dy!two

会社員。万年ダイエッター。竹書房のSFが寝る前のお供。

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最近の記事

そよ風のような(春ギター)【毎週ショートショートnote】

プリマヴェーラは小さい女神様で、音楽が大好きです。 毎年毎年、メンデルスゾーンばかり聞かされていた女神様は自分でバンドを組むことにしました。 仲のいいゼフュロス、フローラ、メルクリウスがメンバーです。 もう1人、ヴィーナスに声をかけたのですが、彼女は春コレクションを買うのに忙しいからと断ってしまいました。 キューピッドは候補に上がっていたもののバンド内恋愛をけしかけそうなのでやめました。 桜の花びらとさくらんぼの茎で、プリマヴェーラは自分のギターを作りました。 仲間

    • 深煎り入学式【毎週ショートショートnote】

      浅煎り課程を修了し、僕は深煎り課程へ進むことにした。今日は深煎り入学式である。 ここでの課程を終えると、晴れて僕は深煎りコーヒーとして世にでる。 倍率200倍の難関を潜り抜けた超エリートスーパーエターナル深煎りコーヒーフォーエバーになるのだ。 仲間は 「おれは1日でも早くカフェで提供されるんだ!」 とか、 「浅煎りでも深煎りでも等しくコーヒー豆だよ、なんで院へ進んでまで深煎りについて学ぶの?」 と至極ごもっともな意見をたくさんくれた。 でも、僕のようなコーヒー豆は浅煎

      • 命乞いする蜘蛛…の閑話休題【毎週ショートショートnote】

        「あんたさあ、なんであんなことしたのよ」 「なんのこと?」 「蜘蛛の糸のことよ!たらしたんでしょ?」 「ああ、あれね」 「しらばっくれちゃってさ!あんなのどうにもならないって分かってたはずよね?」 「だってさぁ、こっちは必死で命乞いまでしたのよ?それをなんかちょっといいことしましたーて感じで片付けられるなんて癪じゃない?」 「あんた、プライド高いから、助けてやったみたいなの1番嫌いだよね」 「そうそう、一思いに潰された方がマシよ!だから思い知らせてやったの!上が

        • お返し断捨離【毎週ショートショートnote】

          金持ちというのは、まだ春一番が吹くか吹かないかっていうのに、もうお中元を考えるのか。 元々庶民の中でも、中の下くらいの中流家庭出身で、偶然遠縁の莫大な財産を継いでしまっただけの私は、執事が持ってきたリストをみて、心の底からため息がでた。 コーヒーやおそうめんやタオルだと箔がつかないというので、考え抜いた私は、1通の手紙を送ることにした。 「お世話になっている皆様に。感謝の気持ちを込めて私が断捨離で得た豊かな生活を、皆様にも送って頂きたいと思います。」 その後、金持ちの間

        そよ風のような(春ギター)【毎週ショートショートnote】

          聖地巡礼とセーラームーンとそれから

          初めての〇〇について、というカテゴリは私はほぼ思い出せない。 例1 初めて読んだ本→絵本かな?え、小説で…? 例2 初めて買ったCD→いやほんとに思い出せない。例3 初めてのおつかい→あったかも分からない てな感じの私が初めてみた映画は自信を持って答えられる。 「劇場版 美少女戦士セーラームーンR」である。 ビデオが擦り切れるほど見た。映画館で見たかどうかは…多分連れていってもらったのだろう。 あらすじは下段に東映公式サイトより抜粋しました。 すごくよかった。 今で

          聖地巡礼とセーラームーンとそれから

          レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

          「レトルト三角関係」という画期的な商品が世に生まれ出た。 温めると湯気にのって自分のタイプの相手が現れ、疑似恋愛を楽しめる、という代物だ。 恋を忘れて久しい私は男性2人タイプを購入した。 説明書きは以下の通り。 これは男性2人入りの説明だが、女性2人入りのタイプもあるし、男女1人ずつのタイプもある。 現実では何かと問題になる三角関係でもレトルト三角関係ならば思い切り楽しめる。人気の理由がなんとなく分かった。 例え幽霊みたいな幻だとしても、イケメン2人にチヤホヤされたり

          レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

          【洞窟の奥はお子様ランチ】で【冒険小説風】♯毎週ショートショートnote

          「黄泉の国でご飯食べてくる。帰りは遅くなる」 勇者がそんな書き置きを残して宿屋から失踪した。 勇者、魔術師、僧侶、盗賊のパーティで、前衛がいなくなった。 もう滅多なことじゃHPが0にならないからって自ら三途の川行くか、とか、友達と飯食ってくるわみたいなノリで黄泉路へ行くなよ、とか言いたいことはいっぱいあった。 それでも大切なパーティの1人だ。黄泉の国とやらから勇者を連れ戻す冒険の旅が始まった。 幾多の困難を経て、三千世界の彼方にあった黄泉の国へ着いた。 僧侶は教義に反

          【洞窟の奥はお子様ランチ】で【冒険小説風】♯毎週ショートショートnote

          デジタルバレンタイン✖️SFチック【毎週ショートショートnote】

          「なあペッパー、お前料理できんの」 「ぜーんぜんわたしはロボットですので」 「えー電子データに変換して一瞬で買ったものが来るし、料理も材料を原子に分解して組み立てるだけだろ。楽になったもんだぜ。ほんとお前ロボットなの?」 「おいしい料理は火をかけて愛情をこめますそして最も心をこめた料理をつくる日がバレンタインの日ですこーんなこともペッパーは知っているのですよ」 「火、とかいうの教科書でしか聞いたことないわ、お前使ったことある?」 「ぜーんぜん私はロボットですから」

