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友情・恋愛

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恋・友情などの人間関係をテーマにした詩を収録。
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二月一四日

二月一四日

 二月一三日。バレンタインデー前日。あの人にこの思いを届けるためにバレンタインのチョコレートを渡す。「いつも側にいてくれてありがとうございます」「辛いときに寄り添いありがとうございます」「貴方がいてくれたおかげで現在も生きたいと思えるようになりました」言葉では言い表せない程の感謝をこのチョコレートに込める。ありったけの「ありがとうございます」をこのチョコレートに込める。感謝の思いを込めた後はラッピ

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チョコレート

チョコレート

 ふと地元のニュース番組を目にする。番組内では隣の県で行われている「チョコレートのイベント」の生中継が放送されていた。生中継を見てバレンタインデーが近づいていることを知る。
 今年、2024年は誰にバレンタインデーのチョコレートを作ろうかな?悩みに悩む。恋人?家族?友人?恋人は、ここ数年いない。恋人がほしいとも思わない。「恋人がいなくても平気?」上手い言葉では答えられない。答えられたとしてもクスク

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打ち上げ花火

打ち上げ花火

 夏祭りのクライマックス。何発もの打ち上げ花火が打ち上がる。雷鳴のような音が響き渡り少し驚く。隣で打ち上げ花火を見上げる彼。彼の瞳をそっと覗き込むと宝石のように輝く。花火よりも綺麗。ボーッと惚れていと彼が気が付き「どうした?何かついてる?」声を掛けられる。慌てて目をそらし「蚊がさっき目の近くを飛び回ってた」顔を赤らめ適当な言い訳で答える。言い訳だってこと、嘘だってことばれてるかも。ばれてないように

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かき氷

かき氷

 夏。夏祭り会場で売られるかき氷を買い食べてみた。店の主人から好きなシロップを選べると教えてもらう。迷いに迷った末に黄色いレモンのシロップにしてみよう。暑い中で食べるかき氷はキンキンに冷えて気持ちが良い。身体中が冷たくなる。氷の食感はフワフワではなくザクザク。最近はフワフワでコットンみたいなかき氷が主流だが、やっぱりザクザクのかき氷が好き。幼い頃から何度も食べるのに飽きる気配なし。
 かき氷を食べ

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恋愛劇

恋愛劇

 天気は雲一つない青空。快晴日和。気温は三五度以上。猛暑日。湿度は八〇%。高温多湿。昨日から熱中症警戒アラートが発令。そんな日に友人グループと共に海水浴。本当は友人グループに誘われてもないのに無理矢理来てしまった。本当は泳げないのに。グループにいる彼の人が気になるだけなのに。グループ内の視線が気になる。彼の人にはお姫様候補が多いことも彼の人が誰にでも優しいことも分かってる。彼の人が王子様みたいに見

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天の川

天の川

 七月七日。七夕。「あそこにある星が琴座のベガで七夕伝説の織り姫だね」指し示しながら教えてくれる顔が爽やかで綺麗だ。その顔に優しすぎる性格に惚れ惚れする。声を掛けられるだけで、心拍数が急上昇。頭の中はオーバーヒート。毎回声掛けられるのに返事するだけでも精一杯。本当はもっと話したいのに。本当はもっと側にいたいのに。去った後に「もう少しまともな返事出来なかったの?」「変人に思われてたらどうしよう・・・

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風鈴

風鈴

 太陽がさんさんと輝きうだる暑さの日。上を見上げれば風鈴が吊されていた。その風鈴は涼しげで可愛げがあった。どことなく初恋の人を思い出させる風鈴。いつの間にか恋に落ちた。掴み所がない性格の初恋の人。あの当時は初恋であることを認めなかった。否定していた。長い月日が経過してやっと初恋を認めざる得なかった。それでも初恋の人にはずっと秘密のまま。ずっと内緒のまま。
 一陣の風に煽られ風鈴の鳴き声がチリンと鳴

