我那覇剛柔丸

小説書いてます。読んで!!!

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マガジン

  • バスト目測者人口

    夏。大学2年生の坂本のもとに先輩からの招集がかかる。 「オダジョーを襲撃しよう」  突飛な襲撃計画の裏には、坂本と同学年の巨乳女子「逢沢晴子」の存在があった。流れゆく時間の中、腑抜けどもの饗宴がたどり着く未来とは――。 【全15話】

  • 我那覇剛柔丸短編集【急カーブでくず】

    【収録作品全5編】 『退屈だ、誰か死ね』 『処女膜からやまびこ』 『水泡にキス』 『白濁を耳に』 『ゼラチン』 ※全作品・全文を無料でも公開しています。  投げ銭での応援を歓迎いたします。

  • 我那覇剛柔丸短編集Ⅱ【妹は代理ミュンヒハウゼン症候群】

    短編集。随時追加していきます。

記事一覧

でかいチワワ【後編】

【前編】  空の方から妙ににぎやかな声が降ってくるので、窓から顔をだして上半身をぐぐぐぐぐーっとひねっていると身体のどこかからパキッという音がした。  あれは「…

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でかいチワワ【前編】

“クレイジーボーイCLUB”という落書きが学校近くの地下道の壁にサインペンで描かれていたとのことで近隣住人から苦情が届き、犯人がうちの高校の生徒だという確証はな…

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Midnight Invincible Chillllldren

 都内のほうで盛んにデモが行われているのは知っていたけど、それが本日一瞬だけ暴動レベルにまで発展したらしいので僕は久々にテレビをつける。すげー。やるじゃん。海外…

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Midnight Invincible Chilldren

   うわ~終わった~。  定額制のアダルトサイトに登録したら最初の二週間は無料とのことだったので、その間にAV観まくって有料期間になる前に退会しようかな、へへ…

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『背ガール』

 教室のはしのほうでみんなと笑っていたら顔面になんかきた。視界が急に白んで鼻の奥がツーンと破裂したみたいになり、まぶたはぎゅっと緊張したままわわわわわわと頭の中…

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ユートピア R.I.P.

「ただいま!」と叫んだら奥からおまえがわざわざやってきて「おかえり~」という。「どうしたの」ときくと「は? 出迎えただけじゃん」と怒るからおれも怒る。「ありがと…

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ダークな伊藤

 美玖がケンジくんと別れる別れないで騒いで飲んで泣いて吐く。そんで寝る。いい気なもんだねと彼女の寝顔を見つめるマミ公がつぶやいて、美玖がぶちまけたおゲロをティッ…

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A子の憂鬱は忘却の彼方に

 お昼休みは、この学校で一番大きな講堂で本を読む。照明は点いていないが活字を追う分には充分な光が窓から射しこんでいた。  この講堂は、席を全て埋めれば三百名ほど…

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バスト目測者人口【Chapter15:2年 夏~】

「みんなお疲れ!」  そう言ったおれを高橋とタケヒコが両サイドから抱きしめてくれる。 「けっこう盛り上がったな」 「いや超しんどかっただろ」  おれは両手に雑草状態…

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バスト目測者人口【Chapter14:2年 夏⑧】

 「オダジョーだって被害者じゃないの、って話でしょ?」と続ける中山くんを宮崎が見つめる。 「被害者って言うと?」  中山くんの真っ赤な顔のうえで、溶けかけた目がう…

バスト目測者人口【Chapter13:2年 夏⑦】

 会場である居酒屋『風林火山』のまだ誰もいない予約席でおれとタケヒコはテーブルの中央やや右寄りに座る。カップルとは向かい合う形にならなきゃとは思うが、真正面で対…

バスト目測者人口【Chapter12:2年 夏⑥】

「もしもし? ごめん、起きてた?」 「いま起きた。なに」 「いや急で悪いんだけどさ。前園さんを飲みに誘えないかな。できれば彼氏も一緒に」 「あ~。ん? つまり、そ…

バスト目測者人口【Chapter11:2年 夏⑤】

 藤木梨花がズビズビいってるのは、泣いているからだろうか? 「わたしさっきまで晴子と飲んでたんだ」 「うん」 「で、聞いたの。最近の様子とか。大丈夫かどうかだけで…

