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読書記録

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緑陰読書

緑陰読書

4月から新生活が始まった。といっても専ら送迎担当なので待ち時間が増えただけなのだが、木漏れ日を浴びながら読書できるのは嬉しい。まずは積ん読解消よ…と知人に頂いた同人誌を手にしたら、なんと2月号💧不義理な自分に呆れる🤦‍♀️

本屋大賞の翻訳小説部門で同著者による2冠は史上初と知ったのも、はたしていつのことだったか。今さら自分が三十歳の反撃に共感することもないだろうと思っていたのに、読み出したら

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魔法の音楽

魔法の音楽

昨日、タクトの素敵な記事に触れて、小澤征爾『ボクの音楽武者修行』(新潮文庫、1980年)を思い出していたら、哀しいことに訃報も届いて読み返している。

こちらのCD💿には子供達がお世話になった。学校の音楽の時間にさわりの部分だけ聞いて終わるにはあまりにも惜しい名曲揃いで、指揮は全て小澤征爾氏による。

思えば命懸けで タングルウッド音楽祭に出かけたも、それが小澤征爾氏ゆかりの地だったからだった。

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大切なのは知ること...

大切なのは知ること...

12月10日は世界人権デーだそうだが、これほど人権が踏み躙られようとは思いもしなかった。人道危機を通り越して人道破壊だと思う。これまで署名くらいしかできなかったが、今日は本読みデモのつもりで本を読んだ。

これは中高生にも十分理解できるように書かれているため、パレスチナ問題を理解するのに最適の入門書だと思う。10月7日から始まったと思っていた衝突については75年前まで遡って考える必要があるし、「ユ

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追悼  山田太一さん

追悼 山田太一さん

巨匠が去られ、ひとつの時代が、戦後が、終わってしまったようだ。次の戦争を止められるのか。すでに始まっているのではないかとの戦慄を覚える中、改めて氏のご著作やドラマから生きる糧をいただきたいと願う。感謝を込めて、合掌。

選択の自由を手放さないために

選択の自由を手放さないために

NHK 100分de名著 で知ったショック・ドクトリンの存在。紹介者の堤未果さんのこのご著書は初版が5月30日に出て以来、もう8刷だとか。それほど多くの人に読まれていることが心強い。

一言すれば、積年のモヤモヤが解消すると同時に、奈落に突き落とされていたことを自覚させられる書。

この「違和感チェックリスト」を蜘蛛の糸代わりに辿っていけば、再び這い上がれるだろうか。「いや、這い上がらなければ」と

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日日是好日

日日是好日

にちにちこれこうじつ = 毎日がよい日(晴れの日も雨の日も・・・)

学生時代に茶道にのめり込んだ友人がいたのだが、形式ばった作法の素晴らしさをどれだけ聞かされても、何がいいのか私には全く理解できなかった。和菓子には苦味のある抹茶が似合うとは思うけれど、足が痺れてでも茶室に通いたい人の気持ちが知れなかった。この本を読むと、そんな私でも茶道の世界の魅力がなんとなくわかるような気がしてきたから不思議だ

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だれもみえない教室でよいのか

だれもみえない教室でよいのか

まず吸い込まれるような表紙に注目したい。「四角い水槽って、なんだか教室みたいだ。」(p.183)をモチーフに、ひとりの少年が金魚のエサが入れられていることに気づかないままランドセルを手にする瞬間が描かれている。

この一見些細な出来事から広がっていく波紋。当事者はじめ周囲の本音が、それぞれの立場から明らかにされていく。【以下、一部ネタバレあり】

例えば担任教師。「これ以上ことが大きくならないよう

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憎めない理由ー私の中のおにろく像

憎めない理由ー私の中のおにろく像

泣いた赤鬼は別として、基本、鬼の類は苦手。なのに、なぜこのおにろくは好きなのか、ちょっと考えてみた。【以下ネタバレあり】

ざっとこんなお話だ。流れが急な川があり、橋をかけてもすぐに流されてしまう。困り果てた人々が名高い大工に依頼したところ、大工はすぐに引き受けてくれた。ところが、大工は心配になってきて、橋をかける場所で流れる水をじっと見ていると、川の中から鬼が現れた。

大工が事情を説明すると、

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過ちを繰り返さないために

過ちを繰り返さないために

朽木祥『パンに書かれた言葉』(小学館、2022年)
戦争の影が忍び寄る今、戦争に抗った先達のことを考えたい。被爆二世の著者によるイタリアとヒロシマをつなぐ渾身の書。(中高生以上大人まで)

これは「夢中になって読んで気づいたら夜中だった」といった類の本ではなく、教科書のようにじっくりと心に落としていきたい本だ。

ファシズムに抵抗したパルチザンと呼ばれる人々のことは遠い国の出来事に感じられるかもし

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追悼 松居直氏

追悼 松居直氏

月刊物語絵本「こどものとも」の創刊をはじめ、数々の優れた絵本を世に送り出してくださった松居直氏の偉業に敬意と感謝を込めて。

📗松居直再話・赤羽末吉画『だいくとおにろく』(福音館書店、1962年)
📗松居直作・長新太絵『ぴかくんめをまわす』(福音館書店、1966年)
📗松居直 他 編著『にほんご』(福音館書店、1979年)
📗松居直著『わたしの絵本論』(福音館書店、1981年)
📗松居直

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図書館を考える ⑵百聞は一見にしかず

図書館を考える ⑵百聞は一見にしかず

おすすめの図書館特集(📙『ソトコト』第15巻5号、2013年5月発行)は、私にとって最適な図書館ガイドとなった。従来の古くて暗い本棚のイメージが刷新され、一歩踏み入れただけで心がときめくような新しい図書館の雰囲気に魅了されると共に、この新風が住民にどこまで受け入れられるものなのか気になった。
例えば長野県小布施町の「まちとしょテラソ」の紹介ページには、パフォーマンスユニットと共に図書館を練り歩く

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図書館を考える ⑴はじめの一歩

図書館を考える ⑴はじめの一歩

今になって振り返ってみると、地元図書館の協議会委員に加わることになったのは、給食に関心を寄せての活動がきっかけだった。「あなたは本のにおいがする」と仰っていただけたものの、司書資格は持ってないし、図書館については全くの門外漢。これは辞退させていただくべきと思ったが、こんなうるさいおばさんに声がかかるくらいだから、よほど引き受け手がなくて困っておられるか、何かしら訳ありなのだろうと推察した。図々しい

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歴史を学びなおす

歴史を学びなおす

歴史に疎い。まともに学んだ覚えがない。暗記科目と思っていたから試験が終われば綺麗さっぱり忘れたし、なぜその出来事が起きたのかを考察しないから一向に興味が湧かなかった。そんな私でも夢中になったのがこちら。

📙網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま学芸文庫、2005年)

そもそも差別はどこから? 畏怖と賤視は紙一重? 12世紀以前に常滑焼が奥州平泉にあった? 百姓イコール農民じゃなかっ

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読み出したらとまらない

読み出したらとまらない

Louis Sachar, Holes (A Yearning Book, 2015)

なぜこんなに面白い本を今まで知らなかったのだろうと思ったら、20周年記念版の本書の初版は1998年。次男が生まれたこの年、私は出産を機に退職する予定が、インフルエンザをこじらせて入院、そのまま出産へと続き、立つ鳥跡を濁す大失態を演じたのだった。その後のドタバタは省略するとして、人生の空白を今からでも埋め合

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