だんだん

全部、作り話です。

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  • わりと読める5つ 16.1-3

    2016年1月~3月に投稿した中で、わりと読める5つだけまとめました。

記事一覧

効率的なケーキの切り分け方

とてつもなく大きなケーキが1ホール、28種の動物たちに囲まれている。 28個に切り分けられたケーキは、大きさがバラバラだ。いちごが乗っているものもあればそうでな…

だんだん
8年前
1

感染症が治らない

「ウイルスPの感染者は、現在20カ国で確認されています。」 数ヶ月前から全世界的に報道が続いている。 ウイルスPによる感染症は、下痢・嘔吐・食欲不振、それに発熱を…

だんだん
8年前
2

ごめんなさいをする理由

「じいちゃんはさ、裏のおじいさんと仲が悪いじゃん?」 「ああ、田中の爺さんのことかい?」 「そうそ。若いころに喧嘩したんだっけ?」 「うーん。ケンカ、というより…

だんだん
8年前
3

5月病予防のために必要なこと

「はあ、5月だってよ。嫌だねえ…。」 「なんで?5月といったら連休があるし、気候も過ごしやすくなってくる頃合いじゃん?俺は5月、嫌いじゃないけどなあ。」 「阿呆。5…

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8年前

良くない理由

「寄付ってのは、言葉が良くないね。」 「どういうこと?」 「いやね。変に寄付金なんか送ったりするとさ、偽善だなんだと囃し立てられるじゃないの。」 「ああ、そうだ…

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8年前

ミニマリストを知ってるか?

「ミニマリストって知ってるか?」 久しぶりにあった古くからの友人は、変わり果てた姿で登場した。 自由奔放だった髪の毛先はどこへやら、坊さん顔負けの短髪姿。 黒い…

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8年前

人間と妖怪の違い

ある時代のある街に、人間になりたい妖怪がいました。 人間になることができた師匠から教えを請いながら、修行に明け暮れています。 「先生、人間になるために一番必要な…

だんだん
8年前
1

狩る側のこころえ

薄暗い橙色の街灯がかろうじて照らしているのは、年老いた人間の前に立ちはだかる若者の姿。若者は右手に持つ棒状のもので、すかさず襲いかかる。 しかし、続けて繰り出す…

だんだん
8年前
2

親がいるということ、親であるということ

小学校の作文発表。 一人ひとり順番に立ち上がり、原稿用紙を小さな両手で高らかと掲げながら読み上げる。 テーマは自分の両親について。 「作文、『ぼくの親』。ぼくが…

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8年前
2

タマゴは投げるものじゃない

「なんでこんなことしたの?」 母親が我が子に問いかける、よくある場面。 「受験勉強のストレス。」 「それは友だちだって一緒でしょ。他の子達がこんなことしてるのな…

だんだん
8年前
2

政治家の職業病

「大臣!今回報じられた賭けマージャンの一件について、これは実際にあったことだと受け取ってよろしいのでしょうか!?」 「全て、事実です。国民の皆様にはお騒がせして…

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8年前
1

効率的なミカンの分け方

給食の時間。配膳台の前で二人の生徒がもめている。 「どうしたの?」 彼らの後ろに隠れて、銀色の配膳容器の中に一つだけ、ミカンが取り残されていた。 「こいつの言う…

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8年前
4

この線から先は入ってこないで

「この線から先は入ってこないで。」 理科の授業だけは教室を移動して理科室で行われる。 理科室では一人一人の机はなく、4人で一つの大きな机を使うことになる。向かい…

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8年前
1

嘘は許されない

「どうもー。これから漫才やらせてもらいます。山田と、」 「トムクルーズです。」 「カット。違うよね。見たらわかるし。」 「いや、これは導入のボケで…」 「ダメダ…

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8年前
3

人材育成の話

必ず貴重な人材としての成長をお約束致します。 成功する確率100%。 こんな宣伝文句が、学校や塾ではありふれています。 「確かにこうして書かれていました。後で確認…

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8年前
4

保育園落ちた

どんよりとした曇り空。けれども気温は心地よく、何も考えず、ぼーっとしていることが正解のように思える。そんなある日の公園。 「あら、かわいいね。おいくつ?」 「3…

