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ペチュニアの咲く丘に

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「ペチュニアの咲く丘に」#11 ペチュニアの花

「ペチュニアの咲く丘に」#11 ペチュニアの花

第11話 ーペチュニアの花ー(完)

 習字教室から帰ってきた咲良は、リビングで花を生けている杏子に会った。

「お帰り〜」

 そう言って花に集中している杏子。

 咲良は生けている花の素朴な佇まいが気になった。

「そのお花なんていう名前なの?」

「これはね、ペチュニアという名前なのよ」

「へぇ!シンプルだけど一輪あるのと無いのとで印象が変わるね」

「そう

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「ペチュニアの咲く丘に」#10 洗濯物

「ペチュニアの咲く丘に」#10 洗濯物

 すっかりとしたイチョウの葉が黄色く色づく休日、咲良は洗濯物を干していた。

 平日は1時間程度乾燥機にかけるが、休みの日は太陽の下で干したくなる。

 外は少し寒くなり手が悴む。

 ふとハンガーにかけたカーディガンが風に煽られするりと隣のアパートの駐輪場に落ちた。

「あ…」

 思わず声が出る咲良と、丁度出掛けようと自転車の鍵を解除してた、細めのフレーム眼鏡が良く似合う青

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「ペチュニアの咲く丘に」#9 いちかの言葉

「ペチュニアの咲く丘に」#9 いちかの言葉

 この日、咲良は一果と近所の沖縄料理屋で飲んでいた。

 ゆったりとした沖縄リズムが流れる店内。心も落ち着く空間。
 何よりここのもずく天ぷらが実に美味しい。

 一果はクールでめんどくさいことを嫌う性格。に見えるが、実は心の奥に暖かいものを持っているそんな性格。

 この日は珍しく一果から咲良に飲みに行こうと声をかけた。
 最近の咲良の様子が気になっていたのだ。

 そんな一果との会

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「ペチュニアの咲く丘に」#8 桃子のmarriage blue

「ペチュニアの咲く丘に」#8 桃子のmarriage blue

 桃子には6年付き合っている彼氏がいる。

 桃子は会社の辞令で名古屋からこのシェアハウスに引っ越してきた。
 転勤辞令が出たタイミングで彼氏からプロポーズを受け婚約をしてから東京に来た。
 桃子の彼氏は若くして家業の貿易会社の役員を務めている。

 桃子が今の彼氏、涼と付き合い始めたのは丁度、桃子が、26歳の時。
 当時務めていた会社の取引先の営業マンだった。

 この頃の桃子は職場の人

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「ペチュニアの咲く丘に」#7 喪失感

 咲良は真司と別れてから1ヶ月。

 未だに悶々と謎の感情が頭の中に居座っていた。

 真司のことがまだ完全に嫌いにはなれない。
 しかし、なぜそんな男に惚れてしまったのだろう。
 自分の嫌だと思う感情になぜ蓋をしていたのか。
 もっと自分の感情をさらけ出し、相手に伝えていれば二人の距離は縮まったのだろうか。
 段々と好きだっという感情から、後悔と反省が入り混じる感情が込み上げてきていた。

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「ペチュニアの咲く丘に」#6 疑心感

「ペチュニアの咲く丘に」#6 疑心感

 蝉の大合唱が始める真夏の朝7時過ぎ、咲良は出かける準備をしていた。

 今日は真司のワンマンライブの日なのだ。この日の為に真司は新曲アルバムも作り、お客さんを楽しませる施策を考え込んでいた。
 そんな姿を身近でみていた咲良は楽しみにしていた日であった。

 ステージが始まる前の真司は真剣な眼差しが印象的で、咲良は話しかけるのを躊躇していた。

 しかし、真司は咲良に気がつき、笑顔で声をか

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「ペチュニアの咲く丘に」#5 違和感

「ペチュニアの咲く丘に」#5 違和感

 真司の歌を聴きながら仕事の準備をする咲良。上機嫌だ。

 付き合いたてと言うのはどうして胸の奥底が落ち着かないのだろうか。
 何を着て行こう。昨夜から用意していた洋服もいざ当日になると気分的に違うような気がして、また一からコーデを考え直す。
 女という生き物は好きな人の前ではいくつになっても可愛くありたいものだ。

 付き合って2ヶ月。咲良と真司は近すぎず遠すぎずな距離感をほどよく保っていた

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「ペチュニアの咲く丘に」#4 デート

「ペチュニアの咲く丘に」#4 デート

 咲良は真司との落語デートまで、真司の歌や動画をたくさん聴いた。
 物がありふれている今の時代には珍しい貪欲で素直な歌詞、お世辞にも売れてるとは言えないが、それでも前を見て歌い続ける姿勢……

 咲良はいつのまにか真司に惹かれていった。

 落語デート当日、待ち合わせ場所に真司は下駄を履いてきた。
 この人変わってる……と、思うのが普通なのだろう。
 しかし、咲良は人と違う所に魅力を感じた

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「ペチュニアの咲く丘に」#3 出会い

「ペチュニアの咲く丘に」#3 出会い

 

咲良はこの日、友人が務めるジャスバーに足を運んでいた。

 何人かの歌い手を集めた小規模なライブだった。
 そこで、トップバッターで弾き語りをしていたのが、「真司」との出会いだった。

 彼の歌詞は粗いのだけれども、人間の奥底に秘めた感情を恥ずることなく素直な歌詞にしていた。
 そして、ジャズバーの店内に溶け込むアコースティックギターの奥深いメロディ。
 真司の歌を聴いて、咲良は目の奥が

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「ペチュニアの咲く丘に」#2 挨拶

「ペチュニアの咲く丘に」#2 挨拶

 

 このシェアハウスはオープンしたばかりの女性専用の二階建ての一軒家。

 咲良は今日からこの家に住む。

 小鳥のさえずりが聞こえる早朝から荷物をせっせと運ぶ咲良。

 シェアハウスには、棚や机、ベッドは備え付けがある為、引越し業者を頼むほどではなかった。
 しかし、乱雑に運び終えた段ボールから、衣類、日用品、化粧品を並べていく作業は結構大変だ。

 夕方になり荷物整理も一段落し

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「ペチュニアの咲く丘に」#1 部屋探し

「ペチュニアの咲く丘に」#1 部屋探し

 

 自分の部屋に戻った咲良は頭に血が上り、沸々とした感情をエネルギーにして、部屋探しを始めた。 

 といっても、人と話すのが好きで、営業職に就いた咲良が、一人暮らしを始めたら、寂しくなりホームシックになるのは目に見えている。

 一度出ると決めたらそう簡単にぬくぬくと実家には帰りたくない。
 とすると、昔から憧れていた、心許せる友人とルームシェアするというのはどうだろうか… いや、正直そんな

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「ペチュニアの咲く丘に」#0 プロローグ

「ペチュニアの咲く丘に」#0 プロローグ

 誰かが悪いとかではなくて、純粋な心は時として、人の欲望につけ込ませる魔の力を秘めている。

 梅の花が咲き始める頃、咲良はこの家に越してきた。
 東京生まれで同じ都内に引っ越した。引っ越す必然性はあまりないが、なんとなく自分の人生を環境からガラリと変えたかったのだ。

 お正月に親戚が集まり、挨拶もつかぬ間に、叔母は私の年齢を聞いてきた。

 26歳………

  余計なお世話だ、

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