見出し画像

統計学が最強の学問である ビジネス編②:外部要因vs内部要因🤔、業績により影響を与えるのは?

読書ノート(147日目)
さて、本日も昨日に続き
「統計学が最強~」シリーズ3冊目、
「ビジネス編」です。

この本は、
統計学をビジネスに活用するには?
を目的に書かれた本です。

本書の中では
・経営戦略のための統計学
・人事のための統計学
・マーケティングのための統計学
・オペレーションのための統計学

と、4つのビジネス領域に対して
統計学をどう活用できるかが
解説されています。

その中でも今日は
・経営戦略のための統計学
について紹介していきます。

・第1章:経営戦略のための統計学
・ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授は、
 企業の業績が好調になるかどうかは
 「どんな市場構造のところでビジネスを営んでいるか」によって
 大きく左右されるとし、産業内の競争環境をチェックする
 「ファイブフォース分析」という手法を生み出した
・一方でポーターと異なり、企業内の強みである「ケイパビリティ」
 注目したのがジェイ・バーニー
・資本や工場といった有形資産、ブランドなどの無形資産、
 ケイパビリティ(人材や技術)の3つのリソースが競争優位性に繋がり、
 それらの使い方がうまければ企業は持続的に利潤をあげられるとした

・ポーターとバーニーはどちらが正しいのか
・1985年MITのシュマレンジーが分散成分分析にて、
 アメリカの製造業のデータを分析し、
 「どの産業分類に属しているか」(産業要因)と
 「市場シェアの大小」によって、企業ごとの総資本利益率の
 バラつきがどれほど説明されるかを明らかにした
・結論は、
 産業要因だけで企業の総資本利益率のバラつきの19.6%が説明され、
 シェアの大小による総資本利益率の説明力は僅か0.6%だった
・つまり、個別の企業努力でシェアをとることよりも、
 どのような市場で競争するかを選ぶことの方が重要であると示唆された

・ただし、その後の複数の研究では逆の結果が出てしまう
・UCLAのルメルト、テキサス工科大学のロケベルト、
 トロント大学のマクガハンとポーター自身のそれぞれの研究結果からは、
 産業要因の説明力は2割程度、企業要因は3~5割程度、
 それ以外の要因で3~5割ほどの収益性が左右される
ことがわかった

・また、日本の企業を用いた分析は、
 1999年~2006年まで、ニッセイ基礎研究所の小本さんが
 東証上場の1091社のデータを用いて分散成分分析を実施し、
 結果として「産業要因」が5.5%、「企業要因」が51.0%で、
 それぞれ総資本利益率のばらつきを説明
することが分かった
 ※売上高1000億円以上の企業において同様の分析をすると、
  産業要因が10.8%、企業要因が47.0%を説明している

なるほど、
外部要因と内部要因のどちらが
業績(今回の場合は、総資本利益率)
に影響を与えているか
については…

外部要因で2割程度
内部要因で3~5割程度
それ以外で3~5割程度

というのが複数の分析結果からの
示唆とされているようです。

ここまでは「先行研究の把握」であり、
実際にどうやって
自社の経営戦略に統計学を活かすか?
についてですが、本書で示されている
分析結果のイメージは以下の通りです。

(以下は、個人的な分析結果の解釈です)
総資本利益率への影響(係数)が大きいのは「東南アジア圏への進出の有無」「営業力の強さ」
ただし、「東南アジア圏への進出」は進出あり(1)か進出なし(0)しかなく、
影響度の最大値は、係数1.22×上限1=1.22%の総資本利益率の上昇が上限で伸びしろは小さい。
そもそも…なぜ「東南アジア圏への進出」で総資本利益率が1.22%上昇するのかは要議論)

極論ですが、保持特許数は0.02と回帰係数は低いものの、仮に特許を62個以上を新たに保有すれば
0.02×62=1.24で、最も強い係数「東南アジア圏への進出」1.20を上回る結果にもなりうる予測。