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8年前
1

効率的なケーキの切り分け方

とてつもなく大きなケーキが1ホール、28種の動物たちに囲まれている。

28個に切り分けられたケーキは、大きさがバラバラだ。いちごが乗っているものもあればそうでないのもある。チョコレートの板に、細くて白い文字が書かれた飾りが乗っているものもある。一つだったケーキは切り分けられた途端、それぞれ異なるものになってしまった。

「さて、じゃあ誰がどれを食べる?」

「じゃんけんで勝った奴から取ってくって

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感染症が治らない

「ウイルスPの感染者は、現在20カ国で確認されています。」

数ヶ月前から全世界的に報道が続いている。

ウイルスPによる感染症は、下痢・嘔吐・食欲不振、それに発熱を引き起こす。感染症を原因とした死者は確認されていないが、治療法も見つかっていない。

「いつまでこういうやり取りが続くんだろうね。ストレスで最近太った。」

ディズプレイ越しに話しかけてくる彼女と、僕の目が合うことはない。

「ワクチ

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ごめんなさいをする理由

「じいちゃんはさ、裏のおじいさんと仲が悪いじゃん?」

「ああ、田中の爺さんのことかい?」

「そうそ。若いころに喧嘩したんだっけ?」

「うーん。ケンカ、というよりはあっちが一方的に、おじいちゃん達を傷つけるようなことをしたんだよ。まあ昔の話だけどね。」

「裏の、田中のおじいさんは謝らなかったの?」

「謝ったさ。少し、時間をおいてだったけどね。」

「謝ったのに許さなかったの?じいちゃんは。

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5月病予防のために必要なこと

「はあ、5月だってよ。嫌だねえ…。」

「なんで?5月といったら連休があるし、気候も過ごしやすくなってくる頃合いじゃん?俺は5月、嫌いじゃないけどなあ。」

「阿呆。5月と言ったら5月病だろ。」

「5月といったら5月病ってことはないと思うけど。」

「年に何回かの、憂鬱な時期だよ。」

「そうかねえ。」

「毎年そうさ。連休明けになるとどっと押し寄せるんだよな。」

「何が?」

「なんとも言え

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良くない理由

「寄付ってのは、言葉が良くないね。」

「どういうこと?」

「いやね。変に寄付金なんか送ったりするとさ、偽善だなんだと囃し立てられるじゃないの。」

「ああ、そうだね。」

「それがさ、〈寄付〉って言葉のイメージなんじゃないかと思うんだよね。」

「なるほど。じゃあどんな言葉がいいのさ?」

「そうだなあ。例えば〈納付〉なんてのは?」

「納付て、そりゃあ税金みたいに言うねえ。あんまイメージ良く

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ミニマリストを知ってるか?

