あまね そう

歌人集団「かばん」会員(2016年度副編集人)/歌集『2月31日の空』kindleスト…

あまね そう

歌人集団「かばん」会員(2016年度副編集人)/歌集『2月31日の空』kindleストアにて販売中!/Twitterは @AmaneSo31 /第51回 短歌研究新人賞 最終選考通過/「スキ」を押すと、あまねの短歌一首がランダムに表示されます

記事一覧

【不思議な体験1】LEDのUFO

昨日、千歳から羽田に向かう機内で、眼下に広がる夜景を見ていた。電球の拡散する光とは明らかに違う、凝縮されたLEDの光の固まりが煌々としていた。それらを見ながら、10…

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型を崩す~破調についての雑感~

短歌のルールは「57577」のリズムで作る(あるいは読む)ことくらいしか無い。だからこそ、このリズムは短歌の生命線である。 では破調の短歌を短歌と呼んでいいのか…

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足立区のこびと

僕の自宅からは、羽田を離陸したばかりの飛行機が見える。北方に向かう航路になっているようで、時間によっては一定間隔で何機も通過していく。旅も飛行機も好きな僕は、憧…

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起きられぬ朝を乗り切る糧(短歌1首)

改元による大型連休が明けた今日。満員電車の乗り方を忘れてしまったようなぎこちない位置どりで、なんとなくくたびれ感のある人たちと朝の山手線に揺られていた。急病人救…

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いなくなった金魚の顛末記

「キンキンがいない」 早朝、娘が僕を起こしにきた。キンキンとは娘が金魚すくいでもらってきた和金で、うちの唯一のペットだ。 (そんなばかなことがあるか……) と思…

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レモン・ビバレッジ(短歌1首)

昨日出かけた、国営ひたち海浜公園(茨城県)で「生搾りレモンスカッシュ」を飲んだ。 半分に切って絞ったレモンがそのまま入っていて、若干の甘みはあったものの、ほぼソ…

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頭蓋を開く術を知らない(短歌1首)

先月中旬頃、やたらと倦怠感の強い日が続いた。年度初めのオーバーワークと気候や気圧の変化が原因だったのだろう。まず日々の備えとして「頭痛ーる」というアプリをiPhone…

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ケーキの歌(短歌)

「太ってもいいよケーキを食べようね」呼吸器つけた妻にほほえむ  あまねそう これは8年くらい前に「ダ・ヴィンチ」の“短歌ください”で、穂村弘さんに選んでもらった…

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Night Walker(短歌8首)

「かばん2018年12月号」に掲載の8首を転載する(もともとそれまでに発表した歌の中から抜粋して再校正したものになる)。 Night Walker あまね そう 自らの体の形を感じ…

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歌集の電子書籍出版についての考察

2013年、歌集『2月31日の空』をキンドル版のみで出版した。当時まだメジャーとはいえなかった電子書籍での出版には不安も多かった。おおむね好意的に受け入れてもらえたが…

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平成最後の日に美智子さまの短歌にふれる

毎年「歌会始」という行事があるように、今でも皇族方は短歌を詠み続けている。その中でも特に目をひくのが皇后美智子さまの御歌である。失礼な言い方かもしれないが、図抜…

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【書評】ねむらない樹vol.1

現代短歌の現在を知るためには最良のムックである『ねむらない樹』。その書評を「かばん2018年11月号」より、以下転載する。 「短歌ヴァーサス」から「ねむらない樹」へ …

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歌集『2月31日の空』より自選20首

noteを作成して初の記事になります。自己紹介として、kindle版歌集『2月31日の空』から、かばん2013年12月号に掲載した自選20首を掲載します。 ■ 2月31日の空(抄録) …

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【不思議な体験1】LEDのUFO

【不思議な体験1】LEDのUFO

昨日、千歳から羽田に向かう機内で、眼下に広がる夜景を見ていた。電球の拡散する光とは明らかに違う、凝縮されたLEDの光の固まりが煌々としていた。それらを見ながら、10代の頃に起こった、ある不思議な出来事を思い出していた。

このLEDの光。いちばん最初に見たのは、実は「夢の中」なのである。

高校生くらいの時だったと思う。

僕は夢の中で、自分のベッドに仰向けになり天井を見ていた。なぜか天井はガラス

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型を崩す~破調についての雑感~

型を崩す~破調についての雑感~

短歌のルールは「57577」のリズムで作る(あるいは読む)ことくらいしか無い。だからこそ、このリズムは短歌の生命線である。

では破調の短歌を短歌と呼んでいいのかどうか。

結論から言えば、作者が「短歌である」として詠んでいるのであれば、それは短歌である。短歌のルールの上で読まれることを期待しているのだから、元々の「57577」のリズムをどのように崩しているのかがポイントになるだけだ。

一句目の

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足立区のこびと

足立区のこびと

僕の自宅からは、羽田を離陸したばかりの飛行機が見える。北方に向かう航路になっているようで、時間によっては一定間隔で何機も通過していく。旅も飛行機も好きな僕は、憧れをもってそれらを見上げていた。

この眺めるだけだった飛行機に自分で乗るようになったのは、札幌出張に行くようになった昨年からだ。

左の窓際の席に座ると、自宅付近が見える。さすがに目視では自宅を判別できないが、位置ははっきり分かる。普段生

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起きられぬ朝を乗り切る糧(短歌1首)

