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[完結]私、悪魔になっちゃいました

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ある日突然、私が悪魔に─!? ふとしたことで2足のわらじを履くことになった不思議なOLの物語。 全13話。
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私、悪魔になっちゃいました「#13/そして悪魔になる」

私、悪魔になっちゃいました「#13/そして悪魔になる」

 私は、暗闇の中にいた。みんなが消えたオフィスの中で、急に視界が暗くなったのだった。
 どうやら気を失っていたみたいで、長い眠りから覚めたような感覚も受ける。

 暗闇の中で、何故か私の姿だけがはっきりと見えていた。格好は元に戻っていた。
 夢か現実かも、生きているのか死んでいるのかすらもわからない感じを受けていた。
 一体何が起こったのだろう。私はただ、自問自答をしていた。

 暫くして、何かの

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私、悪魔になっちゃいました「#12/独りの叫び」

私、悪魔になっちゃいました「#12/独りの叫び」

 奥の方でみんなが怯えている姿が見えた。何が起こっているのかは私にもすぐわかった。
 『最終形態』になっていたのだ。

 今までの姿は、どっちかというとこう、コスプレのような感じをしていた。
 角や尻尾も生えていたけれど、それはどこか可愛さも持ち合わせたものだった。

 けれども今、そばにあった手鏡を覗きこんだ先に映っていたのは、それとは似ても似つかない『悪魔』の姿だった。
 否、『怪物』といって

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私、悪魔になっちゃいました「#11/諦め」

私、悪魔になっちゃいました「#11/諦め」

 ピリピリとした空気のまま、静かな時間がオフィスの中に流れていた。
 誰も私のことを見ているだけで、何も言わない。
 皆が私の迫力にやられているのだ、ということぐらいしかわからなかった。

 「むしゃくしゃする」グッと絞り出すような声で私は呟いた。
 「落ち着きましょう、一旦。ここで見つめあっても何も変わりませんよ」後輩の野村くんが声を上げた。
 しかし、それは私の心に届く程のものではなかった。

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私、悪魔になっちゃいました「#10/昼下がりの修羅場」

私、悪魔になっちゃいました「#10/昼下がりの修羅場」

 完璧な悪魔になってしまった私の目の前には、遠くからその様子を見つめる同僚たちの姿があった。
 「えと…森川さん…なんだよね」口を開いたのは、今まで一度も話したことの無いような人だった。

 「そうですよ。みんなに嫌な感じで見られてる私ですよ。何かあるんですか」
 「いや、何がしたいのかなって…」
 「伝えに来たんですよ。私を怒らせると怖いよってことを」
 その人は怖がるように退いていった。

 

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私、悪魔になっちゃいました「#09/暴発する不満」

私、悪魔になっちゃいました「#09/暴発する不満」

 背脂豚骨ラーメンを平らげた状態で、会社へ戻る道を歩く。
 不思議と、見るものが何でもネガティブに見えてきた。私のことをネガティブに見ているのではないか…という具合に。

 ショーウィンドウに目を向けると、暗くきつい表情をした私が映っていた。
 なんともひどい状態である。周りを歩く他人との間には、まるで天と地ほどの差があるようにも感じられる。次第に不満が溜まっていく。

 会社のあるビルが見えてき

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私、悪魔になっちゃいました「#08/悪魔の昼食」

私、悪魔になっちゃいました「#08/悪魔の昼食」

 昼休みに入ったことを知らせるチャイムが鳴った。決戦の時がやってきた。

 「お昼だけど、春咲はどうするの?」
 「あ…外で食べようかな…って」
 「そう。ラーメン?」
 「まだわからないよ」

 私はビルを出て、飲食店の集まっている辺りへ向かった。
 普段ならコンビニに向かって、サラダと弁当を買って済ませる。
 しかし今日は違った。全くコンビニに足が向かないのだ。それどころか、滅多に行かない飲食