「ミニマリストって知ってるか?」

久しぶりにあった古くからの友人は、変わり果てた姿で登場した。

自由奔放だった髪の毛先はどこへやら、坊さん顔負けの短髪姿。

黒いTシャツとジーンズにサンダルというラフな姿は、欧米のテクノロジー業界人のようなファッションなのだが、いざ顔へ目をやればのっぺりとした薄顔が待ち構えている。

低身長で華奢な体格でもあるTHE東洋人と言ったその風貌に、シンプルなファッシ

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人間と妖怪の違い

ある時代のある街に、人間になりたい妖怪がいました。

人間になることができた師匠から教えを請いながら、修行に明け暮れています。

「先生、人間になるために一番必要なことは何でしょうか?」

「それは人の痛みを知ることだよ。」

「人の痛み、ですか。人の痛みとは、妖怪の痛みとどう違うのでしょうか?」

「人間の痛み、ではなく他人の痛み。これを知るということだ。」

「他人の痛みは感じられませんから、

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狩る側のこころえ

薄暗い橙色の街灯がかろうじて照らしているのは、年老いた人間の前に立ちはだかる若者の姿。若者は右手に持つ棒状のもので、すかさず襲いかかる。

しかし、続けて繰り出す攻撃は、老人にかすりもしなかった。

「経験が違うのだよ、若者よ。」

「くそ!金だせよ。くそー!」

「無いよ。」

「うるせえ!金だせ!」

若者は持っていたものを放り、老人に掴みかかる。

「金を持ってる人間とそうじゃない人間の区別

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親がいるということ、親であるということ

小学校の作文発表。

一人ひとり順番に立ち上がり、原稿用紙を小さな両手で高らかと掲げながら読み上げる。

テーマは自分の両親について。

「作文、『ぼくの親』。ぼくが一番最初にお世話になる親はペロです。」

「ペロ?」

「ペロは犬です。僕が起きるのを毎朝手伝ってくれます。」

「ふふふ。なるほど、ペロが朝起こしにきてくれるのね。」

「おかげで起きてすぐ、顔を洗う習慣も身につきました。」

「顔

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タマゴは投げるものじゃない

「なんでこんなことしたの?」

母親が我が子に問いかける、よくある場面。

「受験勉強のストレス。」

「それは友だちだって一緒でしょ。他の子達がこんなことしてるのなんて聞いたことないよ。」

「そんなことないよ。似たようなことしてる子達は私の周りにたくさんいるし、テレビでもニュースになってたじゃない。」

「ニュースになってたのは生でしょ。あなたがパパに投げたのは、ゆで卵よ。」

「どうして生は

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政治家の職業病

「大臣!今回報じられた賭けマージャンの一件について、これは実際にあったことだと受け取ってよろしいのでしょうか!?」

「全て、事実です。国民の皆様にはお騒がせして申し訳ない、という気持ちでおります。ただもちろん、全て参加者同意の上で行われたことであります。誰かに多大な迷惑をかけてしまった、というわけではございません。」

「また合わせて報じられている不倫疑惑についてですが、こちらはいかがですか?ご

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効率的なミカンの分け方

給食の時間。配膳台の前で二人の生徒がもめている。

「どうしたの?」

彼らの後ろに隠れて、銀色の配膳容器の中に一つだけ、ミカンが取り残されていた。

「こいつの言うミカンの分け方が気に食わねえんだよ。俺はじゃんけんがいいって言ってるのに。」

「じゃんけんだと食べられない人が出るじゃん。みんな、食べられないのは嫌だろ?だから一粒ずつ分けようって言ってるんだけど、こいつが聞かないんだよ。」

「な

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この線から先は入ってこないで

「この線から先は入ってこないで。」

理科の授業だけは教室を移動して理科室で行われる。

理科室では一人一人の机はなく、4人で一つの大きな机を使うことになる。向かい合わせの人はそれほどでもないが、隣同士は間隔が狭く、私達は毎回もめ合っている。

「あんたの机の使い方が雑だから、私のノートが置けなくなっちゃう。」

「ああ、ごめん。」

そこで私は鉛筆の線で境界を作った。黒っぽい机の上なので、書いて

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嘘は許されない

「どうもー。これから漫才やらせてもらいます。山田と、」

「トムクルーズです。」

「カット。違うよね。見たらわかるし。」

「いや、これは導入のボケで…」

「ダメダメ。詐称はご法度だから、気を付けて。」

「詐称……」

「あとね。これから、じゃないでしょ。「どうもー」って入ってくるところから漫才始まってるんだから。もう一回最初からお願いします。」

「…はい。すいません。」

「どうもー。こ

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人材育成の話

必ず貴重な人材としての成長をお約束致します。

成功する確率100%。

こんな宣伝文句が、学校や塾ではありふれています。

「確かにこうして書かれていました。後で確認したら"100%"で間違いないと説明もしていただきましたよね?」

「はい。おっしゃるとおりでございます。」

「じゃあうちの子がこの時期に就職を決めきれていない現状を、どう説明するんですか?」

「我が校ではこれまでに約五万人の学

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保育園落ちた

どんよりとした曇り空。けれども気温は心地よく、何も考えず、ぼーっとしていることが正解のように思える。そんなある日の公園。

「あら、かわいいね。おいくつ?」

「3歳に、なります。」

人生の大先輩が新米の母親と、その隣の人生の新米に声をかけている。どこか懐かしい光景。

「そう。3歳。一番かわいいころね。お母さんも一番苦しくなるときかもしれない。」

「そうですね。」

「私も3人育てたけれど、

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