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IT企業で人事の仕事をしながらパラレルでワークショップデザイナーをしている社会保険労務…

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IT企業で人事の仕事をしながらパラレルでワークショップデザイナーをしている社会保険労務士有資格者です。身体とコミュニケーションに関心のある哲学書読み。開催したワークショップの記録やキャリアや学習の理論と哲学のつながりについての考察を書いていきます。

マガジン

  • ワークショップログ

    主催したワークショップに関係する記事をまとめたマガジンです

  • キャリアと学びと哲学と

    2010年に社会保険労務士試験に合格して今は都内のIT企業で人事の仕事をしています。社会人の学習やキャリアに関心があって、オフの時間には自分でワークショップや学びの場を主催することを続けています。その関心の原点は、学生時代から哲学書が好きでよく読んでいたことです。キャリア開発や人材育成の研究には、哲学からきた言葉や考え方が用いられていることが少なくなく、哲学の知見の活かし方として非常に興味深いのです。キャリアに関心のある社労士という私の視点から、哲学のことをお話しできたらユニークなのではと思って、この記事を書いています。

最近の記事

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しゃかいかダイアログ 2020.2.23:ワークショップログ

社会課題で対話(ダイアログ)する だから しゃかいかダイアログ 社会課題に興味や関心がある 社会課題を学んでみたい 社会課題について人の話が聞きたい だけど よく知らないし どこに行けばよいかも分からない そんな方に参加してほしい対話型のワークショップです。 とはいえ、ひとことで「社会課題」といっても まちづくり・教育・環境・福祉・医療…… テーマは多様で幅も広いもの 多彩で広範な社会課題というジャンルを横断かつ越境して記事にしているウェブ・ジャーナルがあります

    • 私の履歴書:ワークショップログ

      私は成人の学習やキャリアに関心があって、それにかかわる仕事がしたいと思ってきました。社会保険労務士試験を受験したのも、その一環です。いま都内のIT企業で人事の仕事をしています。そして、オフの時間には自分でワークショップや学びの場を主催することを続けています。ここでは、どうして学習やキャリアに関わることをライフワークにするようになったのかを書いておきたいと思います。 いくつかの原点成人の学習やキャリアに興味関心をもつようになったのにはいくつかのスタート地点(原点)があります。

      • 「自分らしさ」について:キャリアと学びと哲学と

        使用価値と交換価値キャリアについて考えるとき、避けて通れないのが「自分らしさ」という言葉ではないでしょうか。生まれたからには自分らしいキャリアを築きたいですし、自分らしさにマッチしないキャリアは続けていても苦痛でしょう。多くの人が「自分らしさ」を大事にしたいと考え、迷い、悩んでいます。 一言では片づけられない「自分らしさ」という、この言葉のことを今回は考えてみたいと思います。 「自分らしさ」とは、言い換えてみれば、個性、唯一さ、かけがえのなさ、すなわち、他の誰かと入れ

        • 傷とレジリエンス~エマニュエル・レヴィナス:キャリアと学びと哲学と

          理解とは暴力である今日お話ししていくのは、エマニュエル・レヴィナスです。1906年にロシア帝国領だったリトアニアに生まれたユダヤ人で、その後フランスに帰化をしたレヴィナスは、学生時代にドイツでフッサールやハイデガーから直接教えを受けており、フランスに現象学を紹介した最初期の第一人者としても知られています。 フランス兵として第二次世界大戦を戦ったレヴィナスは、戦場でドイツ軍に捉えられ、捕虜として終戦を迎えました。フランス人として扱われたため、レヴィナス自身はホロコーストを

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        しゃかいかダイアログ 2020.2.23:ワークショップログ

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          5本
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        記事

          星座と物語~ヴァルター・ベンヤミン:キャリアと学びと哲学と

          星座の光ヴァルター・ベンヤミンという人についてお話したいと思います。ベンヤミンは1892年にドイツに生まれました。生家は非常に裕福なユダヤ人の商家で、暮らしは何ひとつ不自由なく、幼いころから音楽や芸術についての高度な教育を受け、文化的な素養にもたいへん恵まれていた人でした。しかし、ユダヤ人ということもあり、ナチスの台頭によって祖国を追われることになります。アメリカへと逃げようとする道中で追い詰められ、1940年に自ら服毒してその生涯を終えました。 ベンヤミンの残した著作

