小鹿かの子

ふだんから空想しがちです。 田舎にひっそり住んでいます。95年うまれ。

小鹿かの子

ふだんから空想しがちです。 田舎にひっそり住んでいます。95年うまれ。

記事一覧

商店街の魔女 その1

町で唯一の飲み屋街のあたりに、半分さびれてしまったような商店街がある。流行りの辛麺屋があると思ったら、すぐそばに畳屋と古美術商が店を構えていたり、シニア世代向け…

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右手の人差し指の付け根から

右手の人差し指の付け根が、チリチリと痛むようになった。よく見ると、直径5ミリ程度の放射線状のシワがある。どうやらその中心点がチリチリと痛んでいるようだった。 こ…

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平日日記 誰かと住むということ

家族以外の人と同じ家に住むようになって、そろそろ半年が経とうとしている。家族だって他人だけど、家族は、物心つく前の何もできない私と過ごしてきてくれた歴史がある。…

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平日日記 植物万能薬

ソフォラリトルベイビーという小さい木が、毎日葉をハラハラ落とす。リスザルの小指の爪みたいな、小さな小さな葉だ。落ちた葉を卓上ちりとりで取っては捨て、また葉が落ち…

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わたしと(壊れかけの)コニカ

私が持っているフィルムカメラは、ボロボロのおんぼろコンパクトカメラだ。 ネットの中古で1万5千円。コニカミノルタがコニカとミノルタだった頃の、可愛いKonicaC35。 …

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言葉は転がり続け

簡単なことがきっかけで喧嘩になってしまう。 ほんの少しの言い回しの選択や、声のトーン、目線、手元の動き、呼びかけたタイミング、等々。 何でもない内容で、時によっ…

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平日日記 9月の終わり夏の終わり

6時20分起床。 膝下と腰と肘と手首をぐーんと伸ばして、勢いづけて起き上がる。隣で眠る同居人は、私の起きた気配に気が付いていない。 こそっと寝室を抜け出し、電気屋…

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たのしい生活

休みの日の朝に雨が降っているのも良いものだが、お洗濯日和だなあーと思えるときの方がなお良いと思う。 今週末はとにかくよく晴れた。 ベランダに1番近い木にヒヨドリ…

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よるは散歩

数週間前まで、夜遅くまで蝉がないていたけれど、ここ最近は秋の虫の声に入れ替わっている。空気も少しひんやりしている。 夕食と入浴を済ませ、寝る準備がだいたい終わっ…

小さな季節を見つけたら

8月31日。スマホの待ち受け画面を見て驚いた。もう8月が終わるのか。 1年のうちに、何度か「もう今年が終わっちゃうなあ。」と思うタイミングがある。 まずは年度末の3月…

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山裾の家にて

今住んでいる家は、すぐそばに山がある。ソファに座って外を眺めると、緑の斜面しか見えず、空は見えない。林縁部に、背の低い草本類が競うように伸び、濃い緑の風景が出来…

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すぐ辞めることをやめたい

なんでもすぐ投げ出してしまう。わたしのコンプレックスだ。 大学の頃はバイトをコロコロ変えた。どの職場に対しても、行きたくない気持ちが石みたいに積み重なって、その…

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恵比寿と夜のあんこ(よなよな/佐賀大学のそば)

角を曲がると、大抵ひょっこり恵比寿さまが座っておられる。愉快そうにふくふく笑って、まるで一切合切それでよいのだと仰っているようだ。 佐賀市内には820体以上もの恵…

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カレーノスタルジー(佐賀駅/カレーショップ南陽)

特別でも何でもなかったお店が、ふと気づいたら食べられなくなっている。ここ数年、こんなことが多いなと思います。 例えば大学時代の思い出のカレー店。薄暗く、お昼時が…

3

はじめてのウインナーコーヒー (福岡/大濠公園駅 珈琲フッコ)

あるあるだと思うのですが、ウインナーコーヒーって、ウインナーが煮えられて放り込まれたものだと勘違いしていました。 初めてウインナーコーヒーと出会い、ウインナーの…

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福岡/天神 TOKIO

パフェの語源はPerfectだと聞きました。真偽はともかく、とても納得。たしかに完璧な食べ物です。 TOKIOは福岡天神、イムズの地下1階にあるフルーツパーラーです。フレッ…

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商店街の魔女 その1

商店街の魔女 その1

町で唯一の飲み屋街のあたりに、半分さびれてしまったような商店街がある。流行りの辛麺屋があると思ったら、すぐそばに畳屋と古美術商が店を構えていたり、シニア世代向けの品揃えをしているブティックの向かいには、ブランドスニーカーの専門店がある。

