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本とか映画とか美術館とか

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書かないと忘れちゃう、よかった作品のこと。
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産前産後読んでよかった本5冊(ステレオタイプが少なかったり、信頼できたり、心に響いたり)

産前産後読んでよかった本5冊(ステレオタイプが少なかったり、信頼できたり、心に響いたり)

エビデンス・ベースな本が好き
母性神話はじめ、性別へのステレオタイプにとても懐疑的なほう
なので、読んでみてモヤる本にもけっこう出会った妊娠~産後期。

そのなかで、読んでよかった本5冊をまとめてみました。
はじめの3冊は主に実践面で、あとの2冊は気持ちのうえで、読んでよかったもの。

あとの2冊は、産後読んでよかったものではあるものの、出産しない世界線の私も大好きだろうなと思う本です。

米国最

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ベトナムの若きオタクたちと、ゴスロリの思い出

ベトナムの若きオタクたちと、ゴスロリの思い出

ベトナム・ホーチミンに来て半年になる。

平均年齢33.6歳。日本より15歳近く若いこの国は、賑やかだ。バイクのクラクション、音漏れを気にしない自宅カラオケ、柔らかな発音のベトナム語の絶え間ないおしゃべり。平均年齢より2歳上の私は、この街では少し年寄り気分だ。

ベトナムの若者の間では、日本の漫画やアニメが人気だ。街中でドラえもんのグッズをよく見るし、日本でも人気のバスケットボール漫画『SLAM

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大人の確信と、ミコノス島──2人の小説家志望の人に会って、村上春樹のエッセイを読み返した話

大人の確信と、ミコノス島──2人の小説家志望の人に会って、村上春樹のエッセイを読み返した話

どういうわけか、今週は本気で小説家をめざしている人に、2人も会った。

週末のコーヒー屋と、平日朝のコワーキングスペース。別々の場所の関係のない2人だ。これまでもそういう人に会ったことがないわけではないけれど、今週の2人はレベルが違う。かなり本気だ。

今の時代、小説家になるには、SNSで先にバズるか、賞をとるからしい。自分の書きたいものを書きたいからと、2人とも作品を書き上げ、賞に応募しているの

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ただ、あなたの表現を聴く──映画「地蔵とリビドー」とやまなみ工房の展示

ただ、あなたの表現を聴く──映画「地蔵とリビドー」とやまなみ工房の展示

久しぶりに憧れる人に、出会った。

知的や精神、身体に障害をもつ方々がアート作品をつくっている「やまなみ工房」という施設の施設長、山下さんという人だ。

同僚がここがすごいと見つけてきたのがきっかけで、この施設を撮った「地蔵とリビドー」という短編映画を見た。

ホームページを見るのが一番早いけれど、やまなみ工房の人たちの作品は、すごい。

今も渋谷で一部の作品が展示されている
個性(という言葉では

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『怪物』をホーチミンで見る

『怪物』をホーチミンで見る

『怪物』が、ベトナムで公開していた。

是枝監督×坂本裕二さん脚本、絶対見たいと思っていたけれど、配信待ちかなと思っていた。

だから、映画館のサイトであの赤いポスターに気づいたときは、嬉しかった。
英題が“Monster”で印象が違いすぎて(パニック映画みたいに思えるし、浦沢直樹を思い出さずにはいられないし)、一瞬見逃したけど。
ベトナム語・英語字幕の日本語音声。日本の映画館とほぼ変わらない、映

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「悲惨なアフリカを欧米人が助けにくる話はうんざりだ」

「悲惨なアフリカを欧米人が助けにくる話はうんざりだ」

コンゴ民主共和国が舞台の映画『わたしは、幸福(フェリシテ)』の公開記念イベント。

登壇されていたシネマアフリカという団体の方のお話が、とても印象に残っています。

「悲惨なアフリカを欧米人が助けにくる話はうんざりだ」
あるアフリカの映画監督がこう言っていました。

「悲惨なアフリカを欧米人が助けにくる話はうんざりだ」
そのうんざりするようなストーリーの向こう側には、どんな人の顔が

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旅の適齢期

旅の適齢期

沢木耕太郎さんの『旅する力』という本に、「旅の適齢期」という言葉がでてきます。

経験と未経験のバランスがとれた、26歳という年齢が「旅の適齢期」かもしれないと。

未経験ということ、経験していないということは、新しいことに遭遇して興奮し、感動できるということである

この本を読んだ当時、ちょうど26歳だった私は、もう適齢期が終わってしまうと、少し不安になりました。

いまのように、旅に感動で

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ささやかな美しい日々を書き残すこと(『コルシア書店の仲間たち』読書日記)

