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最後のピース

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人生リセットした25歳女性と年上弁護士ソクジンの恋、全24話(2022.4〜連載)。 家具屋ナムジュンのスピンオフ(全8話)も収録
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最後のピース 1

最後のピース 1

夜10時。LINEの通知を知らせる音。

〈今セブン。家いるよね?〉

付き合って約半年の彼はいつも唐突に我が家へやってくる。前回会ったのは…もう2週間前だったろうか。付き合うってこんなもの?なんて、いつも思う。大人の恋愛はこのくらいがちょうどいい、なんて誰かが言ってたけど、私たちは初めからずっと燃えそうで燃えないし、付き合ってるけど会わなくても平気だし、でもインスタの中ではしっかりと恋人同士な表

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最後のピース 2

最後のピース 2

会社を辞めた私は大学の研究室で秘書として働き始めた。教授も秘書も年上ばかりだから同世代の友達は見つけられないが人間関係の余計なストレスがない。定時で仕事を終えられることも多い。私はこの新しい生活に満足している。

研究室を出る頃空はまだ夕暮れだった。自転車に跨った瞬間に仕事モードがオフになる。この切替えが心地良い。いつの間にか空の藍色は静かに濃くなって、木造の家の小さな窓から光が漏れている。ぷーん

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最後のピース 3

最後のピース 3

雨は止む気配がなく、結局バスでコンビニまで行き、そこで傘を買って職場に戻った。

面倒見のいい同僚がくれたタオルで濡れた体を拭いている間も、ずっと、さっきバス停で会った男性のことばかり考えてしまう。目が合ったあの瞬間の彼の顔が頭から離れない。そして、思い出す度にドキドキする。

こんなこと、初めてだ。

あの人はあの後すぐにタクシーを呼びどこかへ去ってしまった。一体どんな仕事をしている人なのだろう

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最後のピース 4

最後のピース 4

カーテンを開き、窓を開ける。まだ冷たい空気とスズメの可愛い鳴き声が爽やかな一日の始まりを告げる。私は空に向かって大きく深呼吸した。

普段起きる時間より1時間も早い。なにしろ、今日はキム弁護士が来る日なのだ。私は何故だか心が浮き立っている。「別になんてことはない」と自分に言い聞かせながらも、シートパックをして、いつもよりずっと丁寧に化粧をした。

キム弁護士の講義は18時からだが、今日は初日なので

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最後のピース 5

最後のピース 5

キム弁護士の講義が終わるまで、研究室で一人、時間を潰した。今日に限って特に残った仕事もなく、私は彼の授業のシラバスと資料を眺め、判例を読み始めたあたりで今朝の早起きが祟り強烈な眠気に襲われた。何度もコクンコクンとなるので「まだあと20分もあるし」と机に伏せて少しだけ、仮眠した。

トントン、と肩を叩かれて目を覚ました。はっ!と身体を起こすとコーヒー片手に私を見ている彼がいる。

「すみません!私っ

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最後のピース 6

最後のピース 6

土曜日の大手町は、静かだ。平日ならばスーツ姿の人々が多く行き交う綺麗な街並みに人が少ないというだけで、そこに来た私という部外者はまるで街を貸切したような気分になる。

決して近くはないこの街に、本1冊貰うためだけにやってきた。あんなに憧れの存在だったキム弁護士だが、この数日の怒涛の仕事LINEのせいで私は少し、怯えている。

法律事務所は大きなビルの20階にあった。土曜日だというのに受付には綺麗な

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最後のピース 7

最後のピース 7

パレスホテルのラウンジを一緒に、並んで出た。なんだかドキドキする。

「これからどこか行くの?」
「はい、折角ここまで来たから…」
「買い物?」
「いえ、ちょっと、皇居に…」
「皇居!」
「はい、すぐそこだし。皇居、いいんですよ」

彼が「はーっ」と声を出した。見上げると彼は遠くを見て、笑っている。

「先生も行ったりしますか?」
「いや?一度もないけど?」
「え…こんな近いのに…あぁ、でも時間な

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最後のピース 8

最後のピース 8

火曜日。キム弁護士に会える日だ。

授業の30分前から熱心な生徒が4人、研究室前に集まっている。うち3人は女子だ。10分前にやってきた彼に生徒たちが群がった。その様子を見て、山田さんが私に目配せした。〈やっぱりね〉〈予想通りだね〉の表情で。

