海月里ほとり

俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆…

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俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆の万札が、銃弾やムーンライトクッキーに変わって、海月里ほとりをバックアップします。

マガジン

  • マッドパーティードブキュア

    ドブヶ丘で戦う魔法少女たちのお話です。

  • ドブヶ丘関連

    自分で書いたドブヶ丘関連の色々を貯めていきます。

  • ドブヶ丘集

    妄想虚構都市ドブヶ丘に関する記事をここにためていきます。説明書をよくお読みになり用法容量を守ってお使いください。あなたドブヶ丘に踏み入るとき、ドブヶ丘もまたあなたに侵入している。

  • 出口兄妹の冒険

    腕に口持つお兄ちゃんが妹のために頑張る、怪物たちがドブヶ丘で切ったはったするお話です。

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    逆噴射小説大賞二次選考通過作品「電波鉄道の夜」の連載版です。おおむね毎日更新をめざし……実行します。

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この記事は海月里ほとりの書いた小説をまとめた記事です。 いつの間にかずいぶんと数を書いていたので、辿りづらくなっているのではないだろうか。そんな時ここから選んで…

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マッドパーティードブキュア 229

「おやおや、なんだろうね」 「ええ、なんでしょうね」  女性ののんきな声に、メンチは動揺を隠しながら答える。短く遠くに聞こえたなき声はシッカリとは聞き取れなかった…

海月里ほとり
2時間前
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マッドパーティードブキュア 228

「まあ、いいよ、いいよお、遠慮しないでついてきな」  女性はのんびりとした口調でそんなことを言うと、くるりとメンチたちに背を向けて歩き出す。怪しい存在。ここで打…

マッドパーティードブキュア 227

 ぞわりと、体中の毛が逆立つ。体液が冷たく沸騰する。 「何だテメエは!」  潜んでいたことを忘れ、飛び退り、叫ぶ。 「なんだい、いきなり、元気だねえ」  声が再び聞…

マッドパーティードブキュア 226

 ドブヶ丘の混沌は空白を嫌う。なにかの偶然でわずかにでも余白ができたら、すぐに何かが入り込む。入り込んで、それでも隙間があれば、また別の者が入り込む。過剰な密度…

マッドパーティードブキュア 225

 斧の刃先でなぞると、境界は柔らかに解れ開いた。  久しぶりの曇り空の光にメンチは目を細めた。相変わらずドブヶ丘の街の空は暗く曇っているが、空の色は安定していて…

マッドパーティードブキュア 224

「他の結節点を探すのです」  神妙な顔でセエジは言った。 「それは……どういうことでやすか?」 「確定してしまったメンチさんの斧から、望むように力を引き出すことは…

マッドパーティードブキュア 223

「話を戻しましょう。このコップを見てください」  セエジはメンチたちの方にコップを差し出した。その表面にはまだ泡が残っていてくるくると回っている。 「この泡と飲み…

マッドパーティードブキュア 222

「やっぱりお前は奴らの手先だったのか」  メンチは疑いの目をセエジに向けた。 「そういうわけではありません。ただ、やつらの目的がそうだといううだけです。それをあな…

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マッドパーティードブキュア 221

「混沌そのものってなんだよ」  まだ理解はできない。メンチは問い返す。 「聞いたことがありませんか? この世の始まりは混沌であったという昔話を」 「それは……混沌…

マッドパーティードブキュア 220

 メンチは首を傾げて尋ねた。  いつの間にか女神の袋の話になっていたけれども、本当はこの斧に宿ったあの洞窟の『ドブヶ丘の心臓』の力の話をしていたはずなのだ。関係…

マッドパーティードブキュア 219

「たしか、その斧は女神様がメンチさんにあげたのでしたね」 「たぶん、そうだよ」  セエジの問いに女神が自信なさげに頷く。 「昔の私の時のことは、なんだかぼんやりと…

マッドパーティードブキュア 218

「これは、あくまで僕の推測交じりの話しにはなりますが」  セエジはそう断ってから話し始めた。その顔色はいまだに少し青白い。洞窟から返ってきて以来、黄金律鉄塊を作…

マッドパーティードブキュア 217

「というわけで、この本に書かれているらしい」  レストランの机に一冊の本を置いて、メンチは言った。  その本は図書館にあったたくさんの本と同様に、真っ黒な無個性な…

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マッドパーティードブキュア 216

「まあ、命をとろうってわけじゃない」  メンチと名乗ったその侵入者はそう言って笑った。ぴたぴたと手のひらの上で斧をもてあそんでいる。赤錆の浮いた不吉な斧。記憶の…

