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珈琲屋、カフェについて

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日々の仕事から見えることや考えについて書いた記事
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記事一覧

住宅街で自家焙煎店をする方法

住宅街で自家焙煎店をする方法

「そうや。マスターに聞きたことがあってん」

そう言われると、なぜかドキッとする小さい自分がいる・・・。

「・・・、なんでしょう?」

「知り合いの男の子が近々お店をオープンさせんねんけどな、ちょっと困ったことがあって・・」

よかった。なんか悪いことでもやらかしてしまったかと思った。

そんな小さい自分のことは置いといて、相談内容を要約するとこんな感じだ。

1 今までシェアキッチンでカフェを

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珈琲屋がお客さんに味を説明するときに感じるジレンマについて

珈琲屋がお客さんに味を説明するときに感じるジレンマについて

「判断ができません」

お客様がメニューをジッと見ている。
表情からは困惑の色が見てとれる。

「あの、すいません・・・」

やはりきたか!

「わからないので、教えていただけますか?」

それはそうだろう。
当店にはストレートとブレンド合わせて約20種類のコーヒーがある。
そして、メニューには生産国名が文字で表記されている。飲んだことがなければ、ブラジルだとかコロンビアだとかいった記号だけ見ても

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スタッフ定着率の高いお店がやっている『一本釣り』とは?

スタッフ定着率の高いお店がやっている『一本釣り』とは?

今年も一本釣りの季節がやってきた。

断っておくが、私はカツオ漁師ではない。珈琲屋だ。
では、「一本釣りとはなんのこと?」と思われたことだろう。
これはスタッフ採用の話である。

スタッフ採用といえば大げさに聞こえてしまうが、ようはアルバイト募集のことで、『一本釣り』とはその方法のことである。

当店はスタッフの定着率は高い方だと思う。
学生のアルバイトでも卒業するまで数年間続けてくれる。

しか

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マスターvs営業電話

マスターvs営業電話

「はい、ありがとうございます。カフェデコラソン でございます」
「あ、コラソンさんですか?」

電話口から明るい女性の声が聞こえた。

「はい、そうです!」

親しげだ。

『コラソンさん』の呼び方からして常連さんかもしれない。
電話番号もフリーダイヤルではなく、携帯番号だ。

「もしかして、お電話口は店長さんかオーナーさんですか?」
「はい、そうですが・・・」

常連さんで私を「店長さん」や「オ

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私が一番難しいと思っているコーヒーの飲み方

私が一番難しいと思っているコーヒーの飲み方

職業上、コーヒーについて考えることが多い。
特にコーヒーは一般的にどのように飲まれているのかは興味があるところだ。

私が想定しているのは以下の飲み方だ。

1 食事(パン、菓子類)をしながら飲んでいる
2 仕事をしながら飲んでいる
3 読書をしながら飲んでいる
4 会話をしながら飲んでいる
5 スマホやテレビを観ながら飲んでいる
6 何もせず、ただ飲んでいる

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珈琲屋の人生ムダな時間

珈琲屋の人生ムダな時間

「青は進めだ!」
これは太古の昔から決まっている。

なのに、前の車が動かない。
一番前の車が右折しようと、歩行者が通り過ぎるのを待っている。
そのため、後続の車は誰も動くことができないのだ。
いくらバイクとはいえ、京都の狭い道路は電柱が邪魔をして横をすり抜けていくこともできない。

しばらくすると、信号は黄色になり、すぐ赤になった。
同じ信号を2クール待つ。人生においてこれほど無駄な時間はあるだ

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お役所の人と話をすると掛け合い漫才になってしまう話

お役所の人と話をすると掛け合い漫才になってしまう話

お役所の方とは、いつも話が噛み合わない。
なぜ、そうなってしまうのか?

