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世界史よもやま話

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毒にも薬にもならない歴史雑学集。ときどき古典文学。
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頼まれて外国で即位した国王2選

頼まれて外国で即位した国王2選

新年度になりました。
このタイミングで、PTAや自治会の役員を引き受けたなんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中には、「どうしてもと頼まれて…」なんて場合もあるかもしれませんね。

今回は、19〜20世紀のヨーロッパで 頼まれて仕方なく(?)王様になった人達のお話です。

①ゲオルギオス1世(ギリシャ国王)1863年3月末のデンマーク。
当時海軍士官学校に通っていたヴィルヘルムは、お弁当の

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ゴーゴリ『降誕祭の前夜』に見る、ウクライナのクリスマス

ゴーゴリ『降誕祭の前夜』に見る、ウクライナのクリスマス

ニコライ・ゴーゴリという作家をご存知でしょうか。

ロシア文学を代表する作家の1人で、社会の腐敗や人間の滑稽さを諷刺する作品を残しています。
日本では芥川龍之介らが影響を受けたと言われています。

今回は、そんなゴーゴリの初期短編集『ディカーニカ 近郷夜話』に収められた『降誕祭の前夜』という話を取り上げます。

こちらはクリスマス・イブのディカーニカ村(ウクライナ)を舞台にした話で、日本人には馴染

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ロマノフ家のラム・ババ

ロマノフ家のラム・ババ

「ラム・ババ」あるいは「ババ・オ・ロム」と呼ばれる洋菓子をご存知でしょうか。
甘い発酵パンに、ラム酒風味を効かせたシロップを浸み込ませて作る大人向けのお菓子で、日本では「サバラン」と呼ばれることが多いです。
(サバランの名前の由来は後ほど)

ラム・ババは19世紀にパリのパティシエが作ったものが人気を博し、世界中に広まったと言われています。

さて、そんなラム・ババがロシア皇帝の一族であるロマノフ

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ハプスブルク家の晩餐会メニューから見る、華麗なる歴史

ハプスブルク家の晩餐会メニューから見る、華麗なる歴史


はじめに今回の主役は、フランツ・ヨーゼフ1世─シシィこと皇后エリザベートの夫にあたる人物です。

68年の長きに渡ってオーストリア皇帝を務め、ハプスブルク王朝が終わる2年前に亡くなりました。
いわばハプスブルク王朝の黄昏を生きた人物ですが、その食卓をのぞいてみると、かの王朝の華麗なる歴史が見えてきます。



本記事では、Royal Menusの情報を元に 1869年3月11日 ホーフブルク宮

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シェイクスピア劇にも登場した、美味しい恋の媚薬

シェイクスピア劇にも登場した、美味しい恋の媚薬

ちょっとセクシュアルな表現を含みますので、苦手な方はお気をつけください。

タイトルをご覧になって、イギリス文学に詳しい方は、『夏の夜の夢』に登場する 妖精パックが使ったサンシキスミレ(パンジー)を思い浮かべたかもしれません。

しかし、今回ご紹介するのはもっと身近な食材です。
寒い冬、アッツアツにふかして食べると美味しいこれ。

サツマイモ。

煮てよし、焼いてよし、揚げてもよし、お菓子にしても

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【ショート】私はオランダのうさぎです

【ショート】私はオランダのうさぎです

明けましておめでとうございます。

今週は記事の投稿を休む予定でしたが、12年に一度しか書けない話題を思い出したので突貫工事で記事を書きました。

駅伝見ない派の方、お笑いも飽きたなあという方、お正月のご予定がひと段落した方、お付き合い頂ければ嬉しいです。

◇◇◇

1806年、オランダ。
10年以上国王不在だったこの国で、新しい王様の即位式が執り行われていました。

新国王の名はルイ・ボナパル

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ハプスブルク家のクリスマスツリー

ハプスブルク家のクリスマスツリー

トップ画像は、Wikimedia Commonsよりお借りした ウィーン・シェーンブルン宮殿のクリスマス風景です。
(撮影者: Simon Matzinger, CC BY 3.0)

真ん中にクリスマスツリーが見えるので、すぐにその季節の風景と分かりますね。
しかし、今では当たり前に思える「クリスマスにはツリーを飾る」という風習、昔のオーストリアには存在しませんでした。

