野本遼平 / Venture Capital

Globis Capital Partners←KDDI傘下Supershipホールデ…

野本遼平 / Venture Capital

Globis Capital Partners←KDDI傘下Supershipホールディングス経営戦略室長&子会社役員←弁護士/著書に「成功するアライアンス 戦略と実務」など https://www.amazon.co.jp/dp/453405761X/

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記事一覧

第6回 PDCAのシステム・ダイナミクス

前回の記事では、スピード勝負な側面の大きいスタートアップは、認識(観測)→判断/意思決定→行動/実行の遅れを可能な限り減らすことが重要であることを確認しました。今…

第5回 経営会議のシステム・ダイナミクス

経営会議の存在意義スタートアップに限らず、経営においては迅速かつ柔軟な意思決定が求められ、その中で、経営会議は非常に重要な位置付けにあります。スタートアップにと…

細分化されゆくナラティブ - 企業経営は”都市型”システムへ?

はじめに本記事は、ANRIの中路さんが執筆した「ナラティブだけが人を動かす スタートアップはなぜナラティブを紡ぐのか」を読み、いろいろインスピレーションがわいてきた…

第4回 停滞と再成長のシステム・ダイナミクス

スタートアップに訪れる「停滞」創業から何の滞りもなく「強化型フィードバックループ」を回転させて指数関数的な成長を遂げるスタートアップは珍しく、多かれ少なかれ、ど…

第3回 グロースのシステム・ダイナミクス②

「強化型フィードバックループ」10選(後編)以下では、スタートアップに指数関数的成長をもたらし、最初の小さな差を増幅させる「強化型フィードバックループ」ご紹介しま…

第2回 グロースのシステム・ダイナミクス①

前回は、スタートアップ・システム・ダイナミクスの意義や位置付けについて説明させていただきました。今回から具体的な本題に入っていきます。 スタートアップに求められ…

第1回 スタートアップ・システム・ダイナミクスとは

「スタートアップ・システム・ダイナミクス」の提案システム・ダイナミクスという言葉自体は知らなくても、「Amazonのループ図」は知っているという方は多いのではないで…

ディープテック・スタートアップのマイルストーン設計 〜ディープテックの「シリーズA」とは? 〜

1.「スタートアップ」のシリーズAとは?ディープテックやテクノロジー系のスタートアップの話をする前に、まずは一般論からスタートさせてください。 「スタートアップ…

ブレイン・コンピュータ・インターフェースの可能性とスタートアップの参入機会

はじめにニューロテクノロジー(主に、ブレイン・コンピュータ・インターフェース=以下”BCI”)は、アメリカや中国においては投資が急激に加速している技術分野であり、A…

情報伝達のイノベーションの歴史 - 次の情報革命は何か?

はじめに人類は、知識(情報)を蓄積し、共有し、活用することで進化してきました。この情報伝達のプロセスが、私たちの文明の発展やテクノロジーの進歩において重要な役割…

人間拡張の視点から見る技術革新 - バズワードと真のイノベーションの区別

はじめにLLMが盛り上がりを見せる中で、「今回はバズワードじゃないのか?本物なのか?」という会話をよく耳にします。バズワードと本物のイノベーションは、事後的にしか…

プログラミングに対するLLMの影響から考える、テクノロジーによる人間の役割変化

はじめにLLMの台頭により「ついにプログラミングまでもがAIにより代替されてしまう」という、ほぼ確定した未来に対するある種の悲観的な反応もみられるようになりました。…

大規模言語モデルで進化するロボティクス

はじめに筆者は、人間が「暇」を取り戻すために、自律型ロボットはじめとするAIサーバントの社会普及を心待ちにしています(詳しくは、こちらの記事に)。しかし、自律型ロ…

テクノロジーの発展のこれまでとこれから(後編:AIサーバントの出現)

サマリー長期的には人口が頭打ちになる可能性が高い状況下においては、いわゆる「生産」を限りなく自律制御的なシステムのもとで行い、タスクから解放された人間のリソース…

テクノロジーの発展のこれまでとこれから(前編)

サマリーテクノロジーは、より少ないインプットで多くのアウトプットを生み出すという存在である。「働く人間」を主人公として見る場合、テクノロジーは人間による制御のレ…

竹田青嗣「ニーチェ入門」(ちくま新書)読書会レジュメ(“ニーチェ”のスタートアップ的解釈)

1.はじめのニーチェ当時の思想家たちには、「この世(人生)は矛盾・苦しみにあふれている」という考え方が大前提にある。これは現代においても、おそらく同じ。 それを…