※留意点①:保持特許数のp値が0.093と5%有意基準を満たしておらず、信頼区間を見ると、
係数が0.02ではなく-0.01とマイナスの影響が出る可能性が示唆されている
→データ量を増やして再分析し、p値が5%未満かつマイナス影響が出現しないことを確認すべき
※留意点②:今回のデータ分析に用いた「保持特許数の最大値が62以下の場合」、
「元データの範囲外のことを予測」しているため上記の計算結果は使えないと考えるべき

では、この分析結果を得るために
どのようなデータを集めれば良いか…
については、以下の通りです。

企業1つを1件のデータとして
20~30社のデータがあれば
先程のような重回帰分析ができる
ということですね!

具体的な手順は以下の通りです。

・手順①:競争する市場の範囲と分析対象企業の設定
・水平方向への市場分析
 「顕在的な競合」に加えて、
  潜在的な「代替品」も競争相手として捉えておく
・垂直方向への市場分析
 バリューチェーンの上流から下流まで市場の捉え方を拡大し、
 その中で収益性の大小を左右している要因は何かを考える

・手順②:分析すべき変数のアイディア出し
・Google Scholarなどで、調べたい内容
 (例:”resource based view”と”systematic review”と入力)して文献調査
・筆者が調べた際には、業績に影響を与える要因は
 資源、ケイパビリティ、コアコンピタンスの3分類に整理され、
 「人材」「評判」「仕事と家族のバランスを取るためのポリシー」など
 が重要要素であるという観点を得ることができた

・手順③:必要なデータの収集
・公開されている客観的なデータを使用する
・「儲かっている度合い」は売上や営業利益額などの絶対額ではなく、
 シュマンジーやルメルトと同じく「総資本利益率」を使うことがオススメ
・ベンチャー企業などを分析対象とする場合は
 現在の利益率ではなく市場からの期待される将来性を加味するため
 「時価総額」を指標として分析することもある
・単年度の数値よりは3年あるいは5年と、ある程度のスパンの平均値を
 取った方が、単年でのイベントに経営指標が大きく左右されてしまう
 といった過大評価・過小評価のリスクを減らせる
・非上場企業の場合でも、帝国データバンクから1社数百円程度で
 取り寄せられるデータがあることも

・手順④:分析とその解釈
・単純集計ではなく、重回帰分析を使用する
・重回帰分析ならば「他の説明変数の条件が一定だったとすれば、
  この説明変数が1増えるごとに総資本利益率はいくつ増減するか」
 という形で結果を示すことができる
・重回帰分析で注意すべきは、分析対象とする企業数よりも
 分析に使用する説明変数の数は少なくなければいけない点
 (データ数が30社なら、説明変数は29個以下でないと分析できない)
・説明変数の選択には、ステップワイズ法がおすすめだが、
 1996年にスタンフォード大学のティブシラーニ教授により開発された
 「ラッソ正則化」やその派生形の手法による変数選択の方が望ましい
 という考え方も広がっている

具体的な分析手順の話になると
専門的な内容が増えてきましたが、
私自身の今後の備忘メモとして
そのまま整理してみました。

また余談(&備忘メモ用)ですが、
本書の中で紹介されていた以下の図が
業界内のバリューチェーン別での
営業利益率と額を一目で理解するのに
便利だなぁと思い、追加で紹介です。

ベイン・アンド・カンパニーの利益プールマッピング
自動車の製造からサービスに至るバリューチェーンの全ての売上と営業利益率をマッピングし、    自社が儲かる戦略として垂直統合の検討や、競争優位性の把握などに活用する

売上×営業利益率=営業利益額なので、
この図ひとつで、
業界内の概要を説明できる点が凄い!!
と感じましたので、紹介でした。

ということで今日はこの辺で!
それではまたー!😉✨

この記事が参加している募集

最近の学び

ビジネス書が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?