講義終了後もこの4人は彼と研究室へやってきた。

会議室で学生たちは彼に質問を浴びせている。彼より先に帰るわけにいかない私はデスクでPC作業をしながら聞き耳

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最後のピース 9

最後のピース 9

憧れの彼は、密室で甘い言葉をかけ、二度キスをし、優しく髪を撫で、耳元でおやすみと囁いた。あれからもう一日半。LINEも電話も何もない。あれは一体何だったんだろう。私はあの唇の感触を思い出すだけで身体が火照り心臓が跳ね眠れなくなってしまうのに、彼にとってはなんでもないことだったのだろうか。

「モテるに決まってるだろう」

彼の声が何度も脳内でリピートされる。慣れっこなの?遊び人なの?試しにキスして

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最後のピース 10

最後のピース 10

ピンポーン。

深夜0時近くの呼び出し音で全身に鳥肌が立つ。

ドアにチェーンをかけ、恐る恐るドアを開けるとその隙間にキム弁護士が見えた。

「先生?」
「やー、なんで返事しない」
「返事?あっ…」

夕方ごろにスマホの電源を切ってそのままだったことをやっと思い出した。

「すみません、電源ずっと切ってて」
「…このチェーンは、なに?」
「あ、ごめんなさい」

一度ドアを閉め、チェーンを外し、また

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最後のピース 11

最後のピース 11

「今夜は僕が見守るので、ご心配なく」

彼が隣人に告げたその言葉のせいで私の思考は停止した。

「あの…先生?」
「ん?」
「今日、ここに、泊まるんですか?」
「おう」
「…」
「襲ったりしないから安心しろ」
「いや、あの…」
「わたげはベッドで寝て。俺は床で寝る」

そう言って彼はジャケットを脱ぎ、すでに緩んでいたネクタイを解くと第2ボタンまで開け、袖を肘のところまで捲り、クッションを枕代わりに

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最後のピース 12

最後のピース 12

隣のドアが開く音がしたので、私も部屋を出た。隣人はおっ、と驚いたような顔をした後えくぼを凹ませた。

「行こっか」

私たちは前後に並んで階段を降り、人一人分くらいの距離を空けてバスを待った。

バスは空いていた。彼は1番後ろまで行き、私を窓側に座らせた。混んでいないのだからゆったりと広く座ればいいのに、彼は後部座席の一人が座るべき場所にちゃんと、座った。大きな身体をした彼がすぐ隣にいて、バスが揺

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最後のピース 13

最後のピース 13

土曜の朝だというのに6時前に目が覚めた。昨夜は眠りも浅く夜中に何度も目が覚めたというのに。

まだ少しだけ冷えた空気が残る晴れた朝。隣人とのデートの余韻が残る身体をなんとか清めたくて私は朝早くから散歩に出かけた。まだ脳が生温い感覚がある。そりゃあそうだ。夜じゅう、いや、夢の中でさえも、私は隣人とキム弁護士のキスのことばかり考えていた。正直に告白すれば、キム弁護士とはキスの次まで妄想した。まるで発情

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最後のピース 14

最後のピース 14

車は湘南方面に向かっている。

車中ではラジオがかかっていた。二人が無言になるとDJの耳心地のいい声だけが密室に響き、そうすると今度はその沈黙をかき消すように彼が必要以上に大きな声で同意したりツッコミを入れた。

『今韓国ではエゴマの葉論争っていうのがあるらしいんですね。自分と、自分の彼氏または彼女、そして友達の3人で食事中に…』

彼はそれを聞きながら「やー!エゴマの葉を剥がしてあげるくらいなん

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