第6回 PDCAのシステム・ダイナミクス

第6回 PDCAのシステム・ダイナミクス

前回の記事では、スピード勝負な側面の大きいスタートアップは、認識(観測)→判断/意思決定→行動/実行の遅れを可能な限り減らすことが重要であることを確認しました。今回は「行動/実行」に関連して、PDCAに向き合うときの考え方について整理したいと思います。

スタートアップのPDCAプロダクト開発、セールス、オンボーディング、コーポレート、ファイナンスなど様々な領域において、スタートアップは基本的には

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第5回 経営会議のシステム・ダイナミクス

第5回 経営会議のシステム・ダイナミクス

経営会議の存在意義スタートアップに限らず、経営においては迅速かつ柔軟な意思決定が求められ、その中で、経営会議は非常に重要な位置付けにあります。スタートアップにとっての経営会議の存在意義としては、次の3つの観点があります。

(1) 問い=アジェンダを立てる

すべての企業にいえることですが、特にスタートアップは未知への挑戦をする事業体であるため、日々の業務の中でさまざまな問題に直面します。これらの

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細分化されゆくナラティブ - 企業経営は”都市型”システムへ?

細分化されゆくナラティブ - 企業経営は”都市型”システムへ?

はじめに本記事は、ANRIの中路さんが執筆した「ナラティブだけが人を動かす スタートアップはなぜナラティブを紡ぐのか」を読み、いろいろインスピレーションがわいてきたので急いで書き下した(のに公開ボタンを押し忘れてそのまま半年ほど下書きに放置されていた)記事となります。

上記の記事でも指摘されているとおり、「一元的な解や真理があるとする”大きな物語”は終焉し、それぞれが自由に解釈し物語る”小さな物

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第4回 停滞と再成長のシステム・ダイナミクス

第4回 停滞と再成長のシステム・ダイナミクス

スタートアップに訪れる「停滞」創業から何の滞りもなく「強化型フィードバックループ」を回転させて指数関数的な成長を遂げるスタートアップは珍しく、多かれ少なかれ、どこかで打ち手を間違えることで停滞に直面し、それをうまく克服して成長していく企業が大多数なのではないでしょうか。

第4回では、停滞を生み出してしまうメカニズムと、それを予防・克服する手段はあるのかについて考えて行きたいと思います。

グロー

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第3回 グロースのシステム・ダイナミクス②

第3回 グロースのシステム・ダイナミクス②

「強化型フィードバックループ」10選(後編)以下では、スタートアップに指数関数的成長をもたらし、最初の小さな差を増幅させる「強化型フィードバックループ」ご紹介します。本稿は前回の続きの後編として、残りの5個をご紹介します。

6) ソリューション開発への再投資

スタートアップが初期の収益をソリューションや製品の開発に再投資することで、製品の品質や機能を向上させることができます。具体的には、「製品

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第2回 グロースのシステム・ダイナミクス①

第2回 グロースのシステム・ダイナミクス①

前回は、スタートアップ・システム・ダイナミクスの意義や位置付けについて説明させていただきました。今回から具体的な本題に入っていきます。

スタートアップに求められる「指数関数的成長」スタートアップは、一般的なビジネスとは異なり、短期間での指数関数的・加速度的な成長を目指す宿命を負っています。このような成長を実現するためには、強化型フィードバックループが必要です。

強化型フィードバックループとは、

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第1回 スタートアップ・システム・ダイナミクスとは

第1回 スタートアップ・システム・ダイナミクスとは


「スタートアップ・システム・ダイナミクス」の提案システム・ダイナミクスという言葉自体は知らなくても、「Amazonのループ図」は知っているという方は多いのではないでしょうか。ループ図を用いて事業成長の構造を設計するのは、システム・ダイナミクスのアプローチそのものです。

「スタートアップ・システム・ダイナミクス」というのは私の造語ですが、本稿は要するに、「スタートアップ経営に、システム・ダイナミ

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ディープテック・スタートアップのマイルストーン設計 〜ディープテックの「シリーズA」とは? 〜

ディープテック・スタートアップのマイルストーン設計 〜ディープテックの「シリーズA」とは? 〜

1.「スタートアップ」のシリーズAとは?ディープテックやテクノロジー系のスタートアップの話をする前に、まずは一般論からスタートさせてください。

「スタートアップ用語集」なるものがあるとしたら(どこかにあるかもしれません)、「シード」「シリーズA」「PMF」などの用語は“基礎編”の中に登場するでしょう(その割に、人によってその意味するところが異なるのが悩ましいところなのですが)。

「シード」「シ

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ブレイン・コンピュータ・インターフェースの可能性とスタートアップの参入機会

ブレイン・コンピュータ・インターフェースの可能性とスタートアップの参入機会

はじめにニューロテクノロジー(主に、ブレイン・コンピュータ・インターフェース=以下”BCI”)は、アメリカや中国においては投資が急激に加速している技術分野であり、AIやロボティクスの次の人間拡張・パラダイムシフト・社会変革を起こすテクノロジーになる可能性があると考えています。

筆者もまだまだ研究中の分野ではありますが、本稿では、BCIが未来において果たし得る役割、その技術的な課題、スタートアップ

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情報伝達のイノベーションの歴史 - 次の情報革命は何か?

