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転換プロセスとしてのDX
DXを組織の変革のモデルであるダイナミックケイパビリティ概念から読み解いてみたい。本概念を組み合わせると、DXは何かある特別な能力で示されるのではなく、複数の能力がつながった「一連のプロセス」であるという見方ができる。
ダイナミックケイパビリティのエッセンスを説明すると、変化を「察知(sensing)」し、機会に「反応/取り込み(seizing)」、ビジネスモデルやビジネスシステムを「再構築(r
DXとは「何」だったのか?
DX(海外では英語のままDTと呼ぶ)とは結局「何」だったのか?
すでに過去形で表しているが、最近よく参照されるレビュー論文があるので、簡単に内容を触れておきたい。「レビュー論文」とあるとおり、あるテーマに沿って複数のアカデミックペーパー(学会誌)でどのような内容が取り上げられてきたかを、著者の視点でまとめた論文である。
まず、それぞれの論文のDTの定義について20ほど示されているが、今回は省略す
イノベーションはユーザーが起こす(最終) ― ITが普及する要因
今回、前回までの議論の結論に至ろうと思う。
これまでの議論を振り返ると、ユーザー自身がイノベーションを起こすのは、ユーザーが情報の粘着性の高い情報を持ち、メーカーに伝達できないから。これは、ITの導入についても言え、業務面、技術面、導入方法面に粘着性の高い情報が存在する可能性がある。
IT導入にかかわる分析のフレームワークを示すと下図のようになる。
IT利用者(ユーザー)においては、例えば業務
イノベーションはユーザーが起こす③ ― IT導入における情報の粘着性とは?
前々回、ユーザー自体がイノベーションの担い手となる可能性があることを述べ、前回、ユーザーがイノベーションを起こすことを説明する概念として「情報の粘着性」を紹介した。
今回、国内企業を対象としてITの導入における「情報の粘着性」とは何かを説明する。
まず、国内企業においてITの導入に関わるプレーヤーとして大きく三者に分類できる。
①ITを提供する者:機器だけでなく、ソフトウェアパッケージ、サービス
イノベーションはユーザーが起こす② ― 情報の粘着性概念
前回の、「社会的発見を通じて、既存のものを組み合わせユーザーがイノベーションを起こす時がある」ことを述べたが、ユーザー・イノベーション研究の重要な概念に「情報の粘着性」がある(Hippel,2006; 小川,2007)。
「情報の粘着性」とは、「局所的に生成される情報をその場所から移転するのにどれだけコストがかかるか」を表現する言葉である。例えば、情報が形式知化されていなかったり、利用するための
イノベーションはユーザーが起こす① ― ユーザー・イノベーションについて
イノベーションが技術の革新だけではないことは多くの方が知ることだと思う。そして「新結合」という概念で示されるように、既存の技術の組み合わせで革新的な製品だけでなく取り組み(ビジネスモデル)が生まれることがある。
つまり、学術的な発見を純粋にこれまで知られてこなかった現象の知覚としたときに、イノベーションはそれら発見を組み合わせてこれまでになかった価値を作り出す社会な現象の発見とみなすこともできる