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言葉の部屋

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ここで生まれた詩と小さな物語たちです。
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記事一覧

あさきゆめみし

すっと伸ばした先で

触れたあなたの指先

気付かぬように
絡まり

近づく吐息

束の間の
逢瀬に身を委ねる

心のままに

真実を知る

このままという願いとは裏腹に

気だるさと
残り香だけが
時を知らす

なぞってもなぞっても
形のない
あなたの温もり

わたしもまた
静かに
現実の扉を開ける

クロス

夕暮れに

手を

伸ばした

君が

君に

届きそうな

そんな

気がしたから

いつまでたっても

その距離は

近づかないようで

君が
見ている空は
大きくて

僕は

ただ

君に
伝えたかった

夕暮れに

このままで

このままで

君が

先に
繋いでくれた

君の手が

夜が来る前に

伝えよう

君が

そうしてくれたように

君に
届けよう

この夕暮れみたいに

ただ

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【眠れぬ夜の妄想をショートショートにしてみた】ー香る君

【眠れぬ夜の妄想をショートショートにしてみた】ー香る君

「これ、壊しちゃった、ごめんなさい…」
差し出したのは二つに割れた湯呑。
「なんで謝ってんだ?」
「だって、いつも使ってるからお気に入りかと思って」
静かに湯呑を見つめる目線がゆっくりと動いていく。
「怪我は?」
「怪我?」
「洗ってるときに割れたんだろ?」
「うん」
「あっ、これは別件で…」
「別件?」
「たいしたことはないから…」
「そっ…詮索する気はないけど、消毒くらいしとけよ」
徐に立ち上

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ひとりふたり

泥々に破綻した欲情

君の傷口に
刷り込み続ける激情

その
口を

この
口を

塞いでしまいたい

見上げた空は
ふざけてるくらいにすがすがしく

沸々とあふれ出す
衝動をあざ笑い

何もしない

伸ばした手は
何に触れることなく

結局は
すぐ側にいる君の手が

また

教えてくれる

ひとりにはなれないと

ひとりではないことを

滲み

失くしてしまった
あの日の感性

いつからか
大人の顔で
世界を知ったように生きて

良識と狂気の狭間で
かろうじて生き残って

それでも今を生きようと
格好のいい言葉を並べ立て

ありもしない情熱を
愛と言う言葉で囲い

すぐ そこにある本音に蓋をし
常識のレールが
まっすぐと
この先の未来を作る

誰のための優しさなの

死にたいならば死ねばいい

その苦しみは
後に残る人だけが知っている

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4月1日

その笑顔を何度も見ていたかった。

穏やかなその声は
いつまでも優しく
まるで今でもそばにいてくれているようで

ぽっかり空いた
その部分は
今もそのままで
埋まらないけれど

追いかけていたその時間を
ようやく
振り返ってもいいかなと
思えるようになって

言いようもない寂しさや切なさや
哀しさをを感じることが
怖くて
ずっと目をそらしてきたけれど

ふいに
訪れたあなたの笑顔は
変わらずに美し

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voice

そっと包むように
撫でていく

深くどこまでも

際限がない

奥底で拡がって

やがては

飲み込んでいく

溺れてもなお
この手を伸ばし
求めゆく

終りなき欲望さえ

包んでしまう

苦しくはない

ただ
鼓動を震わせ

全身で
受け止める

その
吐息さえ

逃さずに

捕まえて

描くのは

美しくも深いその声

ただ
その声に
抱かれて
このまま
沈んでしまいたい

まるで
そこに太陽

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君 咲く 花

咲くも
咲かぬも
決めるのは
自分

自分の咲き方で

咲けばいい

咲かぬのも

また

その花の咲き方

咲こうと思って咲いている花はいない

ただ

花は咲く

時が来れば

枯れて

その命をまた繋ぐため

次に咲く花のため

ただ

花は咲く

疑わず
迷わず

ただ

自分の咲き方で

咲くも
咲かぬも
決めるのは
自分

咲くのなら
咲けばいい

その時の
自分のやり方で

きっと
誰もが
いつの時代でも
誰かのために
生きている

だから
寂しくて
泣いてしまっても
だから
苦しくて
諦めてしまっても

それは
きっと
誰かの
生きる意味に
なるのかもしれない

これは
けっして
独りよがりではなく
うぬぼれでもなく

そうありたいと
望む
願い

だから
わたしは
わたしを生きる
誰かのために
自分のために

続くその魂のために

願いと祈り

望む光とは
裏腹に
世界は
沈んでいく

誰もがただ
願っているだけなのに

深い深い沼の底に
すべてが
沈むまで

時に
世界は
進んでしまう

望まないその先へ

その欲望が
誰かのための叫びとなって

すべてが違う

相容れないからと

それを

互いに正義だと悪だと

わめきあい

命を忘れてしまう

それでも
そこに咲く花があるはずだ

そこで足を止めて
そこで心を鎮め

どうか
どうか

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君へ

君が

夢中になって

追いかけていたから

まだ

幼くて

届かなかったから

守りたくなってしまった

正しいこと

それは

誰のため

そう

触れてしまったから

わかってる

この先は

苦しいのかもしれないけれど

君は

確かに



愛されているから

もう少し

あと

少しだけ

そのわがままは

幸せを砕くから

もう

いいんだよ

君が

笑っているから

そのまま

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3分前

お湯を注いで3分待てば、ラーメンが食べられる。
そんな魔法を知ったのは小学4年。
けれどそれよりももっとずっと昔に食べ損なったカップ麺があったような気がする。

寒い冬の日だった。
今にも雪が降りだしそうな冷たい空気が空腹に染み込んで、余計に体を冷やした。
いつもなら寄り道をして帰るのに、寒すぎて遊ぶことさえできなかった。
どうしてあんなにあの日は寒かったんだろう。
今、思い出しても指先からひんや

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吐露

語るように
歌うように
描くように

日々を綴る

気づかなければ
世界は
シャボン玉のように
薄い膜で囲われて
そして
消えていく

だから

なくさないように

壊さないように

優しく大切に

世界の形を作るのは
自分だから

思うがままに

底なし沼のような恐怖で苦しめる
利己的な暴力と盲目となった正義が
何度も押し寄せてきても

綴る

確かに生きてる証を

この先の
誰かへと繋げるため

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もう一度、あの丘で

元ちゃん、覚えてる?
あなたがわたしを元気にしようと連れていってくれたあの場所。
綺麗だったね。
自分の住む街の夜景がこんなに素敵だったなんてわたしはその時まで知らなかったよ。
空にはこぼれそうな星が煌めいて
夜の街に流れていくようなそんな時間だったね。

時々ね、元ちゃんのことと、あの場所につれていってもらった時のことを思い出すのよ。

2人とも若かったね。
だって大学生よ。青春よ。
誰かを好き

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