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城山文庫の書棚から077『人生は選べる』篠原 匡 朝日新聞出版 2024
ハッシャダイソーシャルは、全国の高校や児童養護施設、少年院などの若者に、無償でキャリア教育を提供している一般社団法人。代表の勝山は「選択格差」が日本の若者の進学を巡る差を生み出していると指摘する。もう一人の代表・三浦も同じ20代の若者だ。
勝山は自身が少年院を出た札付きのワルだった。付き合っていた彼女の兄から手を差し伸べられ更生する。相棒の三浦は教師を目指したが高一でいじめにあう。「周りは変わら
城山文庫の書棚から076『言葉は選ぶためにある』田中優子 青土社 2024
法政大学前総長、江戸研究家の田中優子さんは最近ずっと怒っている。2022年から23年に書かれた連載コラムを収めた本書で、その怒りは家父長制や女性蔑視、排外主義などに対して向けられる。いずれも旧態依然とした世の中の価値観、昭和の残滓だ。
抑制した筆致で綴られるそれらの怒りは、ヒステリックでないが故に余計に鋭く読む者に突き刺さる。激しい言葉を選びながらも品性を失わない静かな怒りの意思表示。差別や価値
城山文庫の書棚から071『東京の創発的アーバニズム』ホルヘ・アルザマン Studiolab 学芸出版社 2022
慶應大学で教鞭を取るスペイン人都市研究者・建築家が東京の都市を解析しプロトタイプを浮かび上がらせる試み。横丁・雑居ビル・高架下建築・暗渠ストリートそして低層密集地域という5つの都市パターンで東京を切り取る。
著者が提唱する創発的アーバニズムとは、偶発性と切実な必要性から生まれる都市のあり方。森ビルや三井不動産をはじめとする大企業が主導する既存のアーバニズムとの違いは、小規模で多様な関係者による地域