島 凪

'I wish l could see the way l did when l was young─'

西瓜を抱いて漂う人びと

9月2日。 大きな西瓜を抱えて、賑やかにやって来ていた家族が、やって来なかった夏が終わろうとしている。 決して出ないことはわかっているのに、そらで覚えた電話番号を...

なぜ読むか (一回休み)、どうして書くか (また休み)

体調が回復を兆すと、縮こまっていた手が本に延びる。塞がっていた喉が珈琲の通過を許す。ページをめくる指の動きが滑らかになり、芳ばしい液体が胃を静かに満たすころ、〈...

劇場型のあなたの人生に手を振る

あの人はゲキジョウ型なのでしょうね、と友人が書いた言葉を、私は劇場型、という漢字をあて嵌めて深く納得していた。ほんとうには彼女は劇場のようなひと。 のちに、友人...

家の二階、突き当たりの部屋の西向きの枕

曾祖父が建てた平屋の一軒家を増築したのは40年前のこと、日ごと上昇していく階段を見るのがそれは楽しかったのよ、そのうち天国まで届くんじゃないかって、と笑っていたお...

蛍光ピンク色プラスティック性椅子からの眺め

はじめはいつもの電車だったのに、そのうち舟になった車内で、私は手にした本を透明なオールに替えて、こっくりこっくりと舟を漕ぐ。浅い眠り。淡い夢。今朝方見た幸福な夢...

近すぎて、見えない

深い森のような家の中で、私たちは植物に遠慮しながら育った、と言ったら些か大袈裟だろうか。3つ上の兄に訊いてみるのもいいかもしれない。間髪入れず〈その通り〉と言い...