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2023年度/文学サークル“お茶代” みんなの文集

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全国のお茶代ストみんなで作る、素敵な文集☺️✌ 読んだり読まれたり、支え合って生きるのさ!(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)っ🍵 ※わしゃどーしても文集に追加してほしくないんぢゃ!という方は脱輪まで… もっと読む
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記事一覧

アタクシの欲望

 「人はみな妄想する」という本が積読になっていた11月ごろ、近くの本屋で「阪神タイガース一番くじ」なるものが開催されていたので、私は「いや本当は本を買いにきただけですよ。あら、こんなところにくじが。ちょっと引いていこうかしらむ」という偽装のための邪な心8割と、「ゼロから始めるジャック・ラカンかーこれなら読みやすそう。千葉雅也さんも推薦しているからとっかかりになるかもしれない」という気持ち2割でレジ

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クリスマス・正月の想い出

クリスマス・正月の想い出

 子供の頃、我が家では毎年クリスマスにツリーを出していた。しかし食事は少し豪華なものにするという程度で、チキンやケーキを食したりすることはなかった。家族にプレゼントを買ってもらえるのは誕生日とクリスマスだけだったので、楽しみにしていたことは覚えている。

 大晦日の晩、リビングのテレビからはいつも「紅白歌合戦」が流れていた。後に「ガキ使」を知ってからはそれを疎ましく思い、一人別の部屋のテレビで観て

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ジャック・ラカンの入門書を読んだら、わかりやすすぎてびっくりした話

ジャック・ラカンの入門書を読んだら、わかりやすすぎてびっくりした話

先月、ジャック・ラカンの本を読んだ。詳しくは下記のnoteに書いたが、まあこれが意味不明だった。わたしはそれまで精神分析に触れたことはなく、門外漢も門外漢だった。なので知識不足なのもあっただろう。でもなんというか、日本語として「???」という感じで全然何を言っているのか分からなかった。

そして「いつかこの人の書いたものを理解したい」と思っていたところ、ラカン入門書である『疾風怒濤精神分析入門』が

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精神分析と私

精神分析と私


⚠︎『ゼロから始めるジャックラカン』を読んだ感想です。

鬱と私

人間は皆不完全な状態である。
思えば、聖書の楽園追放神話や、古代ギリシアの片割れを求めること、など、以前は完璧だった人間が罪によってその立場を失い、不完全な状態で生まれ、生涯その欠陥を補うために生きる、ということは西洋社会の古い価値観として伝統的に通底しているように思える。
では現代社会における、病気及び健康の概念はどのように作

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うろ覚えの呼吸-お茶の型-

うろ覚えの呼吸-お茶の型-

タイトルの通り、うろ覚えの記憶に基づくnoteです。
鬼滅の刃ファンの人は、私のnote読むよりも『炭治郎はなぜ旅に出たのか?』についての考察noteを書いて、下記Xポストにリプで教えてください。

私は旅人ではない炭治郎を知らない。

初めて見た時既に彼は旅人だった。

私が初めて炭治郎を見たのは、一大ブームとなった無限列車の中だった。
とあるマッチングアプリで知り合った男と会う口実と、流行りの

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言葉を忘れて森へいこう  〜ファブリス・ドゥ・ヴェルツ『依存魔』からゴシックの美学へ〜

言葉を忘れて森へいこう 〜ファブリス・ドゥ・ヴェルツ『依存魔』からゴシックの美学へ〜

言葉を忘れて森へ。
時折そう思うことがある。
例えば容赦なく照りつける夏の日射しと騒々しい蝉の声に塗り込められた縁側で打ち水を遣る母の着物の文様がかげろうの向こうふと歪んで見えた瞬間。
あるいは冬枯れの並木道を一人物思いに耽りつつ散歩している途上すれ違った幼い男の子とその父親らしき男のかたく結ばれた手、秘密めいたまなざしの交わりにぶつかった瞬間、わからなくなって。
言葉を失い。
記憶は剥がれ。

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ジャック・ラカンの本を読んだら、まったく歯が立たなくて笑えてきた