情報伝達のイノベーションの歴史 - 次の情報革命は何か?

はじめに人類は、知識(情報)を蓄積し、共有し、活用することで進化してきました。この情報伝達のプロセスが、私たちの文明の発展やテクノロジーの進歩において重要な役割を果たしてきたことは周知のとおりです。古代の人々は、農業に関する知識を蓄積し、共有することで、より効率的な農法を生み出し、食糧生産を増大させてきました。教育制度も、知識を効果的に蓄積し、共有し、活用するためのインフラです。

情報流通の3ス

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人間拡張の視点から見る技術革新 - バズワードと真のイノベーションの区別

人間拡張の視点から見る技術革新 - バズワードと真のイノベーションの区別

はじめにLLMが盛り上がりを見せる中で、「今回はバズワードじゃないのか?本物なのか?」という会話をよく耳にします。バズワードと本物のイノベーションは、事後的にしか判定できない(勝てば官軍的な)ものなのでしょうか?

ところで、1800年代から提唱されてる概念に、Human Augmentation(人間拡張)というものがあります。Human Augmentationの考え方は、非常に雑に紹介すると

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プログラミングに対するLLMの影響から考える、テクノロジーによる人間の役割変化

プログラミングに対するLLMの影響から考える、テクノロジーによる人間の役割変化

はじめにLLMの台頭により「ついにプログラミングまでもがAIにより代替されてしまう」という、ほぼ確定した未来に対するある種の悲観的な反応もみられるようになりました。昨今のLLMに限った話ではなく、産業革命や情報革命など、技術の画期的な進歩がみられる度に人間は似たような反応をしてきました。

しかし、プログラミングの歴史やその進化のベクトルを振り返ると、自然言語によるプログラミングに到達するのはもと

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大規模言語モデルで進化するロボティクス

大規模言語モデルで進化するロボティクス

はじめに筆者は、人間が「暇」を取り戻すために、自律型ロボットはじめとするAIサーバントの社会普及を心待ちにしています(詳しくは、こちらの記事に)。しかし、自律型ロボット(ティーチングではなく、AIにより自律的に稼働するロボットを指します)の開発における難題のひとつに、「フレーム問題」があります。

フレーム問題とは、Wikipediaを引用すると、「人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処

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テクノロジーの発展のこれまでとこれから(後編:AIサーバントの出現)

テクノロジーの発展のこれまでとこれから(後編:AIサーバントの出現)

サマリー長期的には人口が頭打ちになる可能性が高い状況下においては、いわゆる「生産」を限りなく自律制御的なシステムのもとで行い、タスクから解放された人間のリソースをいわゆる「消費」に寄せる分業体制を構築しないかぎり、資本主義は維持できない可能性が高い。

生産プロセスにおける知覚的・運動的タスクを自律制御にて処理し、人間を制御ループから解放するというコンセプトのソリューション群(Bots, Gene

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テクノロジーの発展のこれまでとこれから(前編)

テクノロジーの発展のこれまでとこれから(前編)

サマリーテクノロジーは、より少ないインプットで多くのアウトプットを生み出すという存在である。「働く人間」を主人公として見る場合、テクノロジーは人間による制御のレベルを低減させる=「人間が、よりサボれるよう」に進化してきたものであり、今後も同様のベクトルで進化することが想定される。

人的制御のレベルは、①新しいメカニズムの普及と、②当該メカニズムにおける強度向上の二つのドライバーを通じて低減する。

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竹田青嗣「ニーチェ入門」(ちくま新書)読書会レジュメ(“ニーチェ”のスタートアップ的解釈)

竹田青嗣「ニーチェ入門」(ちくま新書)読書会レジュメ(“ニーチェ”のスタートアップ的解釈)

1.はじめのニーチェ当時の思想家たちには、「この世(人生)は矛盾・苦しみにあふれている」という考え方が大前提にある。これは現代においても、おそらく同じ。

それを前提としたうえで、ショーペンハウアーのようにペシミスティックに考えるのではなく、人間の欲望や自我を肯定する「ディオニュソス的」な考え方をするのがニーチェ先生。

ニーチェは、仏教的なアプローチで「この世の矛盾」から生まれる苦しみを克服する

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