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【雑感】アノミー・アズ・ナンバーワン
本稿の主題はAIであり、文学であり、その混淆であり、そしてその中枢にはこの芥川賞受賞をめぐる一連の「反応」があるが、しかし情けないことに、僕は『東京都同情塔』も、九段理江の作品も読んだことがない。フォロワーがずっと勧めているので読まねば読まねば、と思いつつ、気づけばこんなところまで来てしまった。
そういうわけで、本稿における論理的根拠の多くは、先に引用した荒木氏のポストに依っている。それが真
【時評】「世界の敵」の遍在と呪いについて──上遠野浩平『ブギーポップは呪われる』
・はじめに
例によって、やっぱり『ブギーポップ』の時評は難しい。特に今作は語るところが多すぎ、一つにまとめようとすると論理が散逸してうまくいかなくなってしまうわけで……。
そういうわけで、ここでは一つに焦点を絞って論を展開していきたいと思います。そのことによって抜け落ちてしまう文脈は致命的なほどに多いですが、大目に見てください……。
・本文
当然のことながら、〈ブギーポップ〉シリーズ
【時評】繭の日々は青色に沈む──『呪術廻戦』「懐玉・玉折」について
・はじめに
一時期「青春の終わり」というモチーフに惹かれていたことがある。
無論、それは今でも変わらない。そのモチーフは僕にとって特別なものだ。けれどかつて、高校生くらいの時にそこに感じていた切実さ、それ以外に生きる場所はない、とさえ言えるほどの危うさは、今はもうない。少年(少女)の限定的な時間であるところの「青春」が「終わること」。その寂寥や無情、あるいは希望を、僕は切実に求めていた。
【論評】朱金色の世紀末──〈ジョジョ〉コンテンツの文脈再定義からみる上遠野浩平『クレイジー・Dの悪霊的失恋』(「解釈」篇)
・はじめに ある作品があり、そのコンテンツを拡張するものとしてスピンオフが描かれるとき、それが「解釈」の色彩を帯びない、ということはありえないように思う。スピンオフは、原作者によって書かれない場合例外なくこの「解釈」の重力圏に包摂され、作者(原作者にあらず)はその中で独自の物語を語るしかない、というような。それは評論と創作のハイブリッドであり、その点においてパーソナルな質感を帯びる。スピンオフに
リアリティという絶望についての仮説──劇場版『岸部露伴ルーヴルへ行く』時評
NHKによるドラマシリーズ『岸辺露伴は動かない』は、しばしばその大胆なまでの改変要素によって人気を博してきた。「原作改変」という言葉は、少年漫画を原作とした実写映画の乱立期においてはネガティヴなニュアンスで使われることが多かったが、このドラマはそうした傾向に逆行するかたちで、原作改変が素晴らしい表現に結びつく可能性を示し続けてきた。
無論、原作改変が非難されがちだったのは、それがしばしば原作と
その「魂」に救いはあるか──『シン仮面ライダー』時評
(鑑賞を前提としたネタバレが多数含まれておりますのでご了承ください)
この映画は特異だ。それは間違いない。「仮面ライダー」としては大体において誠実だったが、特撮映画として、そしてドラマとしては極めて異質で、それこそがこの映画の評価を分けているポイントなのだろう。だが僕は、この映画の価値はそこにあるのだと主張したい。その異質さが、この映画を単なる仮面ライダーのリブートを超えた、独自の仮面ライダー
『「自傷的自己愛」の精神分析』と自分について
(けっこうパーソナルな内容で、気持ち悪いので注意です。また、タグにあるように、日記という体で書いています。内容が内容であり、書評にできる自信がなかったので……)
最近、いい感じに色々なことがどうでもよくなってきている。
それは勿論、無力感と虚無感が強まっていることを指すのだが、とはいえ、それは悪いことばかりでもない。無力であることと引き換えに僕は自分に対して少しだけ正直でいられるようになり、
日記のはじまり、『秒速〜』のおわり
つい先日用事で神戸まで遠征し、その際に購入した本の中に『伊藤計劃記録』がある。これは14年前に物故したSF作家、伊藤計劃のブログを本としてまとめあげた本なのだけど、相当に読み応えがあり、こう言って良ければ文学的な価値に満ち溢れているように思う。
Twitterの方では繰り返し書いてるが、僕は若造にすぎないので、ブログが全盛期の頃、それがどのように利用されていたのかを知らない。そのためブログとい
今年(2022年)にやったゲーム【後編】
・MGS1(インテグラル)
<まえがき>
ステルスゲームの金字塔(以下略)。
諸々の事情によりPSVITAのアーカイブスでやったのですが、完全に早とちりでインテグラル(セリフが全部英語になってるやつ)をやってしまい後悔……やっぱり最初はオリジナルでやりたかったなぁと。
<あらすじ>
アラスカに浮かぶ孤島、シャドーモセス。合同軍事訓練の真っ只中に、そこは特殊部隊FOXHOUNDによって占拠
「青春の終わり」のモノローグ──新海誠『雲の向こう、約束の場所』試論
この映画には、一つの予感が漂っている。
それは青春でありながら爽やかでないもの。それは恋でありながら届かないもの。それは達成でありながら手に入らないものだ。
それの名前は「喪失」。つまるところ、この映画は喪失についての物語だ。
前作『ほしのこえ』も、次回作の短編連作『秒速5センチメートル』も、どちらも同じテーマをもつ。届かない思い、聞こえない声。繋がっているという幻想の中にしか居場所がな
『クレイジー・Dの悪霊的失恋』一巻感想──『恥パ』からのジョジョ解釈の進化について
この項目ではわりと真面目な考察というか感想を、ネタバレに一切配慮せずにつらつらと書いていく。未読の方は注意されたし。
『悪霊的失恋』1巻は、全体として、一話に対して僕が感じていた印象を見事に覆してくれた。
僕は一話を最初に読んだとき、この作品が『恥パ』でやったような、ジョジョを上遠野作品の文脈で書いていく作品であるように感じた。
しかし、一巻を読んだ今、僕はそれが誤りであったように感じた
”仮面ライダーリバイ”の物語として──『仮面ライダーリバイス・バトルファミリア』時評
(noteで公開するにあたって補足しておくと、この文章は今年の8月に書かれたものである)
うだるような暑さにやられ、筆が動かないうちに鑑賞から二週間経とうとしている映画がある。毎年お馴染み仮面ライダーの夏映画『仮面ライダーリバイス バトルファミリア』である。
去年も、確かその前もなかったので今作は久々の「夏映画」ということになるのだけど、早々にぶっちゃけてしまえば、総合的にはこれはいつも