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短歌

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夢もうつつも一緒くた
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【短歌】霜降2首

【短歌】霜降2首

人づてに聞くのみにても朝ふりし霜のとけゆく心地こそすれ

枯れはつる身にふと水の音聞くは霜ふる朝の
淡きまぼろし

【短歌】心中列車5首

【短歌】心中列車5首

どこへでも連れて行つてよ貸切の急行列車に 
肩を並べて

底のなきプラットホーム踏み出せば手と手はなれて飛ぶ走馬灯 

君の手で引きはなさるる残酷をわれは願つて
ゐたかもしれず

恋といふときには甘き苦しみを逃れ水面の泡沫となる

やすらひを与へ給ひし君をのせ列車の音はやがて果てたり

【短歌】野分前夜2首

【短歌】野分前夜2首

雨音の近づくほどになにとなく足をゆるめて
見やる来し方

雨まじりの追ひ風ふはと背を押せば野分待たるる心地こそすれ

【短歌】いづれにしても2首

【短歌】いづれにしても2首

会はでいれば過ぎゆくものを目にしつつ口もひらけぬことぞ恨めし

言の葉のゆきかふほどに帰るさの景色ゆらぎてやまぬ嘆きや

【短歌】芒1首

【短歌】芒1首

中空の藍をくすぐる逆光のすすき夜風に恋のゆらめき

*南町田グランベリーパークの2階、南に開けた空をバックに、人の背丈よりも高いススキが繁る中庭の階段を見る。子連れには常に騒がしいBGMが付きまとうが、落ち着いた月見を堪能したいカップルにはうってつけの場所かもしれない。

【短歌】ひたむき1首

【短歌】ひたむき1首

無口なる男の子やマスクに声も無く目にて語りきその目ひたむき

*何かに打ち込んでいる子の目に惹かれ、
余計なちょっかいを出すけしからんオバサン(私)。

【短歌】帰省

【短歌】帰省

 家族で私の実家へ。久々に全員集合し、アルコールの回った兄や弟の口からは、私の子供時代の悪行の数々がこれでもかというほど出るわ出るわ。

   やんちやといふ言葉は
    息子をスルーして
     娘に憑きにし母こそあはれ

 もし自分のような娘を持ったら育てる自信ないなぁと思っていたが、たまたま男ばかり生まれたので助かった。

   われのごとたち悪き娘を持たずして
         幸ひな

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【短歌】盥2首

【短歌】盥2首

戦中より使はれしごとき金だらひ逆戻りなき定めに朽ちて

泣く子らの頭にぽんと盥のせ河童に変へしコーチの手品

*スイミング教室の若きコーチ、子どもの扱いに慣れているなぁと思ったら子持ちだった。

【短歌】悪魔だって反省している

【短歌】悪魔だって反省している

ガソリンを捨つる人あり捨てられず堕ちゆく人もありと知るべし

 よかれと思ってしたことが相手にとっては迷惑だった。なぜだろうと考えを巡らせていると、少しでもルーティンを乱されることに対処できないのだと思い至った。私のことが悪魔に見えたに違いない。
 イタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニは、空撮中の小さな飛行機を不時着させなければならなくなったとき、「できるだけ(機体を)軽くするために、

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【短歌】古典目線2首

【短歌】古典目線2首

もう嫁に行ける年だね制服の下の御御足はつらつとして

小姓かな声変はりそめし男子の道着に映ゆるながき睫や

【短歌】梔子の花2首

梔子の香をまへにして声うせて時を分かたず溺れゆくまま

梔子の香のあけくれに染みつけば枯れたるのちをいかに過ぐさむ

【短歌】テスト1首

【短歌】テスト1首

赤点のテストを切りて鶴折りて律儀に持ち帰る息子大丈夫?

*隠したいのか見せたいのか、謎。

【短歌】至福

【短歌】至福

酒の呑めぬ男の子の顔を酒呑みの顔に似するは刺身の魔法

*久々に食べたお刺身が喉元を通ったときの長男の顔。まだ中学生。恐るべし隔世遺伝。