今回、京都府の募集する「多様な働き方推進事業補助金(テレワークコース)」に申請を出した。
補助金の内容を説明すると、雇用する従業員が自宅などで仕事ができるように、ノートPC等の購入費用の一部を補助してくれるというものである。

カフェといえどもオンラインショップや事務処理などPC業務は多々ある。
これらを主に女性スタッフの

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お土産コーヒーとプライド

お土産コーヒーとプライド

お客さんから旅行や出張のお土産でコーヒー豆をよく頂く。
コーヒー豆を売った相手から、コーヒー豆を無料で頂くというのは何とも気が引ける。

さらに、他のお土産なら「ありがとうございます。美味しかったです!」と返せるのだが、コーヒーに関してはそうはいかない。

素直に感謝を述べるべきか、はたまたプロとしてのプライドを見せるべきか・・・。

渡す側としても喜んでもらおうと思っているとは限らない。
プロは

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ポイントカード再考

ポイントカード再考

物事には当初の考えからずれていき、いつしか形骸化してしまう、なんてことはよくあることだろう。

当店では、コーヒー豆の購入時に付与するポイント制度がそれに当たる。

どういったものかというと、コーヒー豆を100g購入していただくと、スタンプを1つ押し、合計で20ポイント貯まるとコーヒーが1杯無料になるサービスだ。

始めた当初は、定期的に買いにきてくださる方に何か還元できないかという思いと、いつも

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奇跡の珈琲教室

奇跡の珈琲教室

これは、奇跡だ。

当店では、月に一度珈琲教室を行っている。
京都新聞のカルチャースクールが申し込みの窓口になっており、開催の3日前くらいに参加者のリストが送られてくる。

そして今回、受け取ったリストを見て目を疑った。
なんと、5人の参加者全員の名前が「ノリコ」なのだ。

最初パッと見た時に、「まさか?」と思い、リストの上から順番に指で追いながら確認していく。
それはまるで、ポーカーの手札を一枚

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秋なのに売上が伸びてこないのは何故か?

秋なのに売上が伸びてこないのは何故か?

今年は人の流れが何とも不可解だ。

例年お店にくる人の流れは、春に上がり、夏で底を打ち、年末に向けてまた上がり、年が明けたらガタッと落ちる。

しかし、今年は秋になってもちっとも上がってこない。
毎年このアップダウンに一喜一憂しているので、「安定しているといいのに」なんて思っていたが、いざ上がるべき時に横ばいが続くと狼狽する。

この原因はいったい何なのか?
お客さんとの会話から私なりに推測してみ

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1日で400杯コーヒーを淹れた話

1日で400杯コーヒーを淹れた話

こちらの話の続きです。まだご覧になっていない方は、先にこちらをお読みください。⬇︎

トラブル続出の午後

ここでどういう風にオーダーを通せば効率的かを考えた。
抽出器具は4セットある。1杯だてで4つ同時に淹れると2分の1カップなら8人分を一度に淹れることができ、これがもっとも効率的だ。
実際にはアイスコーヒーなども入るので、それらも計算に入れながら一度に淹れる最大公約数のオーダーを取って通すと良

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京都駅でコーヒーイベントに参加した話

京都駅でコーヒーイベントに参加した話

Enjoy coffee time

9月上旬、ピークを超えたとはいえ、いまだに30度を越す暑さである。
こんな日に屋外イベントでコーヒーを出して、飲みにくる人はいるのだろうか?
一抹の不安がよぎる・・・。

今回初めて「Enjoy coffee time」というイベントに参加することになった。
簡単に内容を説明すると、自家焙煎店を中心とした10店舗(2日間で20店舗)が一堂に会し、色々なお店のコ

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珈琲屋の店主がコーヒーチェーン店で考えたこと 〜後編〜

珈琲屋の店主がコーヒーチェーン店で考えたこと 〜後編〜

同じ業種は同じ仕事なのか?

同じ物を売っていても来店動機の違う「同業種異業態」なるものは結構多い。

例えば、パン屋さんにしても1個100円台のパン屋さんもあれば、素材や製法にこだわった1個4〜500円くらいするパン屋もある。仕事日の昼ご飯になら、100円台で惣菜パンから菓子パンまで色々選べるお店は大変ありがたい。(私のように稼ぎ相応の小遣いしかもらっていない人間にはなおさらである)

一方でこ

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