          デジタルバレンタイン✖️SFチック【毎週ショートショートnote】

          ツノがある東館【毎週ショートショート】

          ある朝目覚めると東館はカブトムシであった。 どうせならクワガタが良かったな、と思いつつ、 羽を震わすと、周囲でちらちら見えるものがあった。毎朝ここに赴く若者達が、風で飛ばされたり、腰を抜かしていたりする。 確か彼らは「ダイガクセイ」という生き物で、何をしているのか分からないが、ある時をすぎると姿が見えなくなり、またどうにも捉えどころのない別の若者が入ってくる、不思議な群れの者達のはずだ。 空気の振動から「今日の哲学概論IIってどうすんの?」「休講?単位配布キター」「あれ

          ツノがある東館【毎週ショートショート】

          冬季限定スペシャルスイーツ夢か幻か

          暖冬と言われて久しい今年もようやく冬が本気を出してきた。 ならば本気で迎え撃たねば無礼にあたるというもの。 …焼き芋を食べた(今シーズン2回目)という話。 労働に勤しんだあとは腹が減る。 夜遅くともなれば尚更だ。 そんなところに「石焼イモ」と書かれた提灯が見えたらどうなる?? 足が勝手に店へ向かっていた。 口が勝手に注文していた。 2本買ったはずなのに、なぜか4本になっていた。(出血大サービスで2本おまけ) 人の優しさがとても沁みる年頃なので、暖かい気持ちと熱い焼き芋

          冬季限定スペシャルスイーツ夢か幻か

          健やかに保つ拡張世界【毎週ショートショートnote】

          「Hey,guys!アメリカ製保健室へようこそ!私たちは最高の時間を約束します」 なんだこれ?こんなゲームスマホにいれたか?まあ、寝ぼけてたのかも。まあちょっとだけやってみようか… 「あなたは保健室にいますので、 ドクターなります。 急いでください!患者はあなたの治療を待っています!」 えーチュートリアルなしかぁ。…あっこの包帯をタップして、「使う」を選択すればいいのかな。 「急いでください!患者はあなたの治療を待っています!」 違うのかよ!つまんないなぁ。削除しよ

          健やかに保つ拡張世界【毎週ショートショートnote】

          ドローンの課長【毎週ショートショートnote】

          ドローン課長は悩んでいた。 果たして自分の存在意義はどこにあるのかと。 確かに撮影や荷物の運搬など、自分は多くの人達の役に立ってきた。 ただし、それは主役となる被写体や運ぶべき荷物があってのことなのだ。 所詮自分は、目立たない脇役で、主役になることはないのだと。 元気なくホバリングをしていたところ、大先輩にあたるヘリコプター部長が声をかけてきた。  「どうした?元気がないぞ(バラバラバラバラ)」 「そう見えますか…最近自分ってなんだろうって考えるんですよね。G

          ドローンの課長【毎週ショートショートnote】

          夜光おみくじ【毎週ショートショートnote】

          今年の初詣では、湿原へいくことにした。 夜光おみくじ虫を見るためだ。 夜光おみくじ虫(正式名称:ウンセイカミキレムシ)は主に神社を生息地として籠の中に飼われている。 特徴的なのはその体の模様で人の吉凶を占う点だ。占いはあくまで占いとはいえ、結果に一喜一憂するものは多い。現在は神社で飼われている養殖の夜光おみくじ虫がほとんどで、それらは名前に反して光ることはほとんどない。 湿原には原生種に近い夜光おみくじ虫がおり、それれは光が強く占い結果もかなり当たる。 じっとりとまと

          夜光おみくじ【毎週ショートショートnote】

          ルールを知らないオーナメント【毎週ショートショートnote】

          「いつから俺らってここにいるんだっけ?」 「そうめん食べてたのみたから8月とかじゃん? 何年前かは知らないけど」 主人が寝静まった夜、オーナメント達はヒソヒソ話を楽しむ。 ズボラなのか、アンチクリスマスなのか、めでたいことが好きなのか、その全部か。 この家のクリスマスはルール無用の一本勝負だ。 ツリーは灼熱の8月に部屋の中に設置され無法地帯の装飾がされていった。 今では、風鈴、千歳飴(賞味期限切れ)、ピーポくん、5円玉、サンダルなどが飾られ、クリスマスも裸足で逃げ出すモ

          ルールを知らないオーナメント【毎週ショートショートnote】

          冬季限定スペシャルスイーツリターンズ

          きっとまた会えるよね、と締めた下記の記事。 私は声を大にして言いたい。願えば叶うのだと。 擦り切れ果てた帰り道、見間違えようのない、 赤い提灯と車が見えた。 おじいちゃんも健在だ!…健在だ!! ふらふらと引き寄せられながら、シルクスイートを300g買った。80円おまけしてもらった。 私の後ろには目を輝かせながら自分の番を待ち侘びている人がいた。 ここの焼き芋屋さんは駅前だからか、焼き芋屋さんの概念が全て具現化しているからなのか、多種多様な人が焼き芋を求める。 塾帰りの

          冬季限定スペシャルスイーツリターンズ

          気づかいのひと【毎週ショートショートnote】

          今日は私たちの50回目の結婚記念日。 お互い歪みあった時もあったけれど、今となっては笑い話ね。  今日はいつもより少しおめかししようかしら。あら?鏡台にアニバーサリーカードが置いてある…。 「結婚記念日おめでとう!いつも感謝してるよ」 …いつの間に用意したのかしら…。全然気づかなかったわ。あの人、そんな洒落たことができたのね。 今日は天気もいいし、2人で色々な所へ行った車を洗おうかしら。あれ、荷台にアニバーサリーカードが落ちている。 「苦労させたけど君と一緒でよかっ

          気づかいのひと【毎週ショートショートnote】