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アリ、時々キリギリス 雨の街編

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -あとがき-

こちらから全編お読みいただけます。

 今回この文章を認めるにあたって、どういった入りから始めたものかと悩んだが、結果的にこんな入りになってしまった。ちなみに「認める」と書いて、「したためる」と読むよ。
まあそんなことはさておいて、僕という人間は、なんだかんだいってこういう口語チックな中途半端な入りが好きらしい。今思い返してみると、高校の卒業文集もこんな入りだったような記憶がある。
まあ脱線はこれ

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 −壱−

 街に近づいてくるにつれて、先程まで晴れ渡っていたはずの空が、みるみると曇り出してきた。
「ありゃあ雨雲じゃないか。」
 テトは空を指さしながらそう言った。
「本当だ。さっきまでは一面青空だったのに。」
 カクリが振り返ってみると、後ろにはまだ真っ青な空が広がっていた。
「心なしか、雨の日の匂いもしてこないか?」
 テトはそう言いながら大袈裟に鼻をひくつかせた。
「てことは、もう近いのかな。」

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 −弐−

前回まで。

 先の大戦で人間側、亜人側ともに多大な犠牲を出して以降、両者の間には不可侵条約が結ばれていた。
 人間たちは相変わらず亜人たちのことを劣人(オト)と呼び、また亜人たちも魔力を有する人間たちのことを魔人と呼んで恐れていたが、大きな争いに発展することは、条約が締結されて以降はほとんどなかった。

 それ以降、両者は不要な争いを避けるため、基本的には限られた場所に住み、限られた仕事をするよ

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 −参−

前回まで。

 あのセッションがまるで夢だったかのように、それからまた数日は変わり映えのない日々が続いていた。
そんなある日のこと、いつものように仕事を終えたカクリは、テトと合流して飲むことになっていた。
「どこの店で飲もうか。」
「この前演奏した店もいいが、あれ以来、あの店じゃあ注目されちまってどうにも行きづらいんだよな。」
「さすが、プロの音楽家は違うね。」
 カクリは皮肉たっぷりにそういった

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -肆-

前回まで。

 それからどれくらいの日にちが経っただろうか。ある日、カクリがいつものように仕事を終えて帰ろうとすると、後ろから声をかけられたのだった。
「どうも。」
 カクリが振り向いた先にいたのは、ハノではなく、ミトミだった。
「ミトミさん。この前はご馳走様でした。とても楽しかったです。」
「ああ、こちらこそ。うちのハノが急に声をかけてしまったようで、すみませんでした。」
「いえいえ、むしろあり

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -伍-

前回まで。

 集合場所の街の入り口に向かうと、そこにはすでに何人かの亜人がいた。
「ここでいいんだよな。」
「多分ね。」
 カクリは辺りを見回す。
「他にも何人かいるって言ってたから、多分みんなそうなんだよ。」
「なるほどな。色んなやつがいるもんだ。」
「そうだね。後で自己紹介しないと。」
「随分丁寧なこった。どんな奴らかわかったもんじゃないぞ。」
「僕たちだってフリーパスなんだよ。周りだって僕

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -陸-

前回まで。

 農家の朝は早いという話を聞くが、次の日、皆が食卓を囲んだのは、日が出てすぐのことだった。
「テト、おはよう。」
 カクリは眠い目をこすりながらテトに声をかけた。
「ん……」
 普段これほどまでに早起きをすることなどないテトは、昨夜の長時間の移動と、夕食後の演奏もあったのだろう、ほとんど声にならない声で反応した。
「皆様、おはようございます。朝食が終わりましたら、本日から作業のほど、

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -漆-

前回まで。

 カクリとテトの二人にとっては想定外の事態となったが、これも旅の醍醐味だと割り切ることにした。
 夕食を食べ終わってから寝るまでのこの時間が、数少ない息抜きの時間であった。といっても知っての通り、辺りは一面田んぼ。これと言った娯楽もないため、部屋に戻って寝るか、ともにこの仕事に従事している者たちと語らうかくらいしかやることがなかった。
 初日の夜の様に、宴でも開かれればいいものだが、

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -捌-

前回まで。

 次の日ももちろん、太陽が顔を出すころには皆布団から出なければならなかった。
 昨日の宴が遅くまで盛り上がったこともあり、朝食を食べる手はあまり進まず、せっかく昨晩は一緒になって盛り上がったというのに、顔を見合わせても挨拶を交わすことすらほとんどなかった。
 今日はいつもと違って、宿の前ではなく裏手にある倉庫での集合だったため、各々準備を済ませると、眠い目をこすりながら倉庫へと向かっ

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -玖-

前回まで。

 大雨が降りしきる中、三人が倉庫にたどり着くと、中は大変なことになっていた。
 つい昼前に作業を終えた時には、出荷に向けての準備まで終わっていた米の袋が破れ、中身が散乱し、またここ数日間使っていた機材もなぎ倒されていた。
 そしてその付近では、ノロンがうつぶせで倒れ、その上ではバッド・ジョーが全力で押さえつけている。
 あまりの悲惨な状況と、想像を貼るい兄超える状況に身動き一つとれな

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アリ、時々キリギリス 雨の街編 -拾-

前回まで。

 二人が食卓に向かうと、既に食事の用意は終わっており、グルメとシガも席についていた。
「おはようございます。」
「ああ、カクリくん、テトくん。おはよう。」
 グルメは少し寂しそうに笑いながら答えた。
「どうも。」
 そう言うと二人も席に着いたが、それ以上何も会話は生まれなかった。
「皆様、おはようございます。」
 声のする方を見ると、扉のところに優しい表情を浮かべたホトリとユリネが立

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