私のアルバイト先は、この商店街の少し先にある焼き鳥屋である。店主が死ぬほど怖いため、辞めたいが、辞めると言う方が怖いということで、かれこれ3年間続けている。

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右手の人差し指の付け根から

右手の人差し指の付け根から

右手の人差し指の付け根が、チリチリと痛むようになった。よく見ると、直径5ミリ程度の放射線状のシワがある。どうやらその中心点がチリチリと痛んでいるようだった。

こんなシワあったかしらと思い、じっと手を見るが、元々こんなものだったような気もしてくる。何だかキモチワルイ感じがして、痛みとシワについては考えるのをやめようと思った。思ったが、チリチリと微弱な痛みは四六時中続き、利き手であることも相まってな

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平日日記 誰かと住むということ

平日日記 誰かと住むということ

家族以外の人と同じ家に住むようになって、そろそろ半年が経とうとしている。家族だって他人だけど、家族は、物心つく前の何もできない私と過ごしてきてくれた歴史がある。

そう考えると、今一緒に過ごしているあの人は、たかが5年程度の私しか知らない。意識もしっかりして、他人にこう見られたい、とある程度装うことが出来てから出会った、正真正銘の他人だ。他人だからこそ、大切にできるし、一方で雑に扱ってしまうことも

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平日日記 植物万能薬

ソフォラリトルベイビーという小さい木が、毎日葉をハラハラ落とす。リスザルの小指の爪みたいな、小さな小さな葉だ。落ちた葉を卓上ちりとりで取っては捨て、また葉が落ちては捨てを繰り返している。こんなに葉が落ちているのに、なぜか葉は生い茂っている。わたしが知らないあいだに新しい葉が出ては、古い葉と入れ替わっているのだろう。人間の細胞みたいに。

ひと月前には、葉ダニにやられて萎れていたけれど、四方八方に枝

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わたしと(壊れかけの)コニカ

わたしと(壊れかけの)コニカ

私が持っているフィルムカメラは、ボロボロのおんぼろコンパクトカメラだ。

ネットの中古で1万5千円。コニカミノルタがコニカとミノルタだった頃の、可愛いKonicaC35。

実物を見て買った方が良いと、色んなサイトに書かれていたけど、まあとりあえずこれくらいの値段なら、使えなくてもインテリアとして上々だろうと、よく考えもせず買った。

フィルムを入れるために裏蓋を開けると、何かの破片がパラリと出て

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言葉は転がり続け

言葉は転がり続け

簡単なことがきっかけで喧嘩になってしまう。

ほんの少しの言い回しの選択や、声のトーン、目線、手元の動き、呼びかけたタイミング、等々。

何でもない内容で、時によっては楽しい冗談になるような話なのに。今朝は、言い回しが悪かったみたいで、少しだけ諍いになった。

最近、こんなことが増えた。

長く一緒にいると、気を付けていても気遣いや遠慮がなくなってきているみたいだ。とても大切に、尊く思っていて、彼

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平日日記 9月の終わり夏の終わり

平日日記 9月の終わり夏の終わり

6時20分起床。

膝下と腰と肘と手首をぐーんと伸ばして、勢いづけて起き上がる。隣で眠る同居人は、私の起きた気配に気が付いていない。

こそっと寝室を抜け出し、電気屋のお兄さんに唆されて導入したウォーターサーバーの水を飲む。一晩でしおれた身体に水分が行き渡って、目が冴える。ベランダの窓を開けると、随分とひんやりした空気が部屋に流れ込んできた。11月みたいな空気だ。鈴虫が、本当に鈴みたいな声で鳴いて

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たのしい生活

たのしい生活

休みの日の朝に雨が降っているのも良いものだが、お洗濯日和だなあーと思えるときの方がなお良いと思う。

今週末はとにかくよく晴れた。

ベランダに1番近い木にヒヨドリがとまっていて、けたたましく鳴いているのを聞き目覚めた。カーテン越しに、外の明るさを感じる。

この数週間、土曜日に出勤する必要があり、週末に連続して休みを取れなかった。今週末は、久々の土曜日休みで、しかも三連休だった。目覚めた瞬間から

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よるは散歩

よるは散歩

数週間前まで、夜遅くまで蝉がないていたけれど、ここ最近は秋の虫の声に入れ替わっている。空気も少しひんやりしている。

夕食と入浴を済ませ、寝る準備がだいたい終わってから、恋人と散歩に出掛けるのが好きな時間だ。散歩の途中で、ふらっとコンビニやスーパーマーケットに寄り、購入したものを片手に、歩いたりベンチに座ったり。

