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集英社文庫の公式アカウントです。 書籍紹介やコラム、裏話、連載小説などを発信していきます。 読書の秋!新連載ぞくぞくスタート! 集英社文庫公式サイト:https://bunko.shueisha.co.jp/

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マガジン

  • 雌鶏/楡 周平

    昭和29年、ナイトクラブ「ニュー・サボイ」で働く貴美子は、上客の鬼頭から京都で占い師として生計を立てないかとスカウトを受ける。服役の過去を持つ貴美子は、そこを足掛かりに次々と成り上がり……。昭和の政治と金を描く大長編。

  • 彼女たちはヤバい/加藤元

    “女たらし”、”金なし”、”嘘だらけ”の中年男性・ケンに、執着する女性たち。 彼を自分だけのものにしようと、彼女たちは互いにけん制するものの、同じ男性に引っかかってしまっている分、妙な部分で気が合ってしまい……。

  • おかえり ~虹の橋からきた犬~/新堂冬樹

    飼い主の女性を守るため生まれ変わる一途な犬との物語。感動長編!

  • 下町やぶさか診療所5

    看護師知子の義母が癌のため死去。故郷島根の海へ散骨してほしいとの遺言を残した。大先生こと麟太郎が知子夫妻に同行すると知った居候の高校生麻世は……。ユーモア&人情小説。

  • 海路歴程/花村萬月

    精力的に執筆を続ける著者があたためていた構想がついに実を結ぶ! 水運国家としてのこの国の歴史をひもとく大河ロマン。

  • REISAI×捜し物屋まやま「Anemone」
  • 畠中恵『猫君』(集英社文庫)PV

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読書の秋。新連載ぞくぞくスタート!

まだまだ残暑が厳しい……というより猛暑まっただなかですが、暦の上ではもう秋。 そう、読書の秋です! というわけで、集英社文庫noteでは小説・エッセイの新連載をぞくぞくスタート! 先行して連載を開始したのは、骨太なサスペンスを数多く生み出してきた福田和代さんのサイエンス×忍者小説『梟の胎動』。令和の忍者のスリリングな活躍をご覧ください! そして、血液のがんと闘いながら、長年あたためてきた構想をついに小説化した花村萬月さんの『海路歴程』。読み手をとらえて離さない中毒性の高い

    • 彼女たちはヤバい 終章/加藤元

      【前回】  今日のお客は、飯塚あやという女性だった。 「いい雰囲気のお店ですね」  初対面の飯塚あやは、緊張気味の頬をゆるめながら言った。 「私、喫茶店が好きなんです。とくに懐かしい感じのこういうお店、大好きなんですよ」 「いかにも昭和な店でしょう」  四角いガラスがはまった木の扉。カウンター五席と四人掛けボックス二つ。全体がコーヒー色に染まったようなオーク材の内装。  「母親が経営しています」  飯塚あや。ホームページから予約のメールを送ってきた初回のお客に向かって、占

      • 雌鶏 第六章 2/楡 周平

        【前回】    4  小早川(こばやかわ)の告白を聞いて、貴美子(きみこ)は動揺した。  誕生の時期といい、手放してから養子にもらわれていくまでの経緯といい、鴨上(かもうえ)から聞かされていた話と酷似している。  だが、もしその子供が勝彦(かつひこ)であったなら……。  止(や)むに止まれぬ状況下にあったとはいえ、我が子を手放さざるを得なかった母親の心情は鴨上にも理解できるはずだ。鴨上にしても、空襲で亡くなった妻子のことを語ったのは一度きり。その後一切触れずにきたのも、今

        • おかえり ~虹の橋からきた犬~ 第十六話/新堂冬樹

          【前回】  「細胞診の診断結果が出ました。小武蔵君は、悪性リンパ腫でした。腸にできる消化管型リンパ腫で、発生頻度の低い珍しいタイプの腫瘍です」 「東京犬猫医療センター」の診療室――西沢獣医師が、テーブルに置いた診断表を見せながら言った。  菜々子は、足元に寝そべる小武蔵に視線を移した。検査結果を聞いても、菜々子に驚きはなかった。  浮き出した背骨と肋骨、艶のない被毛、力のない瞳……十日前に自宅で嘔吐を繰り返してから、小武蔵の体調はみるみる悪化した。  ドッグフードをまったく

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        読書の秋。新連載ぞくぞくスタート!

