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2024年読んだ本

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2024年に読んだ本・聞いた音楽の感想文です。 日記風に時系列で見れるように、フォルダ分けしました。 最終的に何冊までいくかな?
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記事一覧

15歳のころ、どんなあなたでしたか?-『十五歳の残像』江國香織(1998年)

15歳のころ、どんなあなたでしたか?-『十五歳の残像』江國香織(1998年)

 買ったまま読んでないシリーズ②:400円(メルカリ)

 この本を買ったのは、宣伝会議「編集・ライター講座」の受講生のときで、“インタビューして文に起こす”ことの参考になると思ったから。
 読むのをやめたのは、絶版だと思ってメルカリで買ったらボロボロで、悲しくなったから。
 今回選んだのは、自分を甘やかそうと思ったから。
 このごろ読書の幅を広げるために、男性作家の作品を読んでいた。元の読書対象

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ガラスの靴はシンデレラのアイテム-「ガラスの靴」安岡章太郎(1951年) /村上春樹『若い読者のための短編小説案内』③

ガラスの靴はシンデレラのアイテム-「ガラスの靴」安岡章太郎(1951年) /村上春樹『若い読者のための短編小説案内』③

 書き出しを読んですぐ、「これこれ!」と思った。この頃エッセイとインタビュー集と自己啓発を読んでいた私は物語に飢えていた。

 この村上春樹×「第3の新人」の読書も6作品中3つ目まできたが、今回の短編はあまり何も拾えなかった。多分、女性の描き方が非常に男性視点的だからだ。

【あらすじ】
 銃器屋で夜警のバイトをしている「僕」は進駐軍の中佐の屋敷でメイドをしている悦子と恋仲になる。子どものように無

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生きてきたことを刻みつける-『私が食べた本』村田沙耶香(2018年)

生きてきたことを刻みつける-『私が食べた本』村田沙耶香(2018年)

買ったまま読んでない本を読んでくシリーズ①:759円
(あと100冊ある…)

 この本を買った理由は村田沙耶香の創作方法を知りたかったから。
 この本を読むのをやめた理由は、書評の文章が型通りの展開で、あまり面白く感じられなかったから。
 再開した理由は、私が今こうしてnoteに本の感想文を書くようになったので、参考になるかもしれないと思ったから。

 『文藝別冊』の川上未映子特集で村田沙耶香の

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わたしの日常に溶けてほしい-「LIFE TIME」GRAPEVINE (1999年)

わたしの日常に溶けてほしい-「LIFE TIME」GRAPEVINE (1999年)

 いい小説は人生は物語だと教えてくれるが、
 いい音楽は私の人生をドラマにしてくれる。

 このアルバムでそれを知った。
 まずは一周聞いてみようと、なんのガードもせずに再生した。2曲目の「スロウ」を聞きながらドラッグストアのエスカレーターを上がって2階に着き、サビが流れた瞬間、私の日常がドラマになった。このままこの音楽が私の日々に溶けて、ずっと人生に流れていてほしいと思った。

 GRAPEVI

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ロックの定義がわからない-『尾崎世界観対談集』(2024年)

ロックの定義がわからない-『尾崎世界観対談集』(2024年)

猛烈に暗くて、死んだこころと殺したい気持ちで本屋を彷徨うと目が合った。過去の嫌だったことが私の思考を襲うのを無表情にされるがままあしらう。この人の音楽は知らないけどこの人の文章は知ってる。町田康みたいに。なぜか?私の好きな作家金原ひとみが彼らクリープハイプ(バンド名を別のグループと混同しててちゃんと書けてるか心配)のファンで、よく話に出てくるからだ。音楽もできて小説も書けるなんていいですね。でも、

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雨に閉じこめられるー「水の畔り」吉行淳之介(1955年)/村上春樹『若い読者のための短編小説案内』①

雨に閉じこめられるー「水の畔り」吉行淳之介(1955年)/村上春樹『若い読者のための短編小説案内』①

 よくまじめな読書をしている。
 金原ひとみの『マザーズ』が読みたいから、外堀を埋めるように彼女の作品を出版順に読破したし、川上未映子の『夏物語』を読みたくて、同じ登場人物が出るという『乳と卵』を再読した。(読んだらわかるが、これはやめておいた方がいい。) 書評家で近畿大学で教鞭をとる江南亜美子さんに会えるときは先生の著名の入った本を片っ端から読んだ。

 何年も放置していた村上春樹の『若い読者の

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死ぬまでずっと-『ゆれる』TK(2023年)

死ぬまでずっと-『ゆれる』TK(2023年)

 アニメ『チェンソーマン』第8話エンディング「first death」と『東京喰種』の主題歌「unravel」。
 2月、打ちのめされた私は、この2曲以外顔も知らない「TKfrom凛として時雨」のファンクラブに入った。
 同時に春のツアーに申し込んで当選した。5月には会える。

 この本に出てくる知らない単語はすべて意味を調べて読んだ。
 途中で出てくる楽曲も全部YouTubeで聞いた。どちらも普

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物語を生きたくなるだろう-『箱の中のあなた』山川方夫(2022年刊行/1959-65年作)

物語を生きたくなるだろう-『箱の中のあなた』山川方夫(2022年刊行/1959-65年作)

 子どもの頃、星新一を浴びるほど読んだ。一編がすぐ終わるのがどんどん読めているようでうれしかった。エヌ氏だとかエス氏だとか、頭文字だけにされたカタカナ表記の登場人物は、小学生の私には外国人よりも未来人に思えた。
 あれが私の読書の始まりだった。

 だから、ショートショートの本と聞いて、すぐに思い浮かんだのは星新一だった。どの時代か、どの系統か、誰と親しいか、まったく知らない作家・山川方夫を知れて

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あなたには見えない人生の前提-『アンソーシャル ディスタンス』金原ひとみ(2021年)

あなたには見えない人生の前提-『アンソーシャル ディスタンス』金原ひとみ(2021年)

 同じ作家を何冊か読んでると、その作家が無意識にこの世界をどう見てるかが読み取れるときがあります。

「世界をどう見てるか」もだし、
「世界をどんな前提として生きているか」もです。

 たとえば江國香織は世界を(人よりも)美しいものように見えているし、小川洋子は(人よりも)さまざまなものの重なりが微細に見えているし、金原ひとみは(人よりも)絶望と恋愛の目で見ています。

「人よりも」ってところがポ

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世界の半分のあなたたち-『永遠も半ばを過ぎて』中島らも

世界の半分のあなたたち-『永遠も半ばを過ぎて』中島らも

 現代男性作家を読むことはめったにない。
 それに危惧を感じて中村文則の『掏摸』や吉田修一の『悪人』を買ったこともあった。どちらも最高に好きな小説になったけれど、習慣的に読む対象にはならなかった。
 なぜなら男性作家は私からもっとも離れた存在だからだ。私は自分を弱いと思っており、読書に居場所と共感と自浄作用を求めている。男性作家ではその対象になり得ない。
 それに私は男性に冷たすぎるし、警戒しすぎ

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