          星座と物語~ヴァルター・ベンヤミン:キャリアと学びと哲学と

          人生のエクリチュール~ジャック・デリダ:キャリアと学びと哲学と

          パロールとエクリチュールジャック・デリダについて話していきたいと思います。ジャック・デリダは1930年にアルジェリアに生まれたユダヤ系のフランス人です。デリダといえば、 20世紀の終わりから21世紀初頭にかけて現代思想といえばデリダと言われるぐらい思想界隈ではスーパースターだった人です。彼の生み出した「差延」「散種」「代補」そして「脱構築」(デコンストラクション)といった数々の言葉はたいへんな流行となり、当時は数多くの書籍のタイトルで使われていたものです。 今回はデリダ

          人生のエクリチュール~ジャック・デリダ:キャリアと学びと哲学と

          権力の生み出す主体性~ミシェル・フーコー:キャリアと学びと哲学と

          ポジティブな権力今日のテーマはフランスの哲学者ミシェル・フーコーです。1926年に生まれたフーコーは、ゲイであることを公に認めた後、エイズを発症し、1984年に54歳という若さで亡くなるという人生を送りました。その時代を象徴した生き方と相まって、20世紀後半の哲学世界で最大のビッグネームと言える人です。 ゲイというマイノリティを生きたフーコーの哲学テーマは、精神医学、狂気、監獄、性と、それまでも哲学的伝統からすれば非常にマージナルな領域を攻めたものでしたが、それゆえに既

          権力の生み出す主体性~ミシェル・フーコー:キャリアと学びと哲学と

          欲望するキャリア~ジャック・ラカン:キャリアと学びと哲学と

          何を望むのか?今回はジャック・ラカンです。1901年に生まれて1981年に亡くなった戦後フランスの精神分析の大家です。ラカンのテキストは難解至極。読むのに非常に苦労をするということで有名ではあるのですが、学習やキャリアということについて考えるとき、そのもっとも本質的なところを突いてくるのがラカンだと私は考えています。 というのも、精神分析が扱うのは人の欲望です。学習もキャリアも人の欲望が動かすものに間違いありません。「学びたい」とか「成長したい」とか、あるいは「幸せにな

          欲望するキャリア~ジャック・ラカン:キャリアと学びと哲学と

          学びは習慣を解体する~ジル・ドゥルーズ:キャリアと学びと哲学と

          差異と習慣今回お話しするのはジル・ドゥルーズです。ドゥルーズといえばフェリックス・ガタリとのコンビで「アンチ・オイディプス」や「千のプラトー」を世に出し、ジャック・デリダと並ぶ現代思想の双璧として、私の世代の現代思想の読者にとっては非常に知られた存在です。 一般的には「ノマド」という言葉を流行らせた人かもしれません。ドゥルーズの思想は「ノマドロジー」などと呼ばれ「ノマド」(遊牧民族)のあり方にある種の理想を重ねたものでした。 「ノマド」的なあり方を評価するドゥルーズの

          学びは習慣を解体する~ジル・ドゥルーズ:キャリアと学びと哲学と

          永遠回帰と肯定の哲学~フリードリヒ・ニーチェその3:キャリアと学びと哲学と

          永遠回帰ニーチェの哲学にはゴールはありません。たどり着けば終わりにできる最終地点はありません。言い方をかえれば、何度でもスタートを繰り返さないといけない哲学です。人生にあっては、何度でも自分の不完全さと向き合って、完全にはなれない自分を受け入れていくことが、大事なことになります。 ニーチェの哲学に「永遠回帰」という言葉があります。同じものが何度も何度も帰ってくるという意味で、理解の難しい言葉でもあるのですが、終わりを認めないニーチェの姿勢から理解ができます。 ニーチェ

