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ミワコ ムニエ
2024年4月18日 21:17
「すき」だなんて。不覚にも、不覚にも。沈黙というもの。それが答えなんだろう。こんなに、やさしくも酷な終わり方を、自ら選んでしまった。これは自分自身への終わりの表明。だって、もはやわたしの「すき」は、現在に存在していないのだから。恋をしていた過去に、恋をしていた。そして、わたしの愛はたぶんわたしがこの世から去るまでわたしから離れない。それが答えなんだろう。どこかで
2024年3月10日 12:20
比較的自己肯定感の高い状態で実家に行けたのは良かったのだと思う。ある程度揺らがない心の状態で行かないと、母親に会った後のわたしは寝込んでしまうことがあるのだ。別に仲が悪いわけではない。大切な、親である。特に自分が結婚し子どもが生まれてから、親との関係をさまざまな観点から見直す機会があった。どれだけわたし自身が親の偏った世界の枠内に生きていたかを実感し、時に落ち込み、時に怒り、時に距離を
2024年3月5日 22:30
大きな噴水のある、素敵な街だった。心地の良い石畳の道のわきに並ぶ古い建物にはたくさんの国の国旗が掲げられていて、その街が国際色豊かであることを知らせている。路面電車は旧市街を抜けてゆっくりと新市街の大きな広場へ向かっていく。歴史のある大学は門が開け放たれていて、誰でもくつろいだり散策したりできる広い公園が続く。鉄製のテーブルと、その周りに置かれたベンチに座って何人もの帽子を被った老人たちが
2024年2月5日 09:04
すこし前のこと。ニュージーランド時代の同僚から、退職の連絡があった。まだミワコさんの中だけにとどめておいて欲しい。そう付け加えて伝えてくれた彼は、わたしが向こうで生活する上でお世話になった数少ない友人の一人だ。彼には移住前のひとり旅で、共通の知り合いが引き合わせてくれた。移住や仕事の相談に始まり、実際に住み始めてからは働き方や職場の事など、壁にぶつかるたびに彼に相談していたわたしは、何
2022年11月15日 17:18
「バカ!バカバカバカバカバカバカバカーー!!」 まただ。また始まった。毎日必ず何度かは起こるきょうだい喧嘩。 はぁ…。ため息をついて、私は遠い目をする。 上から10歳、7歳、5歳。言葉では勝てない弟の、最近の流行りはとにかくこうしてお姉ちゃんたちを罵倒すること。大抵はいくら彼が怒っても姉たちはびくともしない。「はいはい」または「バーカバーカ」と小馬鹿にされるだけ。痛くはないのだろうか
2022年11月10日 21:27
こどもの頃、大人たちは頻繁に聞いた。「大人になったら何になりたいの?」わたしはその質問になかなか答えられなかった。そんなこともう考えなくちゃいけないのか。よく軽々しく聞くなあ。一つに絞ると他のことができなくなっちゃうんじゃないか、とか、自分の職業を今決めるなんて責任重大ではないか、とか感じてしまって、答えられなかった。答えられないわたしは皆が外遊びをし始めても部屋に残された。
2022年5月8日 14:10
「最後に会った日」が更新された。わたしたちだけのパリでわたしたちは落ち合う。16年ぶりに。きっと、久しぶり、のハグには少しの戸惑いとぎこちなさと、あなたの香水の匂い。それから気づいたら3時間ほど、お互いのこと、報告しあったり笑ったりする。思い出話だけじゃなく、「今」の話。変わらないあなたの手変わらないわたしの視線それにきっとあなたはわたしを、変わらないねって褒め
2019年8月28日 10:18
ロンドン行きの飛行機に乗りそびれた彼とは、友人とも呼べないくらい知り合ってから日が浅かった。「飛行機乗れなかった。明日朝の便で帰るわ。」と、なぜか私に連絡をくれた彼と、レマン湖の噴水のそばで落ち合う。「今夜どうすんの?」「友達のうちに泊まる」「そっか。じゃそれまで飲もっか」ふたりでワインを一瓶買い、そのまま湖のほとりでラッパ飲みする。夏のヨーロッパの夜は明るく、開放的だ。ギター
2019年8月18日 22:11
頭上には、それはそれは静かな、星の見える暗い空。地上では、もう秋の虫たちが鳴いていて、隣家からは時折楽しげな笑いが聞こえている。お向かいのおじいさんは昨年亡くなって、いつも朝4時くらいからついていた台所の蛍光灯は、もう二度と灯されない。誰も住んでいない家特有の、静寂。ああ、横の部屋からまた娘たちのケンカと、夫の叱る声。窓を開けているものだから、近所に響き渡ってうるさいなあ。私も怒鳴って
2019年6月11日 20:31
消すかもしれない。消した方がよいと感じてしまったなら。消すかもしれない。書いても。どうしてあなたを思い出すのだろう。どうしてあなたを忘れないのだろう。何にもならないのに、なんで。これって現実逃避かな。今更。いまさら。イマサラ。。。出会って一緒の時を過ごして、離れ離れになって。もうあれから20年近くが経つ。最後に会ったのは新宿だった。あなたとの思い出が詰まったあの大都会の