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バスト目測者人口【Chapter10:2年 夏④】

 わからんわからんわからん。  翌週の水曜日、おれは大学の駐輪場でゴリラバットに消火器を噴射し、殴られる。  やつが食堂で「逢沢はヤリメン」と発言したのをすぐ後…

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バスト目測者人口【Chapter9:2年 夏③】

 それから逢沢を見かけない日々が続く。  その間に大学では瞬く間に織田城太郎と彼女の噂が広まり、どういうわけか逢沢側へのバッシングがほとんどで、おれは佐藤ふみ花…

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バスト目測者人口【Chapter8:2年 夏②】

 しばらくブランコで揺れながら、ジャングルジムの頂に腰掛ける古谷先輩を眺めていた。引くに引けなかった部分もあるのだきっと。ブランコを囲むポールに腰掛けたタケヒコ…

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でかいチワワ【後編】

【前編】

 空の方から妙ににぎやかな声が降ってくるので、窓から顔をだして上半身をぐぐぐぐぐーっとひねっていると身体のどこかからパキッという音がした。
 あれは「オープニングムービー」を撮影しているのだ。
 焼却炉前でひとりエナジードリンクを飲んでいた加藤くんがさっき教えてくれた。わたしは「オープニングムービー」を見たことがない。舞台の部の一番あたまで流す映像のことらしい。それよりも、学校も終わっ

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でかいチワワ【前編】

“クレイジーボーイCLUB”という落書きが学校近くの地下道の壁にサインペンで描かれていたとのことで近隣住人から苦情が届き、犯人がうちの高校の生徒だという確証はないけどそういうのはやめてね、と生徒指導担当の児島先生が全校集会でいっていたけど、そもそも “クレイジーボーイCLUB”ってなんなん? やばいよね、とみんなで笑っていると、ぱん! と鋭い音がして梨絵子ちゃんが世界一かわいい「きゃ」を発した。み

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Midnight Invincible Chillllldren

Midnight Invincible Chillllldren

 都内のほうで盛んにデモが行われているのは知っていたけど、それが本日一瞬だけ暴動レベルにまで発展したらしいので僕は久々にテレビをつける。すげー。やるじゃん。海外でのこういう映像には見慣れているし、実際いまニュースで流れている映像でも渋谷のハロウィンのほうがドン引き度でいうと上だった気もするくらいだったが、この町から電車に乗って一時間も移動すればたどり着く場所でこれは起きているのだ。その実感がじわじ

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Midnight Invincible Chilldren

Midnight Invincible Chilldren

 

 うわ~終わった~。
 定額制のアダルトサイトに登録したら最初の二週間は無料とのことだったので、その間にAV観まくって有料期間になる前に退会しようかな、へへへと目論んでいたぼくはここにきてあろうことか恋をした。企画物の女優さん。名前がわからない。なんかソファーに座って軽くインタビューを受けているシーンでは「あき」って名乗っているけど、名字は何なのか、仮に名字はないとして、「あき」がひらがな表

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『背ガール』

 教室のはしのほうでみんなと笑っていたら顔面になんかきた。視界が急に白んで鼻の奥がツーンと破裂したみたいになり、まぶたはぎゅっと緊張したままわわわわわわと頭の中がやかましいのと、実際に周りの女子が騒ぎ出したのとで気が遠くなる。
 ジェシー様の怒鳴り声がする。
「ちょっと藤森!」
「顔だよ顔!」
「信じらんない!」
 藤森くんは同じクラスのサッカー部で運動神経がめちゃくちゃいいので、今日みたいに部活

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ユートピア R.I.P.

「ただいま!」と叫んだら奥からおまえがわざわざやってきて「おかえり~」という。「どうしたの」ときくと「は? 出迎えただけじゃん」と怒るからおれも怒る。「ありがとう」。手にさげたコンビニの袋には飲み物が二本入っていたけどたぶんおまえはこれをあまり気に入らないような気がしている。「これおみやげ」とかなんだかちょっと言いにくい。
 台所の明かりはついていない。その奥にある畳み間の敷きっぱなしの布団の上に

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ダークな伊藤

 美玖がケンジくんと別れる別れないで騒いで飲んで泣いて吐く。そんで寝る。いい気なもんだねと彼女の寝顔を見つめるマミ公がつぶやいて、美玖がぶちまけたおゲロをティッシュで拭っていた私はちょっと笑う。
「あれだけ暴れられるんなら心配ないね」
 この発言に根拠なんてないのですが。
 ことの発端はこうだった。美玖の生理が終わってさあやるぞってタイミングでケンジくんから誂え向きなお誘いがくる。もちろん美玖は喜

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A子の憂鬱は忘却の彼方に

 お昼休みは、この学校で一番大きな講堂で本を読む。照明は点いていないが活字を追う分には充分な光が窓から射しこんでいた。
 この講堂は、席を全て埋めれば三百名ほどの人を収容できる。
 でもこれから私が受ける講義には、いつもその半分以下しか集まらない。どの講義でもきっとそんなものなのだろう。
 あと二十分で昼休みが終わる。そうすれば教授が現れ、講義が始まる。講堂の前から四列目に座る私の他には、わずか三

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バスト目測者人口【Chapter15:2年 夏~】

バスト目測者人口【Chapter15:2年 夏~】

「みんなお疲れ!」
 そう言ったおれを高橋とタケヒコが両サイドから抱きしめてくれる。
「けっこう盛り上がったな」
「いや超しんどかっただろ」
 おれは両手に雑草状態でただただ肯く。その温かさに目を閉じる。
「坂本、また泣いちゃうよ~」
 と藤木は言うが、泣きたいときに泣けるうちは健康な証拠なのだと思う。おれは「ちょっと不整脈が」と言ってトイレに立ち、大の個室で束の間泣いてしまう。顎の震えが止まらな

