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古い文章を読んで感じたこと

九鬼周造『「いき」の構造』を読み返している。

これが初めて書籍化されたのが1930年、したがって、この論文が書かれたのはそれ以前ということになるが、その筆の怜悧には感嘆させられる。

例えば、語彙を挙げてみても、
「瀟洒」「婀娜」「爛熟頽廃」「恬淡無碍」等々、
語彙それだけでふくよかな円熟味が香り出しそうなほどの魅惑がある。

尤も、『「いき」の構造』は論文であるから、文に艶は要らない。
寧ろ、

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「未来」を考えるよりも「将来」を考えよう

「未来」を考えるよりも「将来」を考えよう

人は、新たな小節を迎えるとその五線譜の先に記された符号を読みたくなる生き物なのかもしれない。

そして、私も尚、この瞬間々々に、如何にそこに記された音符を奏でるかを試されているのだろうか。

予め楽譜が定められているのならば、私達はただそれをなぞっていくだけで、後は如何に音を鳴らすかということだけを意識していれば良い。

だが、実際には楽譜は我々に隠されているか、或いは、自分自身で書き進めていかね

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和洋折衷というけれど、

和洋折衷が日本中を闊歩している。

今朝も情報番組で日本に渡った外国人生花アーティストが紹介されていた。

何やら、日本の茶器やら、日本の象徴的植物やらを用いて、

和洋折衷を詠っているのだが、

僕には、そこに日本の美学が一向に視えないのである。

これに限った話ではない。

大概、(勿論全てではないが、)和洋折衷を詠った作品は、

確かに、その材料・物質において

日本のものと西洋のものを融合

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「エモい」は「あはれ」の現代語?

最近、若者の間でよく交わされている「エモい」という言葉。

英語の「emotional」を日本語の形容詞化して「emoい」
にした言葉なのであろうが、

どうやら「emotional」とは、
用法や意味合いが機微に異なるようである。

僕には、この「エモい」という言葉の意味や使い方がよく分からなかったのだが、

(恐らく、帰納的に理解するに足る用例に触れて来なかった所為だろう。)

先日、「エモい

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無常に安堵する日本人の感性構造

無常に安堵する日本人の感性構造

「古ければ古い程良い。」
建築に対するこの命題は、断言こそ出来ないが、
日本人ならば感覚的に理解し得ることを期待する。

数年前、一部改修後に訪れた清水寺は、どうも興醒めで、
塗装された所為か、綺麗で、故に抑揚に乏しいのであった。

それは、僕の感性の受容体の濾過装置が、
以前のそれと変貌していた為なのかもしれない。

初めてそれを訪れたのは、小学生の頃、修学の一行に塗れてのことだった。
壮大に岩

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