前まで住んでいた福岡の家の近くには、那珂川という河川が流れていた。行政によって親水

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小さな季節を見つけたら

小さな季節を見つけたら

8月31日。スマホの待ち受け画面を見て驚いた。もう8月が終わるのか。

1年のうちに、何度か「もう今年が終わっちゃうなあ。」と思うタイミングがある。

まずは年度末の3月。怒涛の年度末業務をこなし、ああやっと解放される、と思ったタイミングで、今年がもう3ヶ月も終わったという事実に頭を抱える。

次に6月。もう半分が過ぎてしまったことにびっくりする。

そして8月末だ。夏休みの終わりは、今年の長期休

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山裾の家にて

山裾の家にて

今住んでいる家は、すぐそばに山がある。ソファに座って外を眺めると、緑の斜面しか見えず、空は見えない。林縁部に、背の低い草本類が競うように伸び、濃い緑の風景が出来上がっている。

植物はとても強い。この物件の内覧をした3月下旬には、まだ土肌が見え、見窄らしい景色だったのに。

暖かくなるにつれ、いくつかの植物が花をつけ、カナブンなどの昆虫たちが花粉を運んでいる姿が頻繁に見られた。梅雨の時期には、ぐん

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すぐ辞めることをやめたい

すぐ辞めることをやめたい

なんでもすぐ投げ出してしまう。わたしのコンプレックスだ。

大学の頃はバイトをコロコロ変えた。どの職場に対しても、行きたくない気持ちが石みたいに積み重なって、その重さに耐えきれなくなり辞めてしまう。我慢の効かない性格に、毎回落ち込んでいた。

新卒で入った職場も、3年で辞めてしまった。恋人の転勤が直接的な原因ではあったけど、辞めざるを得ない、となった時かなりホッとした。正当な辞める理由ができた、と

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恵比寿と夜のあんこ(よなよな/佐賀大学のそば)

恵比寿と夜のあんこ(よなよな/佐賀大学のそば)

角を曲がると、大抵ひょっこり恵比寿さまが座っておられる。愉快そうにふくふく笑って、まるで一切合切それでよいのだと仰っているようだ。

佐賀市内には820体以上もの恵比寿像があるらしい。どおりで、いつも誰かの視線を感じるわけである。

御多分に洩れず、自堕落な大学生活を送っている私であったが、こういう神様的なものはちゃんと信じるタイプであったので、いつも見られている感じがするというのは大変居心地が悪

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カレーノスタルジー(佐賀駅/カレーショップ南陽)

カレーノスタルジー(佐賀駅/カレーショップ南陽)

特別でも何でもなかったお店が、ふと気づいたら食べられなくなっている。ここ数年、こんなことが多いなと思います。

例えば大学時代の思い出のカレー店。薄暗く、お昼時が過ぎてお客さんのまばらな店内、いつ行っても何かしらのカレーが売り切れてしまっていて、選択肢がなかったりします(これは私の来店時間が悪いのだけど)。謎のラインナップの雑誌がラックに並んでいます。

福神漬けとラッキョウと、それらをつかむため

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はじめてのウインナーコーヒー (福岡/大濠公園駅 珈琲フッコ)

はじめてのウインナーコーヒー (福岡/大濠公園駅 珈琲フッコ)

あるあるだと思うのですが、ウインナーコーヒーって、ウインナーが煮えられて放り込まれたものだと勘違いしていました。

初めてウインナーコーヒーと出会い、ウインナーの意味を理解したのは22歳の冬、ここ珈琲フッコでの出来事。

地下鉄に乗って大濠公園駅に降り立ち、ハイソな雰囲気の女性やスポーティーな格好の男女、何とも賢そうな犬を横目に、信号を一つ渡り、大手門第一法規ビルのある角を曲がると、小さな路地です

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福岡/天神 TOKIO

福岡/天神 TOKIO

パフェの語源はPerfectだと聞きました。真偽はともかく、とても納得。たしかに完璧な食べ物です。

TOKIOは福岡天神、イムズの地下1階にあるフルーツパーラーです。フレッシュなジュースをテイクアウトすることもできます。

中学に進学し、初めてファミレス以外のパフェの味を知ったのがこのお店。祖母と母に連れられたショッピングの最中に、少し休憩しようと連れられて入りました。

TOKIOは、九州で約

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