今回は、オーストリアに

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マリア・テレジア一家の12月

マリア・テレジア一家の12月

今回は、トップ画像にも使用したこちらの絵画の話をします。
(荒い画像で申し訳ありません)



こちらは 最近まで「女帝マリア・テレジア一家が"聖ニコラウスの日"を祝う様子を描いた絵」と言われていました。

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ざっと解説すると

中央・青いドレスのお母さんがマリア・テレジア。
その右隣、暖炉の前でくつろいでいるのが女帝の夫フランツ1世。

そして女帝の左隣、お人形を手にニッコリしている

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【エッセイ】金色の衣をまといてラムの海に降り立ちし禁断の菓子を食す

【エッセイ】金色の衣をまといてラムの海に降り立ちし禁断の菓子を食す

11月某日。季節外れの陽気の中、私はある場所に向かっていた。

目指していたのは「湘南クリエイティブガトー 葦」。湘南地域に11店舗を構える、洋菓子店の老舗である。

ここでとあるケーキを買った。
今回は、そのケーキのお話。



買ったのはこちら。
「サバラン」という名で売られている。

ホームページの説明はこう。

そう、サバランとは、ラム酒シロップを染み込ませた形が基本の、何とも危険な香り

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オランダ国歌のふしぎ

オランダ国歌のふしぎ

突然ですがクイズです。
下はオランダ国歌の歌詞を日本語にしたものなのですが、一箇所 不自然な詞があります。
それはどこでしょう?
(翻訳が下手な点は除きます)

お気づきになりましたか?
そう、由緒正しきオランダの家系と称しておきながら、スペイン国王に忠誠を誓ってきたと書かれていますね。

今回はこの歌詞の謎を紐解いていきます。

歌詞の背景主人公・ヴィルヘルムス

まず最初に出てくる「ナッサウエ

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テストに出ない世界史 | ロシア皇帝、退位後の愛読書

テストに出ない世界史 | ロシア皇帝、退位後の愛読書

読書の秋到来!という事で、今回はロマノフ朝最後の皇帝・ニコライ2世(トップ画像)の日記を元に、彼が廃位、抑留されていた時代に読んでいた本をご紹介します。

長い記事ですが、元皇帝が読んでいた本のタイトルだけサクッと知りたい方は、目次に目を通して頂ければ十分です。

本の大まかな内容や、その本を読んでいた背景も知りたいという方は、目次以降もご覧になってみて下さい。

はじめに - 廃位、抑留までの経

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テストに出ない世界史 | ロシア皇帝の夏休み

テストに出ない世界史 | ロシア皇帝の夏休み

今回は、およそ150年前にロシア帝国の皇帝だった人物の夏休みの姿をご紹介します。

主人公はこの方、ロシア皇帝アレクサンドル3世。
まずはプロフィールを簡単にご紹介します。

巨体に立派なヒゲで、怖そうな人ですよね…



そんな彼は、夏になると妻マリヤの出身国であるデンマークに行くのが恒例でした。
(マリヤはデンマーク国王の娘)

実は19世紀末、デンマークでは国王夫妻が毎年夏に親戚一同の集ま

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【ショート】今すぐできる!イギリス王室に学ぶ遅刻防止術

【ショート】今すぐできる!イギリス王室に学ぶ遅刻防止術

この春就職、異動、入園、入学等で新しい環境に飛び込んだ方。
新しいスケジュールにはもう慣れましたか?

そもそも 日本人は時間にキッチリしてるイメージですが、どうやらイギリス王室でも時間に遅れないよう工夫を凝らしている方々がいらっしゃったようです。

今回は、ウィンザー城のキッチン、そして過去のロイヤルファミリー2人のケースを見てみます。
すぐマネできるものから、難易度お高めなものまで…ではどうぞ

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テストに出ない世界史 | 外国で即位した君主3人の治世と語学問題

テストに出ない世界史 | 外国で即位した君主3人の治世と語学問題

以前書いたこちらの記事に、思いの外反響を頂けた事に気を良くしまして…

今度は王様編を書いてみました。

しかしながら、外国の君主になるという事は、嫁入りよりもずっと複雑な経緯がある訳で。
以前の記事よりだいぶ長くなりました。

(1人ずつ記事を分ければよかった…)

目次を付けますので、興味のある所だけ読んで頂くのもアリだと思います。

ではどうぞ。

1.モラハラ夫 - ジョージ1世(イギリス

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