マッドパーティードブキュア 215

 恐怖がメリアの体を凍らせる。  メリアはこの図書館で2度の襲撃を体験した。正黄金律教会と狼藉者たち。どちらも大きな被害が出た。絶え間なく侵食する混沌に対してささ…

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この記事は海月里ほとりの書いた小説をまとめた記事です。

いつの間にかずいぶんと数を書いていたので、辿りづらくなっているのではないだろうか。そんな時ここから選んでいけば好きなところから読めるという寸法だ。

ドブヶ丘の話とかSFな話とか、あとファンタジーな話を書いたりしている。

それぞれの小説の本文は無料ですが、投げ銭用にあとがきをつけていることがあります。気に入ったら読んでみてください。とても

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マッドパーティードブキュア 229

マッドパーティードブキュア 229

「おやおや、なんだろうね」
「ええ、なんでしょうね」
 女性ののんきな声に、メンチは動揺を隠しながら答える。短く遠くに聞こえたなき声はシッカリとは聞き取れなかった。老婆の声には聞こえなかった。けれども、老婆と無関係とも思えない。つい先ほど、老婆はあの棲家に様子をうかがいに行ったのだ。
「お子さんたちが遊んでるんでやすかね」
 こちらも平静を装って、セエジが尋ねる。女性は首を傾げて答える。
「自分ら

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マッドパーティードブキュア 228

マッドパーティードブキュア 228

「まあ、いいよ、いいよお、遠慮しないでついてきな」
 女性はのんびりとした口調でそんなことを言うと、くるりとメンチたちに背を向けて歩き出す。怪しい存在。ここで打倒しておくべきか。メンチの思考にそんな思いがよぎる。ぎゅっと斧を握る手に力を籠める。
「いや、ここは黙ってついて言った方がいいでやす」
 何かを察したのか、ズウラが口を差し込んだ。
「よく見るでやす」
 促されて、改めて女性の背中をじっと見

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マッドパーティードブキュア 227

マッドパーティードブキュア 227

 ぞわりと、体中の毛が逆立つ。体液が冷たく沸騰する。
「何だテメエは!」
 潜んでいたことを忘れ、飛び退り、叫ぶ。
「なんだい、いきなり、元気だねえ」
 声が再び聞こえる。緊張したり、警戒したりした様子の欠片もない柔らかな声だった。
 そこまで聞いて、ようやく声の主の姿をみとめた。
「誰だ? おまえ……あなたは」
 毒気を抜かれ、さっきよりは随分とおとなしい声がメンチの口から漏れ落ちる。
 声の主

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マッドパーティードブキュア 226

マッドパーティードブキュア 226

 ドブヶ丘の混沌は空白を嫌う。なにかの偶然でわずかにでも余白ができたら、すぐに何かが入り込む。入り込んで、それでも隙間があれば、また別の者が入り込む。過剰な密度の混沌、それがドブヶ丘の混沌の性質の一つだ。
 だから、遠目に窺ったかつての女神の棲家に、何者かが棲みついている気配を感じてもメンチは何も不思議には思わなかった。むしろ、棲家の形が保たれていることに違和感があったくらいだ。以前に見てからもう

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マッドパーティードブキュア 225

マッドパーティードブキュア 225

 斧の刃先でなぞると、境界は柔らかに解れ開いた。
 久しぶりの曇り空の光にメンチは目を細めた。相変わらずドブヶ丘の街の空は暗く曇っているが、空の色は安定していて一瞬ごとに様子が変わることはない。不安定な空模様にはもう慣れたつもりになっていたけれども、知らず知らずのうちに、精神に負荷がかかっていたことに気がつく。
「ひさしぶりでやすねえ」
 傍らでズウラが大きく背伸びをしながら深呼吸をした。ズウラに

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マッドパーティードブキュア 224

マッドパーティードブキュア 224

「他の結節点を探すのです」
 神妙な顔でセエジは言った。
「それは……どういうことでやすか?」
「確定してしまったメンチさんの斧から、望むように力を引き出すことは難しいです。ならば、他の場所から混沌の世界の力を引き出した方が手っ取り早く手に入れられます」
「でも、そんな混沌の破れ目なんてそうそうあるわけじゃないでやしょう?」
「何を言っているのですか」
 セエジは、女神に目をやって続ける。
「我々

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マッドパーティードブキュア 223

マッドパーティードブキュア 223

「話を戻しましょう。このコップを見てください」
 セエジはメンチたちの方にコップを差し出した。その表面にはまだ泡が残っていてくるくると回っている。
「この泡と飲み物が接している部分があるでしょう? 『ドブヶ丘の心臓』や、女神様の持っていた袋のようなものというのは、ここのようなものなのです」
「境目ってことでやすか?」
「そうです」
 セエジが頷く。
「あるいは破れ目、もしくは結節点ということもでき

