記事一覧
「大地」と著者パールバックを語る 其の1
パールバックは1938年ノーベル文学賞を受賞したアメリカ初の女性作家です。
その受賞作「大地」の舞台となった時代の中国は、古い時代から近代へと移行する過渡期にありました。
改革と銘打った「大小の革命軍」による抗争が続く一方、生活の立ち行かない貧しい農民を取り込んだ無法集団「匪賊」がはびこり、各地で殺戮と略奪が繰り返されるという長い恐怖の時期が続きました。
戦乱の続く不安定な状況下にあった
愛と涙と星のきらめき 2
お互いの名前も顔も覚束ない入学早々の時期だった。
梨花と私はそろって生活指導室に呼び出された。
私はパーマのような縮毛で…梨花は脱色した様な褐色の毛色で。
パーマを当てているのではないか、脱色しているのではないか——指導教諭は胸元に腕を組み、高圧的な物言いで椅子にふんぞり返った。
「先生私のこの眼、よ〜く見てください」
梨花は教諭の眼前に顔を突き出した。
「虹彩の色、薄いアーバン色
物語り 愛と涙と星のきらめき 1
両手で抱えたひざ頭に顔を埋めて,少女は上り框にうずくまっていた。
明かりとりのガラスを漉して午後の眩い日差しが玄関のたたきに降り注いでいる。にも関わらずむき出しの細い手足は,近づく冬をただじっと待っているような冷たい硬さを感じさせた。
「ただいま、加奈ちゃん」
梨花は膝頭に頭をもたげたままの少女に声をかける。徐ろに面を上げた額の上に,白い光が流れると少女は眩しそうに瞬きながら瞳を上げた。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (米原 万里著)
1960年、著者は共産党幹部として任地プラハに赴いた父親に伴って、在プラハソビエト学校で少女時代を過ごした。作品は後年それぞれの故国へ戻った学友の消息を訪ねた時のエッセイだと言うが、その枠に収まらない壮大無比なスケールのエッセイである。
三部作からなる作品のうち表題の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は、ルーマニアから来た級友のアーニャとその家族に焦点を当てて、統率下の体制に与する特権階級とそ
いわさきちひろの世界・戦火のなかのこどもたち
煩雑になった納戸を整理していると、[ ちひろBOX ]と白い文字で印字された空色の表紙の本が出て来ました。
幅広の白い帯には「赤い毛糸帽の女の子」の絵——2004年に発行された、いわさきちひろ没後30年のメモリアルブックです。
娘が安曇野へ旅行の折立ち寄った「ちひろ美術館」で、私への土産に買った一冊でした。
[ちひろBOX]は一般からのリクエストによって決定した展示作品280余点に、
スウェーデン映画「短くも美しく燃え」とモーツァルト・ピアノコンチェルトNo.21 第2楽章
スウェーデン映画「短くも美しく燃え」は1889年スウェーデンで起きた実話をもとに映画化(1967年)され,日本公開は1968年ですからかなり古い映画です。
物語りは妻子ある陸軍中尉スパンレーと、サーカスの綱渡りの娘エルビィラの道ならぬ恋の逃避行で始まり、心中という悲しい結末を迎えますが,実話とは言え二人が残した痕跡を辿って物語の細部をイメージで描いた内容と言えるでしょう。
逃亡直後の幸せな