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うつわマガジン2019

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2019年2月の記事一覧

茶たまごとぐいのみ

茶たまごとぐいのみ

エッグスタンドに懐古的なものを感じる。おそらく和の盃に酒でなく卵を立てるという最初にみたときの驚きは、子どものわたしには強く印象づけられたのだろう。

ごはんとおみそしるの朝食から、物心ついたころ西洋化した朝ごはんが我が家の食卓に並べるようになった。わりとカッコつけだった父と流行を取り入れたおしゃれ大好き母は、トースターやバターケース、ティーセットにエッグスタンドなどを揃えた。キッチンを黄色にアレ

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100グラムはけっこうしあわせだから

100グラムはけっこうしあわせだから

静かに時をかけて根づくということ

動いてもすぐに答えの出るものばかりではない。ひとつものだけ輝くのではない。そんな中でみなが泳いでいるのだと思う、うようよと。

アートという仕事も。生きるうえでは、枯渇しきったり、また浮いてきたり。芽が出て花が咲いたら、それだけで喜べる仕事なのかもしれない。気がつくと欲がなくなるような、そのわりに肉体労働きわまりない。おそらく、芸術を生業とするということは、どろ

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一生かけてもこえられない師がいるから

一生かけてもこえられない師がいるから

昨年末、ミラノの師匠グイド・デ・ザンが、イタリアの出版社コッライーニから作品集「UN' IDEA DI LEGGEREZZA」を上梓した。彼は、これまでに数冊の本をだしているが、このように立派な本は初めて。

工房40周年を記念したもので、バイオグラフィから作品についてのテキスト(伊語/英語)の内容はすべて彼の偉大なる経験の賜物だ。ブルーノ・ムナーリの本を多数あつかう大好きな出版社ということで

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スープ作家 有賀薫さんトークショー

スープ作家 有賀薫さんトークショー

*有賀さんの「鍋コレクション画」に色とメモオリジナル画はこちら
⇒★わたしの鍋コレクション 有賀薫

鍋ばなし 汁の海原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする…

鍋のはなし スープ一杯のしあわせ吹けば どうしたってそのひと有賀さんを忘れやしないわということで、歌なんか詠んでないで、急げトークショーへ!!

自分のための記録として有賀さんの鍋イラストに勝手にメモを添えた。会場に持ちこまれた鍋の色も

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ミニミニ土鍋でインスタントスープ

ミニミニ土鍋でインスタントスープ

土鍋のなき声ある秋の日、しくしく泣いている土鍋の声をきいた。

「土鍋うちにあるので」「土鍋しまう場所がないので」ついには「土鍋あるけど上の棚にあるからめったに出さないわ」という声を、数年前までたくさん聞いた。耳をすますと、枯れた土のようなしゃがれた泣き声が家々から聞こえてきた。10年前、土鍋をつくりはじめた頃のこと。

コッチョリーノの展覧会にいらっしゃるお客さまは天使だから、笑みをこぼしながら

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「白菜ウィーク」前編(ちょっと大きめなうつわで白菜)

「白菜ウィーク」前編(ちょっと大きめなうつわで白菜)


1. ちょっと大きめなうつわのススメ白菜がとてもおいしい季節。おまけに格安。勝手に「白菜エヴリディ」と名づけて白菜をむさぼり楽しむことにした。スイカ割り気分で大きな白菜をざぐぐと割るのは爽快だ。たまには豪快につくって豪快に盛るのもいい。

ひとつの食材でさまざまなメニューをつくり、自作のうつわ(今回は大きめなうつわ)に盛って、課題を見つめる実験をこっそりするのが好き。

結果はいつもこう。うつわ

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土鍋でつくる「白菜のレモンポタージュ」

土鍋でつくる「白菜のレモンポタージュ」

毎日を安定して生きることなんてむずかしい。新タマネギや新ジャガイモが、やあやあ!と、土のなかの春の香りを一番に告げにきた。土から生まれた野菜も、土鍋も、土の香りをかぎ分ける鼻をもっているから土鍋の中でほこらしい顔をしているでしょう。

新タマネギと白菜をざくざく切って銀色のバッドを山盛りにする。レモンの皮をさぱさぱすりおろす。豆乳に白みそのコクある甘さを加える。

雨は土にさまざまな成分をとかし

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土鍋で炊くイタリア「アックアコッタ」

土鍋で炊くイタリア「アックアコッタ」

直訳は「クチーナ・ポーヴェラ」=「料理・貧しい」だが、貧乏料理という意味とは少しちがう。地産地消(地の限りある素材)、あるいはその地や気候に適した素材、つまりは嘆きというよりポジティブに「安い食材」(または出費なし)でつくれる料理という思いがこめられているのだと思う。

ひるがえせば、そこにないものを時間やお金を要して調達したり、見栄をはらないという意味の、ありのままの地元料理。クチーナ・ポーヴェ

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ちょっとブレイク 「さびない道具」

ちょっとブレイク 「さびない道具」

明けました記事。1ヶ月おくれのごあいさつ。冬眠するクマなのかモグラなのか知らないけれど、そんなはじまりも悪くない。1年が12ヶ月だと思うから人は嘆く。クマやモグラはきっと嘆きはしない。

新しい年を迎え、1月はネット発信をツイッターにしぼり他もろもろの方向性については客観的に観察しながら考えた。きもちのサーモスタットかかったとかカッコいいこと言いたいが、いや単に不良だからすぐさびる。(みなさんは優

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