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桜と雨

桜と雨

 雨が降りしきる日。桜は見た目では満開気味。咲き誇る桜が大粒の雨に打たれ一枚一枚と花弁を濡れた地面に落とす。濡れた地面には落ちた桜の花弁で一面染まる。「晴れていたら綺麗に見えたのに」幼馴染みが憂うつな顔つきで落ちた桜の花弁を目にし呟く。その幼馴染みの姿を少し離れた距離で見守り口にする。「雨が降りしきる日でも桜は綺麗だよ。晴れた日には見られない光景が見られるから」幼馴染みはクルッと振り向く。「分かる

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菜の花畑

菜の花畑

 「来年も二人でこの菜の花を見に行こう」昨年と同じ日。昨年と同じ雲一つない青空。菜の花畑を見た後で指切りげんまんをして約束したのに。今年からはもういない。今年からは一人。一人で菜の花畑に行くともう少しで春なのに冬だった。菜の花もくすんで空虚な色合い。
 一年前までは二人でいるだけで落ち着けた。気持ちが良かった。何も演じない本来の姿に戻れたのに。半年前から二人になると居心地が悪くなった。普段以上に「

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バレンタイン

バレンタイン

 二月一四日。バレンタインデー。好きな相手にチョコを渡すイベント。その前日の二月一三日。一人でバレンタインデーのチョコを買いに行く。現在は特に渡す相手もない。自分の小さき欲望だけを抱いて買いに行く。隣ではカップルがイチャつきながら「このチョコそこまで甘くないよ」「これがいいんじゃないかな?」選ぶ。特に害はないはずなのに、カップルの姿を声を聞いて酷く苛立つ。カップルの姿が声が雰囲気がかつての自分が記

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梅の花

梅の花

 二月になった。少し雲がかかり鈍い色を放つ空の中。テクテク歩きスマホを首にぶら下げて散歩をする。歩いた先に見えたのは立派な梅の木。木の先っぽには桜よりも小ぶりで桜と同じくらい可愛らしい梅の花が咲き誇る。周辺には香しい梅の匂いも漂う。
 「梅の花にも妖精がいるのなら、緩くふんわりとしてどこか儚い姿かな。人見知りで遠くから人間の気配がするだけでサッと木の裏に逃げ込みやり過ごす」幼馴染みが口にした空想を

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雪化粧

雪化粧

 いつもなら極彩色に染まりし都会の景色が淡く真っ白い雪に包まれる。
普段なら光り輝くネオンで厚化粧を施す都会の景色が静かな雪の白粉に包まれ柔らかな印象を醸し出していた。その姿は一回でも触れてしまえば儚く消えてしまう印象。か弱く現代の荒波に飲み込まれそうだが必死に抵抗する印象。
 そんな想像を頭の中で巡らしていたら窓の向こう側から名前を呼ぶ声がした。声の主に返事をして外の冬景色の中に出てみる。声の主

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こたつ

こたつ

 しんしんと雪が降り積もる。闇夜にぽつんと一人でこたつの中に入る。こたつの中はポカポカと温かくひどく優しかった。
 しんしんと雪が降り積もる。闇夜にぽつんと一人でこたつの中に入る。こたつの中は温かいのに心の中はひんやりと凍えて冷たかった。外で降り積もる雪の如く。
 しんしんと雪が降り積もる。闇夜にぽつんと一人でこたつの中に入る。以前までは彼と向かい合ってこたつに入り、たわいもないお話をしてお互いに

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除夜の鐘

除夜の鐘

 一二月三一日。大晦日の夜。二〇二二年の終わりの日。神社で除夜の鐘をつく。鐘をつくまでの間に二〇二二年に起こった出来事を思い出す。振り返る。行列に並ぶ周囲の人は「今年は楽くて面白い一年だった」「来年も良い一年になりますように」そんな声がちらほら聞こえる。同行していた友人から「今年はどんな一年だった?何があった?LINEで聞けなかった分教えて」聞かれた。聞き出してくるだろうと思ってはいたが、素直に答

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