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見えない敵と戦う術『エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来』レビュー〜

見えない敵と戦う術『エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来』レビュー〜

「エネルギー」この誰もが知っている言葉。だがその概念を説明しろと言われて容易に答えられる人は少ないのではないだろうか?この本は、エネルギーに対する考え方とその未来をとても分かりやすく、しかも今までにはない新しい視座から教えてくれる。恐らく読んだ人の大半はエネルギーの概念を変えられるに違いない。

まず著者が考えるエネルギー革命は、一般に言われるエネルギー革命と全く違った切り口である。一般的なエネル

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邪よ永遠に〜『セックスロボットと人造肉 (テクノロジーは性、食、生、死を“征服"できるか)』レビュー〜

邪よ永遠に〜『セックスロボットと人造肉 (テクノロジーは性、食、生、死を“征服"できるか)』レビュー〜

テクノロジーの進歩が凄まじい。最近のそれはAI技術の急速な進歩によるところも大きいようだ。例えばchatGPT、例えば生成AI画像、その他自動翻訳や金融予想まで様々な分野でAIが利用されている。またAI以外でも、様々なテクノロジーが日進月歩で進化する。それは人類の歴史において常に行われてきた言わば当たり前のこだ。しかしそのテクノロジーが問題になることもある。

それはこんな分野で起こりがちだ。セッ

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同じところをぐるぐる回る遊び〜『<責任>の生成ー中動態と当事者研究』レビュー〜

同じところをぐるぐる回る遊び〜『<責任>の生成ー中動態と当事者研究』レビュー〜

突然だが、サーキット走行というものをご存知だろうか?文字通りサーキットを車やバイクで走る事だ。僕は趣味でオートバイでサーキットを走っていた。過去形なのは、サーキットで怪我をしてしまい現在はサーキット走行自粛中だからだ。それはさておき、このサーキット走行の事を人に話をすると、概ね同じ様な反応が返ってくる。まず、「レースをやってるの?」と聞かれる。「いや、レースではなくただサーキットをぐるぐる走って回

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村上龍は何故モテる?〜『ユーチューバー』レビュー 〜

村上龍は何故モテる?〜『ユーチューバー』レビュー 〜

僕が初めて村上龍の存在を知ったのはテレビだった。「Ryu‘s Bar 気ままにいい夜」という、村上龍がホストを務める番組で見た記憶が最初だ。 この番組は1987年から1991年にかけて放送され、綺麗なアシスタントとゲスト、そしてホストの村上龍がトークをするという内容だ。当時高校生の僕が村上龍に抱いた第一印象は、なんでこんなに顔が大きくて(不細工ではないと思うが)そんなに格好良くない男がこんなにモテ

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暇を潰して潰されて(『暇と退屈の倫理学』レビュー)

暇を潰して潰されて(『暇と退屈の倫理学』レビュー)

人間は、退屈が嫌いだ。退屈から逃れるためなら進んでワーカホリックになったり、政治革命に命を投げ出して死んだり、不幸にすらなってしまう。そんな退屈から我々はどうやって逃れるのか?そのヒントがこの本には書かれている。この本の著者である國分功一郎氏は、哲学者でありフランス現代思想の研究者である。よってこの本『暇と退屈の倫理学』は哲学的なアプローチで退屈について論じている。

筆者は、退屈を埋めるのは自分

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後藤 ひとりはロックなのか?(アニメ『ぼっち・ざ・ろっく! 』レビュー)

後藤 ひとりはロックなのか?(アニメ『ぼっち・ざ・ろっく! 』レビュー)

ある日7歳の娘に質問された。「パパはどうしてギターを弾きたいと思ったの?」と。僕は「○○ちゃんも、あの歌が歌いたいとか、あの曲が弾きたいとか思った事ない?パパもそんなふうに思ったからだよ。」と、言い終わるか終わらないかに脳内で「娘に嘘をつく気か!?」という声がした。だから「でもそれは2番目の理由で、1番目の理由は人気者になりたかったからだよ!」と言い直した。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく! 』の主人公

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死なないとダメ?(「東京卍リベンジャーズ」レビュー)

死なないとダメ?(「東京卍リベンジャーズ」レビュー)

「なんでもっと早く言わないんだよ?」「なんで言われたことしか出来ないんだよ?」「この仕事の目的分かってんの?」。部下を持つ人であれば一度は、いや何度も、口に出すか出さないかは別として、思ったことがあるセリフではないだろうか?私もそんな一人なのだが・・・。そんなことを常日頃思っている人に漫画『東京卍リベンジャーズ』(以下「東リべ」)をオススメしたい。