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バスト目測者人口【Chapter14:2年 夏⑧】

バスト目測者人口【Chapter14:2年 夏⑧】

 「オダジョーだって被害者じゃないの、って話でしょ?」と続ける中山くんを宮崎が見つめる。
「被害者って言うと?」
 中山くんの真っ赤な顔のうえで、溶けかけた目がうつろに濡れているが、おれ以外にもそれが気になって仕方がない人はこの場にいるのだろうか?
「いや、さっきから聞いてたらオダジョーが一方的な悪者みたいになってるけど、正直おれ、女の側にも問題あると思うよ」
「ああ、論旨がフェアじゃなかったかも

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バスト目測者人口【Chapter13:2年 夏⑦】

バスト目測者人口【Chapter13:2年 夏⑦】

 会場である居酒屋『風林火山』のまだ誰もいない予約席でおれとタケヒコはテーブルの中央やや右寄りに座る。カップルとは向かい合う形にならなきゃとは思うが、真正面で対峙すると警戒とまではいかなくとも人は緊張して守りに入ってしまうとかなんとかテレビかネットで見たような気がしていたのだ。タケヒコに話すと「あ、おれもなんか聞いたことある」と言った。
 個室内の壁を見ながら「あんま飲み過ぎないようにしよ」と自分

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バスト目測者人口【Chapter12:2年 夏⑥】

バスト目測者人口【Chapter12:2年 夏⑥】

「もしもし? ごめん、起きてた?」
「いま起きた。なに」
「いや急で悪いんだけどさ。前園さんを飲みに誘えないかな。できれば彼氏も一緒に」
「あ~。ん? つまり、そういうこと?」
「まあそうだけど」
「だよね」
「テスト期間も終わったことだし、お疲れ様会という名目で誘ったらどう? 呼べないかな」
「いや、普通にくると思うよ。少なくとも佐藤ふみ花よりは全然きてくれる」
「じゃあ誘ってほしいんだよね。メ

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バスト目測者人口【Chapter11:2年 夏⑤】

バスト目測者人口【Chapter11:2年 夏⑤】

 藤木梨花がズビズビいってるのは、泣いているからだろうか?
「わたしさっきまで晴子と飲んでたんだ」
「うん」
「で、聞いたの。最近の様子とか。大丈夫かどうかだけでも確かめたくて」
「うんうん」
「いつもの晴子なんだよ。お酒も久しぶりだってずっと笑ってんの。ただやっぱりどこかで無理してる感じでさ。あ、違うな。もう無理してるとかじゃないんだよ晴子の場合。それがもう当たり前の、無意識でも出せる反応ってい

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バスト目測者人口【Chapter10:2年 夏④】

バスト目測者人口【Chapter10:2年 夏④】

 わからんわからんわからん。

 翌週の水曜日、おれは大学の駐輪場でゴリラバットに消火器を噴射し、殴られる。
 やつが食堂で「逢沢はヤリメン」と発言したのをすぐ後ろで聞いていたのだ。ヤリメン? セックスばかりに精を出すサークルのことをヤリサーと言うので、この場合のヤリはたぶんそのヤリなのだけど、メンってじゃあなんだ? イケメンのメンではないだろうから、残るはManの複数形かメンヘラのメンで、どちら

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バスト目測者人口【Chapter9:2年 夏③】

バスト目測者人口【Chapter9:2年 夏③】

 それから逢沢を見かけない日々が続く。
 その間に大学では瞬く間に織田城太郎と彼女の噂が広まり、どういうわけか逢沢側へのバッシングがほとんどで、おれは佐藤ふみ花という女のことを思い出す。今回の件なんて格好の燃料だ。逢沢晴子は超がつくヤリマンだの、メンヘラだしちょっと慰めてやればやらせてくれるだの、そういう浅薄な脳みそから垂れ流されるような噂の数々の根源には彼女がいるはずなのだ、という根拠のない憶測

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バスト目測者人口【Chapter8:2年 夏②】

バスト目測者人口【Chapter8:2年 夏②】

 しばらくブランコで揺れながら、ジャングルジムの頂に腰掛ける古谷先輩を眺めていた。引くに引けなかった部分もあるのだきっと。ブランコを囲むポールに腰掛けたタケヒコが「ねっむ。おれ明日朝から教習所なんだけど」と言うが、みんなほかの誰かが反応してくれるだろうと思っていて、静かな夏の夜が小さく響き続けるだけだった。
「古谷先輩って童貞らしいよ」
 なぜか宮崎がそう漏らした。腕を組む高橋がおれの反応を待って

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