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マッドパーティードブキュア 222

マッドパーティードブキュア 222

「やっぱりお前は奴らの手先だったのか」
 メンチは疑いの目をセエジに向けた。
「そういうわけではありません。ただ、やつらの目的がそうだといううだけです。それをあなたたちにも知っておいてください」
「でもよ」
「それが正しいどうかは別として、現在の状況を考えるのには有効です」
「やつらは世界の存続を狙ってるってことでやすか?」
「そういう一面があることは否定しません。ただ」
 ズウラの言葉に頷いてか

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マッドパーティードブキュア 221

マッドパーティードブキュア 221

「混沌そのものってなんだよ」
 まだ理解はできない。メンチは問い返す。
「聞いたことがありませんか? この世の始まりは混沌であったという昔話を」
「それは……混沌の海の話か?」
「ええ、それです」
 ようやくわかる話が出てきた。メンチは返事をする。
「最初はなんかごちゃごちゃした海があって、そこからだんだんまとまっていったって話だろ? 最後にごちゃごちゃが余ったのがこの街だっていう。そりゃあ聞いた

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マッドパーティードブキュア 220

マッドパーティードブキュア 220

 メンチは首を傾げて尋ねた。
 いつの間にか女神の袋の話になっていたけれども、本当はこの斧に宿ったあの洞窟の『ドブヶ丘の心臓』の力の話をしていたはずなのだ。関係のある話とも思えない。
「いえ、それがおそらく、その二つは、根っこで繋がっているのですよ」
 セエジが言った。
「この本に書かれていたことが、真実ならば」
 セエジの指が机の上の本をさした。それから少しどこから話すべきかを考えてから、口を開

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マッドパーティードブキュア 219

マッドパーティードブキュア 219

「たしか、その斧は女神様がメンチさんにあげたのでしたね」
「たぶん、そうだよ」
 セエジの問いに女神が自信なさげに頷く。
「昔の私の時のことは、なんだかぼんやりとしていてうまく思い出せないけれども、その斧を渡したことだけはちゃんと覚えているよ」
「その斧が、なんなのかは、わかりますか?」
 女神は首を振った。
「もともとそんなことは知らないよ」
「あなたが渡したのでしょう?」
「私はあの袋から取り

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マッドパーティードブキュア 218

マッドパーティードブキュア 218

「これは、あくまで僕の推測交じりの話しにはなりますが」
 セエジはそう断ってから話し始めた。その顔色はいまだに少し青白い。洞窟から返ってきて以来、黄金律鉄塊を作れていないと言っていた。メンチが持ち帰った本を読むときも、時折目を抑えて痛みをこらえるような中断を入れながら読んでいた。
 今も長く話すのは疲れるようで、とぎれとぎれの言葉を紡いでいる。
「結論から言うと、あの洞窟で見つけた『ドブヶ丘の心臓

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マッドパーティードブキュア 217

マッドパーティードブキュア 217

「というわけで、この本に書かれているらしい」
 レストランの机に一冊の本を置いて、メンチは言った。
 その本は図書館にあったたくさんの本と同様に、真っ黒な無個性な表紙のついた本だった。
「本当に、これに『ドブヶ丘の心臓』のことが書いてあるんでやすか?」
 ズウラが本を見つめながら言った。メンチは答える。
「わからん。わからないから持ってきた」
 司書とのやり取りを思い出しながら、メンチは言った。司

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マッドパーティードブキュア 216

マッドパーティードブキュア 216

「まあ、命をとろうってわけじゃない」
 メンチと名乗ったその侵入者はそう言って笑った。ぴたぴたと手のひらの上で斧をもてあそんでいる。赤錆の浮いた不吉な斧。記憶の底から嫌な予感が浮かび上がってくる。以前、襲撃されたときにはあの斧のせいで場を制御しきれなくなった。
「なにが、目的ですか?」
 尋ねてみる。まだ襲い掛かってきてはいない。攻撃してこないということは、よほど戦い自信があるのだろうか。今回は一

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マッドパーティードブキュア 215

マッドパーティードブキュア 215

 恐怖がメリアの体を凍らせる。
 メリアはこの図書館で2度の襲撃を体験した。正黄金律教会と狼藉者たち。どちらも大きな被害が出た。絶え間なく侵食する混沌に対してささやかな抵抗を続けて、少しずつ確保していった秩序は、襲撃のたびに水の泡と消えた。
 正黄金律教会に協力することで、秩序は飛躍的に整った。もしも三度戦闘に巻き込まれることがあれば、築き上げてきた本棚の秩序はたちまち元の混沌に戻ってしまうだろう

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