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日用品とアート作品から自分のアバター(分身)を探す:自分の内面との対話

アーティストの志村信裕さんが、横浜市民ギャラリー「自分のアバター(分身)をみつけよう」というワークショップを開催しました。このワークショップは、日用品とアート作品の中から自分の分身になりえるものを探すもので、自分の生き方や思考を客観的に見ることができます個性と創造性を引き出すことが期待できます。今回は、小学生を対象に行われましたが、ビジネスパーソンが行っても意義のあるものだと思います。そこで、今回の記事では、ワークショップで発見したことを紹介します。


横浜市民ギャラリーでのワークショップ

今回のワークショップは、「ハマキッズ・アートクラブ」という子ども向けのシリーズです。志村さんからこのワークショップについて事前に話を伺い、オブザーブ参加させていただきました。

志村信裕さん:筆者撮影

シリーズの他の企画は、子どもたちに共通の材料を与えて何かを作らせるものが多いのです。志村さんは、自分も同じようなことをやっては意味がないと考え、作品を作らないけれど、個性を引き出すものにしたいと話していました。

そして1年近くかけて考えた結果生まれたのが、「自分のアバター(分身)をみつけよう」です。

2部構成になっていて、前半は、身の回りの日用品の中から、自分のアバターをみつけるワークです。一緒に来たお母さんも自分のアバターを探しました。

日用品から自分のアバターを選ぶ

志村さんが用意した日用品はさまざま、魚を焼く網や亀の子タワシなど、今の小学生は知らないのではというものもあります。志村さんから、全部触ってみて、手触りや形、色もよく観察して選んでくださいとの指示がありました。

志村さんが用意した日用品:筆者撮影

大人の場合は機能で選ぶだろうけれど、子どもは形や色で選ぶこともあるのかなと思っていました。しかし、ほとんどの子が機能で選んでいました

正確に線が描けるところが合っていると定規を選んだ理系的な子もいれば、どんな目が出るかわからないところが合っているとサイコロを選んだ冒険心のある子もいるなど、ぞれぞれ個性が表現されています。好きなものではなくてアバターなので、選ぶのに時間のかかっている子もいました。

お母さんの選択も面白く、自分をもっと磨きたい、いろいろなことを吸収したいとスポンジを選んだ方子どもに振り回されていて、電線のくねくねした感じが自分を表現していると、絶縁電線を選んだ方など、皆さんひとりひとりの生き方が伝わる選択になっていました。

お母さんのお話しを聴いて、このワークはビジネスパーソンを対象にしても効果があることを実感しました。なぜその日用品が自分のアバターなのか、ビジネスパーソンはいくらでも語りたくなるに違いありません。

自分の内面との対話

私は第一印象で虫眼鏡を選びました。世の中の見えないものを見てみたいし、新しいことを発見したいという思いがあります。生命科学の研究をしていたときは、毎日顕微鏡を除いて細胞を観察していました。何時間観ていても飽きることはなく、この時間がこれまでの人生の中でも重要な時間だったと思っています。

でも、虫眼鏡だとストレートすぎます。別のものでひねったストーリーができないか、考えてみましたが、なかなか思いつきません。アバターとなると、自分に向き合い、本質を表したものを選ぶということなのだと思います。

面白かったのは、魚の網、ファイル、紙やすりといった、薄く四角なものは選ばれなかったということです。機能で選んでいるとしても、形にも影響を受けていそう。もっと多くのケースで調べてみると、面白いことがわかるかもしれません。

選ばれなかったものたち:筆者撮影

アート作品から自分のアバターを選ぶ

後半は、横浜美術館の収蔵品で絵葉書になっているもの13作品を志村さんが選び、その中から自分のアバターを選ぶワークで、こちらは子どもたちだけで行いました。

私は、アートは次元が違っていてアバターを選ぶのは無理だなと思っていました。
しかし、子どもたちは、日用品のように悩むことなく瞬時に選んでいました。描かれているもの、色、雰囲気などから選んだようですが、自分との共通点を見出す力があることに驚きました。

ビジネスパーソンの場合は、この中から1枚選んで、そこに自分の生き方や思考と関連づけたストーリーを考えて発表してもらうというワークにすると、アートをより深く観て思考しすることで、創造性を引き出すことができると思います。

志村さんが選んだアート作品:筆者撮影

個性の探求

志村さんが考案したユニークなワークショップが、日用品とアートを通じて参加者たちにもたらした深い洞察と個々の発見について紹介しました。現状、小学校の授業にしても、ビジネスの場にしても、同じ答えを求められることが多いものです。しかし、個性を尊重し、新しい視点を探求することが、これからの学びや仕事においては非常に重要になると思います。
そんな時代に、「自分のアバターを探す」ことが、自分を客観視して、いろいろなことに気づき創造性につながることを皆さんに知ってほしいと思います。



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