なぜオススメなのかをお話する前に、前述のような

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大林宣彦のイリュージョン(映画『青春デンデケデケデケ』レビュー)

大林宣彦のイリュージョン(映画『青春デンデケデケデケ』レビュー)

私は高校生の頃、軽音楽部だった。今思えば、激しく勘違いをしていた時期で我ながら笑える。なにを勘違いしていたかと言えば、皆が経験していることだとは思うが、どう低く見積もっても、自分は格好良いという自己評価が、世間の人の評価の100倍位あった気がする。バンドをやろうなんて人間は、自己顕示欲が強く、マトモじゃないことは言わずもがなだが、思い返すと恥ずかしい思い出ばかりだ。まさに現実を直視せず、夢の中を生

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『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 春名 幹男 を読むための参考に

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 春名 幹男 を読むための参考に

これは、本の感想ではありません。春名 幹男の著書『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 は、Kindleで所要時間11時間11分の大著です。自分が読むにあたって、登場人物があまりに多く覚えきれなかったこと、さらに外国人の名前や機関名が覚えられなかったために自作の相関図などを作りました。

せっかく良い本なので、自分のように名前が覚えられずに、途中挫折してしま人がいたらもったいないので、こちらを公

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調べてわかる事は真実か?(『ロッキード』レビュー)

調べてわかる事は真実か?(『ロッキード』レビュー)

私はgoogleで検索する時に自分に決めているルールがある。それは、1位だけじゃなく最低でも5位までは必ず見るということだ。当たり前の話だが、情報の出どころ(ソース)が1つでは間違えている可能性があるし、それどころか全くの嘘の場合も多いからだ。これは読書にも当てはまる。何かの事件について書かれている本を読むのであれば、1冊しか読まないのはダメだと思っている。最低でも2冊、興味深い事件であれば3冊以

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絶対にルールを守るアウトロー (小説「麻雀放浪記」レビュー)

絶対にルールを守るアウトロー (小説「麻雀放浪記」レビュー)

昭和50年代には2千万人いた麻雀人口が、2018年は580万人だそうだ。ゲームでやったことがあっても、リアルで麻雀牌(パイ)を握ってやったことがあるという人は、案外少ないんじゃないだろうか。今回紹介したい小説「麻雀放浪記」は、リアルの麻雀、それも賭け麻雀の世界の話だ。タイトルだけを見ると、リアル麻雀をやったことがない人が本書を読んでみようと思う人は少ないと思う。リアル麻雀のイメージが、タバコ臭い、

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『沢村忠に真空を飛ばせた男 ―昭和のプロモーター・野口修 評伝―』 細田昌志 を読むための参考に

『沢村忠に真空を飛ばせた男 ―昭和のプロモーター・野口修 評伝―』 細田昌志 を読むための参考に

細田昌志著『沢村忠に真空を飛ばせた男 ―昭和のプロモーター・野口修 評伝―』を読んだ。とても読み応えのある本だった。本書の前半部分、野口修の父親 野口進の章が、後に重要な鍵になってくるのであるが、登場人物が多く読み進めるのに苦労した。私みたいな人のために、ちょっとした図を作ってみた。

この本を読もうと思ったきっかけは、水道橋博士のYoutubeで紹介していたのを見たからだった。そこで私が興味を持

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『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』 スティーヴン グリーンブラット著  河野 純治 (訳) を読むための参考に

『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』 スティーヴン グリーンブラット著  河野 純治 (訳) を読むための参考に

『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』 スティーヴン グリーンブラット著  河野 純治 (訳) は、395ページの単行本です(今のところkindle版はありません)。こちらの本は、全米図書賞、ピュリッツァー賞といった名だたる賞を受賞した本です。なので、内容は素晴らしいのは折り紙付きなのですが、自分にはちょっと読みづらい本でした。

何が読みづらいのかと言うと、2つあります。1つは、登場人物が外国

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歯ごたえありすぎたーー書評『人工知能が「生命」になるとき』三宅洋一郎

歯ごたえありすぎたーー書評『人工知能が「生命」になるとき』三宅洋一郎

私がこの本を読もうと思ったきっかけは、株だ。去年の11月、株取引の口座を作り、僅かだがお金も入れた。だがいまだに一度も取引していない。なぜなら、何を買って良いか分からないからだ。どれも上がりそうな気がするし、どれも下がりそうな気がして買えないのだ。

そこで私は(誰もが考えることだと思うが)、この先IT革命のような世の中に圧倒的な変化をもたらすものは何だろうかと考えた。

やっぱAIでしょ。

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