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先端技術

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30年の企業経営の経験から、様々な”ニッチな先端技術”に注目し私見を記しています。
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記事一覧

タングステン

タングステンの放射線を遮る性能は鉛に匹敵する。中性子線を遮蔽する性能はホウ素に準じるという。3.11原発事故の際、上空から大量の海水を原子炉に投下する作戦に使われたヘリコプターの床には、乗員を放射線から守るためが床に敷かれた。 鉛は費用対効果が最大なのでよくガンマ線の遮蔽に使われるが、柔軟性に乏しく応用の難しさがネックである。そこで開発されたのがタングステン粉末にエラストマー樹脂を混合して折り曲げ

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土砂の全国地図

アメリカのTV番組で人気NO1のドラマに「NCIS」(海軍犯罪捜査局)というのがあって、面白いので毎日のように見ている。
分析官アビーというコスプレ女性が天才的な分析をして、一気に解決に持ってゆくストーリーの展開の速さが魅力である。
その中で被害者の服や靴についた僅かな土を、何州の何という地域の土だと断定するのが、不思議だった。
なぜ地名まで特定できるのかと。

 今回、日本で発表されたニュースで

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注射で骨を作る

注射で骨を作るという手法が生まれた。東京医科歯科大青木准教授らは、手術をせずに薬を口の中に注射してあごの骨を増やす方法を開発した。
実験動物はマウスだが、やがて兎とか犬のような大型動物に応用して、人間への可能性を探ってゆく。
京大再生医学研究所とアメリカのシーダーズ・サイナイ研究所との共同研究だが、切開して人工骨を埋め込んだり、体の他の部位から移植したりする手術をしなくても、注射で骨を作る可能性が

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レアアース使用半減磁石

レアアースの使用量を従来比1/2に減らしながら、ネオジウム磁石同等の性能を持つ磁石材を静岡理工科大小林久理教授GPが開発した。
200度C付近ではネオジウム磁石以上の高い磁気特性があるという。
サマリウム、ジルコニウム、鉄、コバルト、チタンを含む組成で、結晶構造を安定化することに成功した。
この用途はまず自動車のハイブリッドモーター向けが考えられる。
実用化はこれからだが、企業と連携して量産化技術

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鎖かたびら軍手

昨今は刃物による犯罪が急増している。

ナイフ、包丁、カッターナイフなどが主な凶器だが、被害者は素手で刃物に対抗することはできない。ここに「鎖かたびら」という保護下着がある。鎖を縫い込んだ肌着のようなもので、忍者が着ていたやつだ。この忍者シャツは刀を防ぐ。また槍も通さない。金属を加工する工場では、金属の角(エッジ)で手や指を切ることが多い。あっという間に何針も縫う怪我をしてしまう。そこで切れない軍

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外径寸法公差±0.01のガラス管

ガラス管というと、蛍光灯やスポイトなどを連想するが、電子機器や医療機器では随分使っているそうだ。その中でも精密ガラス管といって寸法公差が非常に小さい物があって「高精密ガラス管」といわれる。どのくらいの精密さかというと、外径寸法でコンマ以下が当然の世界。熱変形が大きいガラスは冷めて行く時に収縮するから、熱い時と冷えた時では相当な寸法変化がある。寸法だけでなく、反りや曲がり、肉厚のバラツキも出る。

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暗視

静岡大電子工学科の川人教授らは、平均ノイズレベル0.27と世界最高レベルの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーを開発した。暗い所で、ごく微量の光を検知できるという。性能は、星明り程度の1ミリルクスの照度でも、ノイズなく画像が見れるそうだ。1ミリルクスとはどれほどのものかというと、月夜の明るさの数百分の1で、自分の手さえ見えない深い闇である。

(ルクスとは、光源から発した光が、照射対

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レーザーで血栓を切除削除

スーパーカミオカンデで注目されている浜松ホトニクス社が、レーザーで血栓を溶かす技術を開発した。世界初である。光ファイバーが入ったカテーテルを患者の大腿部の血管から挿入、体内を経由して目的の血栓まで移動し、レーザー光を照射する。レーザー光は血栓だけを選択的に溶解できる波長532ナノメートル。短時間照射を断続的に繰り返して血栓を細かく切削する。この波長は血管壁には吸収されにくいので、血管を傷めるリスク

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鯖寿司を半年冷凍保存

鯖寿司を冷凍保存して、6ケ月鮮度を維持できる技術が生まれた。
高鮮度維持技術と氷再結晶化抑制液を使った製法を、鯖や株式会社が実用化した。装置はすでに設置済で2016年1月から出荷。一番問題になったのは、すし飯が白蝋化することで、従来は2日が限度だった。
 鯖のような傷みやすい魚を半年もたせるとは意外だが、大丈夫かなという心配がある。来年になったら一度チャレンジしてみたいものだ。それにしても、人類の

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弁柄

弁柄

弁柄の歴史は古い。弁柄とは古来から使われている赤色顔料のことである。

75000年前のアフリカの洞窟壁画や15000年前のアルタミラ(スペイン)でも弁柄の赤が用いられていた。磁硫鉄鉱石から得られる赤は魔除けの意味と、旺盛な生命力の象徴の意味があって古来尊重されてきた。
日本でもBC7000年ころからあり、飛鳥奈良のころには社寺を美しく彩った。近世岡山の銅鉱山で銅の採掘の時に、一緒に出てくる硫化鉄

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触覚を持った手術ロボ

東京工業大学精密工学研究所の只野耕太郎准教授、川嶋健嗣客員教授(東京医科歯科大学生体材料工学研究所・教授)らは、先端医療機器の開発・製造を行う「リバーフィールド株式会社」を設立した。
同社は、空気圧を用いて精密制御を実現する技術を基盤として研究開発した手術支援ロボットシステムなどを広く、早く市場に普及することを目指す。
具体的には、執刀医の頭部動作により直感的に内視鏡を操作できる内視鏡操作システム

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核燃料1800万度C加熱

産業創生大学院大学の北川教授と大阪大有川講師らは、超高強度レーザー「LFEX」を使って、高速点火方式で融合燃料を約1800万度C加熱に成功した。
この方式での核融合反応時に生じる中性子の発生量は、従来の2000万~3000
万個から5億個に増えた。
今回の実験は装置の性能の半分しか使っていないので、16年度中には5000万度Cに到達できると予想している。
5000万度は核融合燃料点火の目安で、いよ

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蓄光世界一

暗闇でも見える塗料は、時計の文字盤や計器盤等に使用されるほか、近年ではキーホルダー、アクセサリー、マニキュア等のファッションに使用される。
また、ニューヨークでの9・11テロ等において、避難経路を示すことの重要性が高まったことからも、電源や配線配管を必要としない「蓄光」が注目を集めている。
日本国内では、いち早く横浜市交通局が地下鉄のプラットホームやコンコ ースで蓄光式の避難誘導板を設置し、その後

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炭酸ガスだけを取り出す

北大電子科学研究所野呂真一郎准教授は、Mgなどの軽金属で多孔質結晶を作成することに成功。
MgやCaにビピリジンジオキシドという有機化合物を組み合わせて多孔質物質を合成した。
この物質の画期的な性能として、実験段階ではあるが、メタンと二酸化炭素の混合ガスを多孔質結晶に通すと、二酸化炭素を吸着してメタンだけが出てきた。CO2をほぼ100%吸着したことから、窒素と二酸化炭素の分離も可能と見ている。4-

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