        マガジン

        • 雌鶏/楡 周平
          6本
        • 彼女たちはヤバい/加藤元
          4本
        • おかえり ~虹の橋からきた犬~/新堂冬樹
          10本
        • 下町やぶさか診療所5
          2本
        • 海路歴程/花村萬月
          17本
        • いきなり文庫! グランプリ
          4本

        記事

          下町やぶさか診療所 5 第一章 散骨の思い・後/池永陽

          【前回】  羽田空港を早朝の七時ちょっとの飛行機に乗り、麟太郎たちは出雲空港に向かった。  びびりまくるのではないかと心配されていた高史は窓際の席に座り、ガラスに顔をくっつけるようにして外の景色を一心に見入っていた。通路側に座った麻世も最初のときのような恐れる様子はほとんど見られず、静かに両目を閉じて黙って座っていた。ただ、両手で肘掛けだけはつかんでいたが。  いちばん大変だったのは、高史の隣に座っている「飛行機が怖くて、お天道様の下を大手を振って歩けるもんけえ――」と大見

          下町やぶさか診療所 5 第一章 散骨の思い・後/池永陽

          『沖縄密約 ふたつの噓』文庫版書下ろし 追章 冒頭部分特別公開!

          追章 欠  落  沖縄密約情報公開訴訟の劇的な一審判決から三回目の春を前に、西山啓子は七十八年の生涯を閉じた。骨髄腫だった。 「ちゃんと死なせなきゃ」  ことあるごとにそう口にしていただけに、夫を残したまま旅立つのはどれほど心残りだったろう。  それから十年になろうとする年の瀬、九十一歳になった太吉は自宅近くの老人ホームに入った。腎臓や心臓が悲鳴を上げ、支えなしでは歩くこともままならず、ひとりで暮らすことが難しくなっていた。  入所する前日、私が自宅を訪れると、応接間には書

          『沖縄密約 ふたつの噓』文庫版書下ろし 追章 冒頭部分特別公開!

          海路歴程 第八回<下>/花村萬月

          .    *  未来永劫晴れていることは、自然天然には有り得ない。  貞親にとって自然天然とは、人の思惑など一切頓着しない超越だ。善悪とは完全に無関係だ。  いや、自然は悪だ。  だからこそ美しい。胸を打つ。  洋上は不穏に充ちて、うねる。  貞親は溜息を呑みこんで、乱れに乱れた波に隠された規則性を見抜こうと、意識を海に集中させる。  晴れて凪いでいるときは、世界は穏やかに整然と動いているかに見える。けれど、こうして乱れはじめると混沌の乱舞で貞親を翻弄しはじめる。  一定の

          海路歴程 第八回<下>/花村萬月

          【第12回 いきなり文庫! グランプリ】いよいよ第一回いきなり文庫! グランプリ最優秀作品賞決定!

          江口 今回は、いよいよグランプリ最優秀作品を決める回です。これまで、グランプリ候補として残っている優秀作品は堀川アサコさん『定年就活 働きものがゆく』、中山祐次郎さん『俺たちは神じゃない 麻布中央病院外科』、長月天音さん『ただいま、お酒は出せません!』、山本甲士さん『民宿ひなた屋』、吉森大祐さん『青二才で候』、佐藤さくらさん『波の鼓動と風の歌』、辻井南青紀さん『主君押込 城なき殿の戦い』。 以上、七作です。それでは、一作ずつ振り返っていきましょうか。 まずは、ザ・定年小説、堀

          【第12回 いきなり文庫! グランプリ】いよいよ第一回いきなり文庫! グランプリ最優秀作品賞決定!

          門田充宏・著「ウィンズテイル」シリーズ作品紹介

          近未来地球。 未知の巨大生物〈徘徊者〉による侵略が続くこと、約120年。 世界を取り戻す鍵は、少年少女に託された――。 大迫力のSF×バトルファンタジー、新シリーズ始動!! お知らせ2024.4.19 文芸・本のニュースサイト「ナニヨモ」著者インタビュー記事公開 2024.4.19 『ウィンズテイル・テイルズ 時不知の魔女と刻印の子』発売 2024.4.4 「ウィンズテイル」シリーズ作品紹介ページ公開。 内容紹介『ウィンズテイル・テイルズ 時不知の魔女と刻印の子』 未

          門田充宏・著「ウィンズテイル」シリーズ作品紹介

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第七話(下)

          【前回】          *  天明七年(一七八七)の五月二十日、重三郎は吉原五十間道の見世にあった。次の細見の版下が仕上がったと報せを受け、不備がないかどうか目を通すためである。  それを終えた夕刻、通油町へ戻るに当たって、お甲が見世先まで見送りに出た。 「おまえさん、またね。七月に新しいのを売り出す時ゃ、様子を見に来るんだろ?」 「来るよ。でも、こっちの見世はねえ」  飢饉になってからというもの、吉原からはすっかり客足が遠退いている。通油町で二十文かそこらの本を