ささやかな美しい日々を書き残すこと(『コルシア書店の仲間たち』読書日記)

(※ネタバレあります)

読書は瞑想。

その言葉を思い出したのは、久しぶりに須賀敦子さんの本を読んだからでした。

ふと気づけばここ最近、知的好奇心でわくわくしたり、自分と照らし合わせてぐるぐる考えたりするような読書ばかりしていたようです。

読んだのは『コルシア書店の仲間たち』。

30歳のころから10年あまり、ミラノで暮らした須賀敦子さん。
舞台は、彼女がミラノで出会った、コルシア・デイ・セ

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ふたりでいると、呼吸ができるようになる(映画『最強のふたり』感想)

ふたりでいると、呼吸ができるようになる(映画『最強のふたり』感想)

『最強のふたり』を見た。

いい映画って、はじめのシーンから、これはいい映画だと感じさせると思う。

川沿いの道を車でとばす、若い黒人の男性。
助手席には、ひげもじゃのは初老の白人男性。

いかにも訳ありだ。

猛スピードで、ほかの車の間をすり抜けるその車は、警察に追われる。

助手席の男性は、運転する男性に脅されているのか、もしくは常識人として彼をたしなめるのかと思いきや、なんだか楽

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「苦しさ」と「ゆるさ」の共有で、人はオンラインの限界を越えられる?

「苦しさ」と「ゆるさ」の共有で、人はオンラインの限界を越えられる?

急に日常になった在宅勤務。最近、zoomを使わない日がない。

人間は思ったよりも、「視覚」と「聴覚」以外でコミュニケーションをとっているのだなと思う。

対面だと楽しく終えられる2時間のミーティングも、オンラインだとぐったりする。

小さな相槌や息遣い、身体の姿勢や仕草から感じられるテンション。
そういう普段は自然と認識するものを、どうにか四角形の画面のなかから、拾おうとしているようだ。

みん

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ハラリの記事を読んで、目が覚めた話

ハラリの記事を読んで、目が覚めた話

あぁ、今日も感染者数が増えてる……

買い出しに行くと、近所の商店街は、人はたくさんいるし。みんなで飲んでるバーもある。いっそのこと、取り締まらないと、ダメなんじゃない?

海外渡航者から感染。旅好きで国境を行き来できることに、喜びを感じてきた人生だったけど。今みたいにグローバル化していなかったら、こんなこと起こらなかったかも。

日々コロナのニュースを見るなかで、無意識にそんなことを考えている自

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ぬくぬくとこたつでくつろぐようなコミュニケーションをして早10年

ぬくぬくとこたつでくつろぐようなコミュニケーションをして早10年

「なんかよくわかんないけど、3人が楽しそうなのが、いいと思うんだよね。へんなモチベーションがあって、誰にも頼まれてないのに、ずっと続いてるのも」

大学4年生のころから10年以上、同級生3人でSalmonsというユニットをつくって、週末は一緒になにかしている。

途中途切れたこともあったし、2人になった時期もあったし、物理的距離はだいたい遠かった(石巻、東京、愛知、トルコにカメルーン!)し、仕事も

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本の鮮度(2021/1/2)

本の鮮度(2021/1/2)

いい本は、何百年経っても、読まれ続け、古びることはない。

本というとものは、食材のように、新鮮なほうがいいわけではないし。
ファッションのように、流行りにのったほうがいいわけでもない(流行りにのった本は存在するけれど、流行り廃り関係ない普遍的な内容のもののほうがよいという認識は、まだありそうだ)。

でも、個人にとって、「本の鮮度」のようなものはあると思う。

年末年始は、一つ文章を書こうと思っ

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「いつか見たことあるもの」と「目に見えないもの」がそこにあるーーピーター・ドイグ展へ

「いつか見たことあるもの」と「目に見えないもの」がそこにあるーーピーター・ドイグ展へ

コロナになってからはじめての美術館へ。
東京国立近代美術館のピーター・ドイグ展。

久しぶりの生の絵。
大きいサイズだったこともあってか、目の前に広がる色に、息をのみました。
本当はマスクをとって、色の前で深呼吸したかった!

この絵の空とか。一瞬でどこか旅に連れていかれたかんじがしました。
小津安二郎の『東京物語』の「計算された静けさ」にインスパイアされて描いた絵だそうです。

たしかに、静けさ

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