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私、悪魔になっちゃいました「#07/自制心の問題」

私、悪魔になっちゃいました「#07/自制心の問題」

 人間とは不思議なものだ。特にこの私は。何て言ったって、出勤直後の数分の間に全員が前と違う反応をしただけで、ラーメンの口になるからである。

 朝のうちには特に食べたくもなかったのに、今ではまるで、数日前から食べる予定でいたかのようになっている。
 こんなになるなんて、きっとあれの仕業に違いない。潜在意識として存在する「悪魔」。

 「…ラーメン食べたい」
 「え?ラーメン食べたいの、春咲?」
 

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私、悪魔になっちゃいました「#06/出勤」

私、悪魔になっちゃいました「#06/出勤」

 「ラーメンを食べると、悪魔に会える」……というか、私自身が悪魔に変身してしまう。そんなことにやっと気づくことができた訳だが、それ以外は至って平凡な訳であり、今日もいつも通りの日常を過ごす。まるでレールの上しか走れない電車のように。

 朝起きて、洗顔の後に長い髪をゴムで後ろにまとめる。そして薄く化粧をし、眼鏡をかける。以前買った銀色、丸縁のブルーライトカットを。これで準備はできた。駅に向かって電

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私、悪魔になっちゃいました「#05/重要な知識」

私、悪魔になっちゃいました「#05/重要な知識」

 休日のショッピングモールで、悪魔になってしまった私は、またも起こった自らの悪魔化を憂いていた。
 今はもう元の姿に戻ったとはいえ、このままだと次のタイミングが読めない。いつ悪魔になるかわからないのだ。

 ぼやーんとした状態で車を家まで走らせる。だけどもぼやーんとしていたら事故を起こしてしまう、と聞いたことがある。
 家につくまではこのことを忘れよう、そう心に決めた。

 家についた。店で買った

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私、悪魔になっちゃいました「#04/気楽な休日を」

私、悪魔になっちゃいました「#04/気楽な休日を」

 今日は仕事が休み。気楽に休日を過ごせばいいので、せっかくなら買い物に行こう。そう決めて、ショッピングモールに行くこととした。

 家から車で数十分。ここには、なんだか新しい服が欲しくなったときなどによく行く。
 今回は何を買おうか。気になったトップス。前から欲しかったあの小物。それともあの帽子か。

 店内はこの日も賑わっていた。私は楽しくお店巡りにお呼び、気になった店で素敵なものを見つけた。

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私、悪魔になっちゃいました「#03/悪魔の正体」

私、悪魔になっちゃいました「#03/悪魔の正体」

 職場で、突然悪魔になってしまった。いつものウザい先輩が言ってきたことに腹を立てて、である。
 何だかすっきりした気分だった。

 「おいおい、急にセクシーな格好なんて?急に陽キャか?小悪魔系の」
 「うるせぇよクソが!」

 私の口から飛び出したのが、普段ではありえない暴言であること。それに気づくのは、後日同僚に話を聞かされた時のことだった。

 「な、お前…先輩に『クソ』なんていい度胸してんじ

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私、悪魔になっちゃいました「#02/ランチタイムで」

私、悪魔になっちゃいました「#02/ランチタイムで」

 悪魔になってしまった私は、誰もいない路地で激しく慌てていた。
 随分とセクシーな格好になってしまった。このままでは恥ずかしくて町を歩けない。

 一体いつになったら、こんなコスプレみたいな格好から元に戻れるのか。
 しかし、いつまでたっても路地に居座っている訳にもいかないので、私はとりあえず家に帰ることにした。
 体から湧き出る羞恥心の反逆を必死に抑えて。

 家に着いて、お風呂を浴びて、一眠り

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私、悪魔になっちゃいました「#01/夜のラーメンで」

私、悪魔になっちゃいました「#01/夜のラーメンで」

 昨日、彼氏に別れを告げられた。ずっと一緒にいるって決めた彼氏は、「もう別れたいんだ」とだけ言って私の元を去っていった。

 訳がわからないよ。何か私が悪いことをしたの?よくわからないままに時が経ったある日、駅で私は彼を見かけた。
 隣には若いキラキラした女が。そうか、そういうことか。あの女と付き合いたいがばかりに私を蹴ったんだな。

 怒りに身を任せながら夜の町を歩く。歩いているときにカップルを

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