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第七話(下)

          海路歴程 第八回<上>/花村萬月

          .    *  太閤秀吉の時代、海商は武士や豪族が多かった。越前敦賀などは、とりわけ顕著だったようだ。  遠い智識として、それらを漠然と知っている貞親は、ひょっとしたら船頭は、本当に甲斐武田氏の出かもしれないと思うようになっていた。ただし貞親は甲州には海がないことを知らない。  甲斐武田氏の出かどうかはともかく、船頭には曰く言い難い鬱屈がある。酒を浴びるように呑むことや、理不尽な暴力の背後に、抑えようのない怒りと怨みがあるような気がするのだ。  半泣きの爨が声をあげる。

          海路歴程 第八回<上>/花村萬月

          新刊のご案内【集英社文庫3月刊】

          みなさんこんにちは。 集英社文庫noteです。 すっかり春らしく、桜の花も見ごろを迎えました。 日に日にあたたかくなって気持ちも上向くようです。 さて、3月19日に集英社文庫の3月刊が刊行されました。 今月は9作品。 こちらの記事では、それぞれの魅力をご紹介していきます。 みなさんのお気に入りの一冊が見つかったら幸いです。 ドラマ化決定! 女性の貧困と生殖医療ビジネスの倫理を問う衝撃作まずはこちらをご紹介。 『燕は戻ってこない』 桐野 夏生 第64回 毎日芸術賞 第

          新刊のご案内【集英社文庫3月刊】

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第七話(中)

          【前回】          *  米の値はいつまでも下がらず、そろそろ飢饉になると囁かれている。斯様な折、吉原遊里は振るわないのが常だ。昨今では客足も遠退き、どの妓楼も商売が三分目、二分目まで落ち込んでいるのだとか。  然るに今宵、ここ扇屋は賑やかであった。  重三郎は階段を上り、座敷の前に立って「やれやれ」と溜息をつく。そして障子の向こうへ声をかけた。 「もし。蔦屋ですけど」  と、座敷の内に鳴っていた三味線が止み、如何にも上機嫌といった声が返ってきた。 「こりゃ驚い

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第七話(中)

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第七話(上)

           年が明けて松も取れ、天明四年(一七八四)一月も終わろうとしている。その日の朝一番、耕書堂の前に大八車が止まった。 「毎度どうも。刷り増しの二千、お届けです」  荷運びの男が暖簾をくぐり、威勢の良い声を寄越す。帳場にいた重三郎は「お」と笑みを浮かべた。 「ずいぶん早いね。注文して十日も経っちゃいないのに」  荷運びは「そりゃあね」と軽く笑った。 「遅くなっちゃあ職人の名折れだって、皆しゃかりきになってんでさあ。何しろ旦那んとこの刷り増しは後がつかえてんだから」  浅間山の噴火

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第七話(上)

          新 戦国太平記 信玄 第七章 新波到来(しんぱとうらい)12(下)/海道龍一朗

           この軍評定が行われた翌日、十月八日の払暁から、先陣の三増峠の登坂が始まる。  真田信綱と昌輝が先頭を行き、それに馬場信春の本隊が続く。  武藤昌幸は浅利信種が率いる先陣殿軍に同行し、そこには検使として曽根昌世もいた。  山縣昌景が率いる赤備衆は、小幡隊の先導で志田峠を目指して出立している。  信玄の率いる本隊は麓を固め、小田原から追撃に備えた。  先陣第一隊が三増筋を進んで一刻(二時間)ほどが経ち、薄暗かった山中もすっかり陽光に照らされていた。  真田兄弟の先鋒は中腹の辺り

          新 戦国太平記 信玄 第七章 新波到来(しんぱとうらい)12(下)/海道龍一朗

          雌鶏 第六章/楡 周平

          【前回】    1 「ところで先生、ついでと言ってはなんですが、プライベートなことで一つご相談したいことがございまして……」  世間話に終始していた小早川(こばやかわ)が、改まった口調で切り出してきたのは、昭和五十年夏の夕刻のことだった。  初の来訪から四年。この間何度か卦(け)を立ててもらいにきたとはいえ、鴨上(かもうえ)を通さなければならないのは相変わらずだ。  突然現れた小早川は、「京都に用事がありまして、近くまで参りましたので、ご挨拶にあがりました」と、ふいに思

          雌鶏 第六章/楡 周平