんなあなたが眩しく、その溢れるばかりの優しい感性をほんのすこしでも良いから分けて欲しいと常々思っています。

四季の彩りの変化、道端に咲いている何気ない花も、あなたの表

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歪んだピエロ

歪んだピエロ

ふありの書斎の幼少期に遭遇した、すこし不気味な出来事

 罪悪感を覚えたのは幼稚園のときだった。わたしはその頃から自分は知能が他の子達より遅れた、欠陥人間のような存在だと思っていたから、幼稚園のバザーの売り子を、午前中に務めなければいけないことをすっかり失念していて…ものすごく罪の意識に駆られた。
 自分はなんてダメな存在なのだろう…と落ち込んだ。
 当然、役目を果たさなかった自分はクラスにも行け

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口紅一本の魔法

口紅一本の魔法

〜心の病の、わたしなりの朝のルーティン(身支度)〜 

病が悪化してから、以前は普通に出来ていたルーティンが苦痛になった。

わたしの場合の朝のルーティン(主に洗顔、スキンケア、メイク、ヘアセット、着替え、朝食)ストレスが、療養中のため規制された時間がないので、ゆっくりとこなせるのに、何故か酷く億劫になり出来るだけ時短で全てを終えてしまいたいと思うようになった。

とりわけ洗顔、スキンケア、メイク

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ふあり、潰れる

ふあり、潰れる

2日前から投稿した『口紅一本の魔法』と、『どこまでなら許される?』が、好評でスキとコメントを頂き、そしてフォロワー様になって頂き今、皆さまの作品を読ませて頂いています。でも、つい先日まで、コメント欄の存在さえ知らなかったわたしなので、皆さまからのスキにどうしたら感謝が伝わるか悩んでいました。それにスキの数が1桁を越えるのは本当に稀でした。

それが、なにか夢ではないかと思えるほど♥️が降ってきて、

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教師という聖職者の使命

教師という聖職者の使命

何の夢や才能を持っていなかった、わたしの長所を、導き出して下さった恩師、伊藤先生へ捧げます。

皆さまもご承知の通り、

学校の教師は聖職者です。

実家が、宗教などに関わっている方は、産まれたときから、(例えば、キリスト教や仏教など)身近に聖職者がいて自分を導いて下さる環境があります。

ですが、大体の人間は小学校に入学し『先生』と呼ばれる存在が、初めて出会う聖職者なのだとわたしは思います。

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心の名医✨田上先生

心の名医✨田上先生

今回はまた、私の歩んできた人生の中で、特にターニングポイントとなった出会いの方について書こうと思います。

今回は、わたしの心の病の主治医、田上先生です。田上先生の存在なくしては、今のわたしは居ません。

中学生の時、某所に出かける母に自分も着いていきました。某所までは、何回も電車を乗り継ぎやっとのおもいで辿り着きます。用事を済ませ、電車で帰路につく途中の駅で、わたしはパニック障害を発症してしまい

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最後の診察

最後の診察

昨日、中学時代からお世話になった精神科医、田上先生の診察を受けました。
病院の場所を転々と変えながらも、わたし達が通院できる距離内でした。
新しい先生の引き継ぎのため、最後の院内はすっかり様変わりしましたが、それでも、あの場所は先生のクリニックでした。

まだ引退されるにはお若いのに、でも先生には先生なりのご事情があったのだと思います。

故父が、大学病院で『うつ病』と、診断を受け、紹介状を頂き、

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水に沈む ―鬱―

水に沈む ―鬱―

恋人に見捨てられ、森に彷徨い込み、いつしか川の水に足を取られ、摘み取っていた花を散らし、水死するオフィーリア。

恋人に見捨てられ、悪い魔女の罠にハマり、美しい声を失い、海の泡となる人魚姫。

どっちもバッド・エンド。

そんな美しくも狂気の影を残す『水死』の、逸話。

朝の私は頭に膜を貼ったような、気持ちが沈んだ状態で目覚める。

午前中の私は死んでいる。

鬱病を患っている方なら、理解出来るか

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お誕生日ありがとう

お誕生日ありがとう

もう数日で、わたしの誕生日が訪れます。

思い出に残るお誕生日は無いのだけれど、まだ、少学生の時分、お友達をお家にお招きして、お誕生会を毎年開いていました。

母親にたくさんご馳走を作ってね!と、お願いして、お誕生会の招待状を渡した分だけの友達の(必ず渡されるであろうプレゼント)お返しをチェックして、わくわくしながら皆が来てくれるのを待っていました。

お母さんに無理させて作ってもらったご馳走は、

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私、本が読めません…

私、本が読めません…

持病の症状の一環で、現在のわたしは、読書が出来ません。

小説も、ジャンルに拘らず、児童書から、文芸に至るまで、読めません。

それに加えて、漫画本も、エッセイも、トリセツすら読むことが出来ません。

先日、文庫落ちした金原ひとみさんの『アンソーシャルディスタンス』も、朝井リョウさんの『正欲』も、気が散ってしまって集中できず、1行読むのですら辛いのです。

本当は、読書大好きだから、気持ち的には、

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雨が降る

雨が降る

昔から、雨の日は何故か憂鬱だった。

空もくすんだ灰色で、ポツ…ポツ…と雨雫が窓に音を立てる、その音ですら心が暗く、わたしという人間が汚されているような感覚に陥った。

もっと大袈裟に言えば、世界が雨に汚されていた。

雨の日は嫌い。
出来るだけ外出しないで、止むのを待とう。

けれど、それはつい以前の感覚。
今、雨が降ると、何故か、憂鬱にはならず、汚されていくような感覚にもならず、

ただ、

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