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かわいい__ドルチェの想像摂取



グルマン、寝香水のラストノートが−3℃に混ざり合った。枕元を照らす枯れない花と彫刻に一目惚れした写真立て、読み掛けの絵本が重なり、苦さを飛ばして深みだけ身に纏う甘美なデザートタイムは毎日のプロローグ、口当たりが良い夢でしか会えなかった人と恋をする。
もしも〈冷凍保存〉できるなら?


昨晩、卵液に漬けておいたフレンチトーストは心ここにあらずで焦げて、蜂蜜とシナモンが染み渡り、桃色は褪めた。お気に入りのマグカップにはフルーツが繊細なタッチで描かれており、ロマンを感じる。
ガラスの2段ケーキスタンドは今や小物置きになって、白を基調とした部屋に新鮮味を加えた。泡のようなパールが丸く形作り時を刻み、目に見えぬ何かしらを妖精とうさぎが回るオルゴールなどに込めて飾り、その傍ら、引き出しを開けてみればビスケットやマカロンが入っているとの空想、ときめきも忘れずに守る。


しかし天気予報は〈飴のち粉砂糖〉で、いっその事、このままとろけてしまいたくとも、新しい傘の出番が来た。
魅惑のプリンアラモードはたまに食べるから飛びっ切りおいしく、満たされる。いずれ酸いも甘いも噛み分け……さて、普段と比べて丁寧に身支度をすれば、若干は愛せる自分になった。
それと相手に真っ直ぐな「好き」「ありがとう」を小まめに伝えられたら、より素敵だが、バレンタインデーに託そう。


メルヘンチックな詰め合わせかスイーツビュッフェを思い浮かべて、あたかも初デートへ行くように歩を進める。車の通り過ぎる音、タイヤはドーナツ、差すカヌレに雨粒がぽつぽつとトッピングされ、坂道を上り、珈琲の香ばしい匂いを辿ると路地裏にお菓子なカフェを見つけた。ちぐはぐだ、幻影だろうか。


おっと、早くバスの停留所に戻らなくては。
煎じ詰めた、そろそろ塩分が欲しくなる。
これからどこに向かうかは、内緒で。

(★dolce は音楽で好きな発想記号のひとつでもあります/ノンカロリーフィクション)




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