ジャック・ラカンの本を読んだら、まったく歯が立たなくて笑えてきた

いや、もはや読んだと言えない気がする。100ページ弱ある本と向き合ったのは事実だけれど、胸を張って読んだとは言えない。完全に負けた。

その本、ジャック・ラカンの『テレヴィジオン』を読んだのは、友人である脱輪さんのこのツイートがきっかけだった。

「お茶代」とはわたしが参加している文学サークルであり、脱輪さんはその主催者だ。

このツイートを見て、「たった1行すら理解できずだんだんイライラしてきて

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わたく詩II・コクトー『三十になった詩人』

わたく詩II・コクトー『三十になった詩人』

 「詩とわたしについて何か書きなさい」と言われて、べつに堅苦しく考えず、自由に、何を書いてもいいのなら、本棚の、一度読んだことのある詩集をぱらぱらと捲って、その中から適当に詩を選んで、そして何かを書けばいいのである。

 ぱっと目についたのは家の本棚の一角の海外の詩集をまとめて並べた場所だった。
 そこにある『ヘッセ詩集』は十年以上積読のまま一度も開いていない。なんか格好いいからという理由だけで買

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わたく詩・天文学者の話を聞いて

わたく詩・天文学者の話を聞いて

 癌を宣告された化学教師ウォルター・ホワイトが家族に遺す大金を作るため”クリスタル・メス”(覚醒剤)を製造するドラマ『ブレイキング・バッド』。

 このドラマに登場するゲイル・ベティカーという化学者が好きだ。
 ゲイルは一時期、主人公ウォルターのメス製造の助手を務めた人物で、化学者としての経歴は優秀、だが自ら「オタク」と称する変わり者である。
 
 理想のコーヒーを飲むためにラボに大きな装置を作り

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ウィットとユーモア

ウィットとユーモア

 僕が笑いに関心を持つきっかけは、西部邁最後の弟子を名乗り、雑誌「表現者クライテリオン」に多数投稿されている平坂純一さんだった。
 平坂さんは笑いをウィットとユーモアに大別して論じられ、獅子文六論のほか、YouTubeチャンネル「平坂アーカイブス」でも度々触れられている。ウィットが「知性による高みから個別的な時代や場を切り取るような乾いた諧謔」*1であるならば、ユーモアは「自らが時間と空間を超越し

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詩的なものと僕

詩的なものと僕

 大阪のとある病院の一室で生を享けた僕は、物心つく頃には既に奈良へ移り住んでいた。その後も家族の仕事の都合上、週に一回、当時住んでいたはずのかの地を訪れていた。けれども小学校の三年以降、塾に通い始めるのと時を同じくして大阪へ行くことはなくなり、思い返すことも次第に少なくなっていった。
 その「第二の故郷」——故くした郷という字面に従うならば唯一の、と言うべきなのかもしれない——を再び訪れたのは昨年

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わたく詩

“無音”

バス停はどちらでしょうか
旅人は聞く
一つ結びの少女は答える
あっちです
きりりとした眉と揺れる髪
ありがとうございますと
旅人は応える
少女はあの、と声を振り絞って聞く
どうすれば 旅人になれますかと
彼はポケットから
サクレクールの写真を渡し
大きくなったらここに行くといいと
秋風に乗り 彼は去る
パリの風を 彼女は夢想する

私と詩
詩の出会いは小学生のころだったか、幼稚園の頃だ

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【著 爾太郎】講談社学術文庫「テレヴィジオン」(ジャック・ラカン)

【著 爾太郎】講談社学術文庫「テレヴィジオン」(ジャック・ラカン)

*初めの註(茂泉朋子)
この記事では、爾太郎氏が執筆した文について、茂泉朋子のnote記事として掲載しています。そのような掲載体裁をとる理由は、爾太郎氏が極端な人見知りであり、自身のSNSをもたないからです。したがって、著者爾太郎氏への感想等をいただける場合についても、当ページをはじめとした茂泉朋子名義のSNSを通したものになることをご了承ください。なお、爾太郎氏と茂泉朋子は別人であることを明記し

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