マガジンのカバー画像

散文

77
運営しているクリエイター

記事一覧

写真詩『1ページ目』

写真詩『1ページ目』

こちらは写真詩集『影をまく』の1ページ目の作品です。

高校三年生の頃にとったフィルム写真。
あの頃は今のカメラじゃなくて、兄にさずけられたオートのフィルムカメラで撮影していた。

私の高校はラブホテルとお墓を通った場所にあった。
初めて母校になる高校に模試で行った時、私は道がわからなくなりそうだった。
そのとき、方向を確認するために使ったのが、このラブホテルだった。
小さい頃からこの近くは通って

もっとみる
散文『街路樹と換気扇』

散文『街路樹と換気扇』

 空回りする換気扇を眺めていた。風に吹かれて回るだけの存在はもう何十年もそこにいるらしい。粉のような雪が申し訳程度に降っている。久しぶりにここら辺で降ってみようか、なんて思っているかのように少しずつ、微かに舞っている。

 雀が小さな鉢に植えられたというのに大きく育ってしまった何らかの木に留まった。私にとってそれがなんの木であるかは関係ない。ただ、そこには木があって、窮屈そうに生えているのが心地よ

もっとみる
詩 『小さくなって考える』

詩 『小さくなって考える』



小さくなって考える
日々の悲しみの源は誰とも関わることが出来ないこと
たくさんの人とすれ違ったとしても
私は誰とも繋がることが出来ない

小さくなって考える
このわだかまりは、私が私のことを理解してあげられなかったこと
責められたときに言い返せるほど
私は私の感情に気にかけられない

小さくなって考える
指先から冷たいものが入ってくるのは、攻撃ではなくただの侵食
私は抵抗することも出来ず、

もっとみる
写真詩『街頭の震え』

写真詩『街頭の震え』



もうやめよう
微かな希望ばかり見て
自分の持ち物を投げ捨てる
そんな苦しみを
愛してしまうのはどうしてなの

輝きに目がくらむ
生きるって苦手だ
震える胃が全身を嬲る
止まらない鼓動
やめてしまえたら楽なのに

写真詩集第2弾 秋版『蛇行する夕焼け』の収録予定作に作品です。
今、一生懸命作っております。
多くの人に手に取って貰えたらいいなぁ。

こちらで出来次第販売を始めますのでよかったらブッ

もっとみる
コピー『年賀状を書こう』

コピー『年賀状を書こう』

【大学 コピーライト入門の課題】
年賀状を書こうと思うコピーライトを書く。

写真詩『校舎の電気に怯えた』

写真詩『校舎の電気に怯えた』



この空の下で生きてきた
無視をされて無かったことにした日も
消えた上靴の居場所も
走って逃げたあの夜も
泣きながら登校したあの朝焼けも
全てはここにあった
きっとみんないる
私を傷つけた人も
私を責めた人も
ずっとここにいる
目を背けてきたつもりは無い
だけど少しずつ傷から逃げてきた
逃げ方を教えてくれたこの歌が
私に消そうとしたものを浮かばせた
止まってばかり
道をはずれてばかり
それでこそ

もっとみる
写真詩『始まりは地球』

写真詩『始まりは地球』



いたずらに始まったその熱は
過去の人の途切れた思い
夢の出来事は思い出になっている
丸窓から飛び出したカエルのような
突飛な日々こそが人生かもしれないのに
みんな現実じゃないって言う
君もそう思うかい?

写真詩集の『冬』の制作を始めました。
前作『はみ出す青』は、夏から秋にかけてのものでした。

なので、今作は秋から冬にかけてのものにしたいと思っています。

今回はフィルム写真のみでお送りし

もっとみる
散文『ポツポツ』

散文『ポツポツ』

繁華街をポツポツ歩く。

その一文だけがノートに残されていた。過去の自分が何を考えたのか、思い出そうとすら思わなかった。ただ、『繁華街をポツポツ歩』いてみたくなった。

電車が停止し、歩く。
ガヤガヤとした街は暗かった。都会ももう暗い時間なんだと思う。
死んだ都会は、見慣れた場所だと思った。

頭がバラバラと崩れるような、具体性がないような、全てが消え去る瞬間のような思考は断片的で線路の美しさに気

もっとみる
写真詩『言葉は痛い』

写真詩『言葉は痛い』



言葉は痛い
書き残したルーズリーフは途切れたまま
君の読む本のタイトルを知ることは無かった
投げかけた挨拶は消えていく
ずっとは無いこの時間
筆圧は強くなる
君の言葉を考える
机に書かれた誰かのボヤキ
私はそんなこと出来ない
書き残せるほど少ない想いじゃない
言葉は痛い
君にはあげられない

散文 うのはなとしんごう

散文 うのはなとしんごう

時、トツトツと

キャップには誰かの使用言語が書かれている

車はコツコツ鳴る

和気あいあいと音楽が喋っているのを聞いているけど、君は他人でしかないね

笑う空をソリで駆け抜けたあの犬を田んぼに落とした

連続殺人鬼は霧立のぼる境内の中で眠っている

煌めいた人間の煩悩は野球のボールになった

バカバカしくて緑が泣いた

山の色がトンカラトンカラ変わっていく

傷が消えたあの川は赤くなった

もっとみる
写真詩『だから君が嫌いなんだ』

写真詩『だから君が嫌いなんだ』



暮れゆく愛おしさは色を知らず
ただいつでもそこにあることを私は知っている
煌めきは無くていい
ただ透き通る命があればいい

恋をしたイルカが跳ねた空
君は見ることがない
美しいと思わない
だから君のことが嫌いなんだ