改元による大型連休が明けた今日。満員電車の乗り方を忘れてしまったようなぎこちない位置どりで、なんとなくくたびれ感のある人たちと朝の山手線に揺られていた。急病人救護のための遅延も続発している。

連休前には「長すぎる」「やることがない」という困惑が聞かれ、いざ休みが終わるとなると「仕事に行きたくない」という声が溢れる。つくづく休み下手な国民性だと思う。

と言っている自分もそうだ。いざ仕事に入れど、

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いなくなった金魚の顛末記

いなくなった金魚の顛末記

「キンキンがいない」

早朝、娘が僕を起こしにきた。キンキンとは娘が金魚すくいでもらってきた和金で、うちの唯一のペットだ。

(そんなばかなことがあるか……)

と思いつつリビングの水槽を見ると、確かにどこにもいない。岩のトンネルの天井に浮かんでいないか、底の石に埋もれていないか。いろいろな可能性を考えて探したが、確かにどこにもいない。娘の言う通りキンキンは水槽から姿を消してしまっていた。

そう

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レモン・ビバレッジ(短歌1首)

レモン・ビバレッジ(短歌1首)

昨日出かけた、国営ひたち海浜公園(茨城県)で「生搾りレモンスカッシュ」を飲んだ。

半分に切って絞ったレモンがそのまま入っていて、若干の甘みはあったものの、ほぼソーダ水で割っただけの状態。頼めばガムシロップがつくのだが、甘ったるくなるのが嫌だったのでそのまま飲んだ。レモンの皮の農薬が気になりつつも、レモン果汁の独特の酸味は体だけでなく気分もスッキリさせてくれるようで心地がよい。キャンピングカーを改

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頭蓋を開く術を知らない(短歌1首)

先月中旬頃、やたらと倦怠感の強い日が続いた。年度初めのオーバーワークと気候や気圧の変化が原因だったのだろう。まず日々の備えとして「頭痛ーる」というアプリをiPhoneに入れてみた。「気圧の低下を知り、だるくなることを想定内にする」、それだけのことで心持ち少し楽になった。

曇天の鈍き痛みに揺られつつ頭蓋を開く術を知らない  あまねそう

【短歌初出】
・かばん2018年6月号

ケーキの歌(短歌)

「太ってもいいよケーキを食べようね」呼吸器つけた妻にほほえむ  あまねそう

これは8年くらい前に「ダ・ヴィンチ」の“短歌ください”で、穂村弘さんに選んでもらった一首だ。たしかテーマは「ケーキ」だったと思う。

普段僕が歌を詠む時には、その時の風景や感情の動き、記憶等をローレンツ変換してしまうのだが、この時は「妻」がまだ「彼女」だったという事以外は特に何の手も入れずそのまま詠んだ。僕に結婚を決意さ

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Night Walker(短歌8首)

「かばん2018年12月号」に掲載の8首を転載する(もともとそれまでに発表した歌の中から抜粋して再校正したものになる)。

Night Walker あまね そう

自らの体の形を感じおりぬるき豪雨に打たれ続けて
   ※体=たい

生ぬるき夜の湿り気 信号は音も立てずに青へと変わる

街灯の多き街なり我の影幾重に伸びて雨に濡れおり

県道の警官模型の黒目から飛び出すカール・オルフの音符

川沿い

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歌集の電子書籍出版についての考察

2013年、歌集『2月31日の空』をキンドル版のみで出版した。当時まだメジャーとはいえなかった電子書籍での出版には不安も多かった。おおむね好意的に受け入れてもらえたが、一方で「歌集とは認められない」という風潮もあり、戸惑ったことを覚えている。

以下、「かばん2013年12月号」の本歌集の特集に寄せた「記録」を掲載する。あれからすでに6年が過ぎており状況は変わりつつあるが、一つの冒険の記録として提

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平成最後の日に美智子さまの短歌にふれる

毎年「歌会始」という行事があるように、今でも皇族方は短歌を詠み続けている。その中でも特に目をひくのが皇后美智子さまの御歌である。失礼な言い方かもしれないが、図抜けてうまい。五島美代子に厳しく指導を受けられていたとの話もあり、それが活きた歌につながっているのだろう。

■被災地に寄り添う歌

平成18年(2006年)の歌会始には、次の一首を寄せられている。阪神淡路大震災の復興を詠んだもので、歌碑にも

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【書評】ねむらない樹vol.1

現代短歌の現在を知るためには最良のムックである『ねむらない樹』。その書評を「かばん2018年11月号」より、以下転載する。

「短歌ヴァーサス」から「ねむらない樹」へ

 「短歌ヴァーサス」を思い出した人も多いのではないか、と思う。「短歌ヴァーサス」とは、荻原裕幸責任編集で刊行されていたムックである(風媒社より季刊にて全11号刊行)。既刊の総合誌とは一線を画す内容で、創刊号の特集が「枡野浩一の短歌

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歌集『2月31日の空』より自選20首

歌集『2月31日の空』より自選20首

noteを作成して初の記事になります。自己紹介として、kindle版歌集『2月31日の空』から、かばん2013年12月号に掲載した自選20首を掲載します。

■ 2月31日の空(抄録)

てつぼうに手のとどかない子のために広がっている青空がある

二十秒ごとに「ね」という先生の「ね」のリズムにて解く化学式

フロイトとユングの違い説く友の首から生える一本のヒゲ

日本史のノートに線をひく少女よ君に

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