          永遠回帰と肯定の哲学~フリードリヒ・ニーチェその3:キャリアと学びと哲学と

          超人とニヒリズム~フリードリヒ・ニーチェその2:キャリアと学びと哲学と

          超人と神他人に依存することなく自分の人生の責任を自分で引き受けて生きること、それこそニーチェが求める強さです。そして、その強さをもった存在をニーチェは「超人」と呼びます。「超人」とは、それこそ人間を超克した存在ですから、もっと特別なことかと思われるかもしれませんが、自分の人生の責任を自分で引き受けるというのは、思いのほか当たり前のことのようにも思えます。 それが、ニーチェが生きた時代には当たり前ではありませんでした。だからこそ、ニーチェは「神は死んだ」と主張する必要もあ

          超人とニヒリズム~フリードリヒ・ニーチェその2:キャリアと学びと哲学と

          中二病の王から健康の伝道者へ~フリードリヒ・ニーチェその1:キャリアと学びと哲学と

          中二病の王?今回お話ししていきたいのはフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェです。 ニーチェは1900年ちょうどに亡くなったドイツの哲学者です。非常に有名な哲学者で、彼の名前を聞いたことがあるという人は少なくないでしょう。「深淵を覗きこむとき、お前もまた深遠に覗きこまれているのだ」という一文はもはやSNSに定着したネットミームです。その他にもニーチェの残した言葉と言えば、「超人」「永遠回帰」「力への意志」、そして「神は死んだ」とキャッチーでパワーのあるフレーズが並びます。

          中二病の王から健康の伝道者へ~フリードリヒ・ニーチェその1:キャリアと学びと哲学と

          現象学の現在地点~エトムント・フッサールその4:キャリアと学びと哲学と

          現象学の現在フッサールと現象学についてお話をしてきました。フッサールの始めた現象学が現代社会において、どのような広がりをもつようになったのか、そして、現在では新たな困難に直面もしているのではないかというお話をしていきたいと思います。 フッサールの始めた現象学は、客観的で数値化された量から主観的で数量化できない質へとエビデンスのあり方を転換させるものでした。エビデンスは客観的で数値化できるものだけに限るものではなく、「いまここ」で私が経験している主観的なリアルもまた同様に

          現象学の現在地点~エトムント・フッサールその4:キャリアと学びと哲学と

          現象学の二つの困難~エトムント・フッサールその3:キャリアと学びと哲学と

          ひとつめの困難 身体フッサールの現象学は、世界の中心を私の意識に見出したというお話をしてきました。やっと見つけた世界の支え、疑いようのない確かなものだったわけですが、しかし、そこにたどり着いてふと周囲を見渡してみると、当初思いも至らなかった難問がそこにあったという事件が起こります。 フッサールの哲学的な大冒険は、実はここから始まっていくのではないかと私は思うのです。この難問には二つあると考えています。ひとつは身体、もうひとつは他者です。 超越論的主観性は世界を構成する

          現象学の二つの困難~エトムント・フッサールその3:キャリアと学びと哲学と

          超越論的主観性は世界を意味づける~エトムント・フッサールその2:キャリアと学びと哲学と

          意識は常に何ものかに対しての意識フッサールと現象学についてお話をしています。そこでは、客観性から主観性という大転換こそフッサールが現象学で目論んだことだったということをお話ししましたが、この論点をもうすこし掘り下げてみたいと思います。 「いまここ」の生々しい経験、主観的な経験にこそ揺るぎない確かさを置く現象学ですが、では、そもそも、その主観的な経験はどうして成り立つのかという問いへとフッサールは議論を進めていきます。フッサールにすれば、それは「意識」があるからです。「い

          超越論的主観性は世界を意味づける~エトムント・フッサールその2:キャリアと学びと哲学と

          キャリアと現象学~エトムント・フッサールその1:キャリアと学びと哲学と

          エトムント・フッサール今回はエトムント・フッサールという哲学者と彼の始めた「現象学」という哲学の一つの領域についてお話をしたいと思います。 現象とは、すなわち、現れてくるもの。目に見えたり、耳に聞こえたり、五感で感じられるもののことです。英語では「フェノメノン」(phenomenon)なので、「フェノメノロジー」(phenomenology)と呼ばれます。 この現象学、学習や人材育成、キャリアといったワードに興味のある方には、どこかで聞いたことがある言葉かもしれません

          キャリアと現象学~エトムント・フッサールその1:キャリアと学びと哲学と