第21段 よろづのことは、月見るにこそ。
徒然なるままに、日暮らし、齧られたリンゴに向かいて云々。
『月が綺麗ですね』と言えば、夏目漱石だ。この言葉は有名すぎるほど有名だが、俺はどちらかというとこちらの俳句の方が好きである。『あるだけの 菊投げ入れよ 棺の中』これは夏目漱石が、当時夢中になっていたというマドンナ、大塚楠緒子さんに捧げた詠として知られている。品があるように見せかけて実はこれは、とんでもなく最高にロックな詠なんじゃないかといつも思う。否、語弊があるかもしれない。ロックというよりも、大人の皮を被った子供が